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瓶内二次発酵だから美味しい、は本当か? | ワインあるある

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「やっぱり瓶内二次発酵は美味しいな」

スパークリングワインを飲んでいる時などに聞いたことのある言葉ではないでしょうか?

でもこれ、世間の一般常識のように言われていますが、本当に正しいのかというと醸造的にはちょっと疑問だったりします。今回はこんなワインのあるあるを醸造の視点から見ていきたいと思います。

 

そもそもなんで瓶内二次発酵は美味しいと言われるのか?

これは筆者の偏見が入っている意見かもしれませんが、瓶内二次発酵だから美味しい、という意見をお持ちの方の多くはシャンパーニュのファンの方が多いように感じます。当然シャンパーニュを謳っているスパークリングワインは瓶内二次発酵方式を用いて造られていますので、瓶内二次発酵=シャンパーニュという図式が頭の中で出来上がっていて、

 

シャンパーニュは美味しい

→ シャンパーニュは瓶内二次発酵で造られている

→ 瓶内二次発酵は美味しい

 

という展開が行われており、これが瓶内二次発酵だから美味しいという意見のもとになっているのではないかと思えるのです。

 

瓶内二次発酵ってどうなのよ?

醸造の視点からいえば、瓶内二次発酵という発酵の手法はとてもボトルごとの個体差が出やすい手法です。

ボトルごとの個体差があることが良いか悪いかや、そもそも個体差が生じる製造方法自体が販売する製品を造る方法として良いのか悪いのかはここでは議論しません。世の中にあるハンドメイドのものは基本的に個体差がありますし、それを好きと思うか嫌いと思うかは個人の感覚なので好きな人は好き、嫌いな人は嫌い、で良いと思っています。

ここでは瓶内二次発酵で造られるスパークリングワインはそれがシャンパーニュであったとしても、それなり以上に個体差が出ているものなんだ、という理解をしてもらえれば十分です。

 

なぜ個体差が生じるのか?

そもそもなぜ瓶内二次発酵で造られたスパークリングワインにはボトルごとの個体差が生じてしまうのでしょうか?この疑問の答えを知るためには、スパークリングワインの作り方を知る必要があります。

スパークリングワインの作り方には大雑把に分けて3つの方法があります。

  1. 瓶内二次発酵方式
  2. タンク内二次発酵方式
  3. 炭酸ガス充填方式

それぞれの作り方を大雑把に見ていきます。

 

なおスパークリングワインの製造方式については「スパークリングワインのいろいろ」の記事も併せてご覧ください。

スパークリングワインのいろいろ

スパークリングワインといえば、シャンパンがその作り方である瓶内二次発酵という言葉と共にとても有名です。しかし、この瓶内二次発酵という作り方、実はいくつかのヴァリエーションがあることはご存知でしょうか? ...

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すべての工程を瓶内で行う瓶内二次発酵方式

  1. ベースワインの準備
  2. ベースワインの瓶詰め
  3. 二次発酵
  4. 澱引き
  5. デゴルジュマン (テラリキュールによる量と味の調整)
  6. 密栓
  7. 完成

 

瓶内二次発酵方式は、スパークリングワインのもとになるスティルワイン (発泡していない、普通のいわゆるワイン) に酵母とショ糖 (サッカロース) を添加し瓶詰めした状態で発酵させ、発酵後に瓶内に溜まった澱をビンを傾けつつ数日間 (シャンパーニュ方式では21日間) かけて少しずつ回転させることで澱をビンの口に集め、集まった澱を除去した後にテラリキュールと呼ばれるものを添加することで減った量の補填と味の調整をします。

これにコルクを打てば完成です。

一部上記の流れと異なる例外的な製造工程を持つ瓶内二次発酵方式もありますが、いわゆる「シャンパーニュ方式」と呼ばれるスパークリングワインの製造方法として採用されている瓶内二次発酵方式では基本的にベースワインをビンに詰めてからは最後の製品化までの全工程を瓶内で行います。工程をみていただければお分かりかと思いますが、この方式は一本一本作業をする必要がありますので物量という意味でとにかく手がかかる方式です。

 

ちなみにスパークリングワインにも辛口や甘口など味の種類がありますが、これらは基本的にテラリキュールを使って調整されています。スパークリングワインの味の種類については「スパークリングワインの”トロッケン”は辛口か」の記事にまとめています。

スパークリングワインの"トロッケン"は辛口か?

  Trocken (トロッケン)という表記はドイツワインにおいては辛口のことです。なので、スパークリングワインのエチケットにこの表記があると、やはり辛口のことだろう、と思ってしまいがちです ...

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大量生産に向いたタンク内二次発酵方式

  1. ベースワインの準備
  2. 圧力タンクに移し替え
  3. 圧力タンク内で二次発酵
  4. 澱引き
  5. 味の調整
  6. 瓶詰め
  7. 密栓
  8. 完成

 

一方で、タンク内二次発酵方式はベースワインを用意するところまでは瓶内二次発酵方式と同じですが、二次発酵は圧力タンク内で行います。

発酵後はタンクごとに澱引きして、その後にテラリキュールを使って味を整えます。味が調整されたスパークリングワインはこの時点で瓶詰めされ、コルクが打って完成です。この方式の一番の特徴は、製造量が増えても大きなタンクを使えばいいだけなので作業の手間が増えずに済む、ということです。

またこのようにある意味で工業的な大量生産に向いた製造方法であることから、大量に造られて安く売られる低品質なワイン、というイメージが持たれやすい製造手法でもあります。

 

もっとも簡単、ガス充填方式

  1. スティルワインを準備
  2. 圧力タンク内で炭酸ガスを充填
  3. 瓶詰め
  4. 完成

 

最後のガス充填方式は、そもそも二次発酵自体をしていない方式です。

スパークリングワインにしたいスティルワインを準備して、これに圧力タンク内で炭酸ガスを充填するだけで出来てしまいます。非常にお手軽な方式ですが、スパークリング (泡立っている) ワインではあっても根本的に全くの別物なので、この方式で造られたスパークリングワインはその旨をラベルに明記することが多くの国で法的に義務付けられています。

 

個体差は発酵過程で生じる

それぞれの製造過程 (ガス充填方式は除く) を見て分かる通り、どんな方式でスパークリングワインを造るにしてもベースとなるスティルワインにサッカロースと酵母を添加するところまで同じです。違いが生じるのは、そのベースワインをどこで発酵させているのか、という点です。

 

タンク内で二次発酵させている場合、数百リットルから数千リットルのワインは全量を一元化した管理体制のもとで発酵管理することができますので、タンク内ワインすべてが同様の発酵過程をたどります。一方で、瓶内で二次発酵が行われている場合には基本的に1本1本のボトルを個別に管理することになりますので、ボトルが100本あれば100通り、1000本あれば1000通りの発酵が行われることになります。これが、ボトルごとの個体差として味や香りに現れるのです。

当然ですが、この「個体差」はいつでもいい方向に動くわけでは残念ながらありません。相当量のスパークリングワインを造っていますので、中にはネガティブな挙動を示すボトルも出てきますし、そうではなかったとしても発酵中に生じたニュアンスの違いが好みに合う、合わないとなってしまうことは往々にしてあります。いくらテラリキュールによる味の調整を行っているとはいっても、発酵中に生じる様々なニュアンスはそのボトルの基軸なるものですので、このような事態はどうやっても避けることの出来ないものです。

そこはもう、ボトルごとの個性、として受け入れるしかありません。

 

個体差をなくす瓶内二次発酵方式もある

ボトルごとに生じる個体差を嫌って、これを一定にしようとする手法もあります。これが上記の瓶内二次発酵方式の説明の際に書いた、例外的な製造方式です。

この方式では瓶内での二次発酵が完了したスパークリングワインを一度圧力タンクに集め、その後にテラリキュールで味を調整してから再度、瓶詰めをします。こうすることで発酵中に生じた個体差を標準化させつつ、エチケットには「瓶内二次発酵」の文言を記載できるようにしています。

またシャンパーニュなどでは規定によってこのような一度タンクにあけることで味を標準化する手法が禁止されていますので、そもそもの個体差を極限まで小さくするための手法の開発が行われています。

 

「瓶内二次発酵」の表記が重要!

この瓶内で二次発酵を行ったスパークリングワインを一度タンクにあけてしまう方式など、もとからタンク内で二次発酵をしたほうが効率がいいじゃないか、と思わるのではないかと思います。

しかし、この「ラベルに”瓶内二次発酵”と記載できる」ということがワイナリーにとっては販売戦略上とても重要なのです。

 

今回のテーマにもしていますが、ラベルに瓶内二次発酵と書くとそれを飲む、もしくは飲んだ顧客はほぼ自動的にそのスパークリングワインのことを美味しく上級クラスのスパークリングワインである、と思い込んでくれる部分があります。またここが重要ですが、それに伴ってボトル単価を上げることが出来ますし、買う側にも値段に納得してもらえます。完全にシャンパーニュにあやかった商売手法ですが、それで誰も損をしていないので全く問題ありません。

これはまさに、マーケティングの勝利というべきことです。

 

今回のまとめ

スパークリングワインという一つの製品を造る上では瓶内二次発酵方式よりもタンク内二次発酵方式のほうが遥かに味が安定します。逆にいえば、ボトルごとの当たり外れがほぼなくなり、標準化された味を提供することが出来ます。

この「標準化」された味を好まないという方もいるとは思いますし、ボトルごとの個体差が逆に魅力的とみる方もいると思います。それはそれでワインを楽しむ上で重要な因子です。

 

一方で、「瓶内二次発酵だから美味しい」という理屈には根拠がないこともお分かりいただけたでしょうか?

 

瓶内二次発酵だから美味しい、というイメージをあまりに強く持つことは、シャンパーニュが大成功したマーケティング戦略の味を美味しく感じている、、、のかもしれません。

 


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