栽培

種蒔きの季節

10/21/2018

例年よりも早めのぶどうの収穫が終わり、ケラーでタンクに入れられたジュースが順調に発酵を進めている今、ワイナリーでは休暇気分を味わっている場所も少なくありません。

しかしその一方で、すでに来年に向けた仕事もまた、始まっています。

ぶどう畑に緑を

以前、”ブドウ畑の緑化管理”という記事でぶどう畑における下草管理のことを書きました。

この時の記事でも触れたのですが、ぶどう畑における下草をコントロールすることにはいろいろな意味があります。それは、土壌中の栄養素の管理のみならず、単一植栽のモノトーンな畑における生物多様性の改善、という範囲にまで及びます。そして、このような戦略をとっていくためには、どのような植物を選択してぶどう畑を緑化するのか、という視点を欠かすことは出来ません。

”戦略”と書きましたが、この言葉が表すように、ぶどう畑の緑化は野放図に雑草を生やしていくようなものではありません。自然に対して解放された屋外でのことなので、完全に管理することは当然出来ないのですが、それでもその取組はコントロール下におかれたものとなっています。つまり、自分のぶどう畑にとって有利となるように、望んだ効果が得られるように、そのために必要な植物を選んで種を蒔くのです。

種蒔きの季節

ブドウ畑における下草を管理するために、いつ、どの植物の種を蒔くのかということは、その発芽時期や成長時期によってある程度は決まっています。そして、今この時期が、その種蒔きの時期の1つでもあるのです。

この時期に蒔く種にはいくつかの種類があります。

冬の時期に発芽させ、成長をさせたい植物の種を蒔く場合もありますし、春先からのことを見込んでその時期用の種を蒔く場合もあります。そして多くの場合は、この両方を混ぜて蒔くことが多いのが実際です。冬を見込んだものに関してはともかく、春を見込んだものに関しては少し早すぎるのではないかと思われる場合もありますが、冬はその寒さから地面が凍りますので、今のうちに蒔いておく必要があるのです。

”緑”の種類

蒔かれる種の種類は、大きく分けて2種類の区分があります。

1つは”ブドウ畑の緑化管理”でも書いた、土壌の栄養状態を改善するために重要となるLegminosaeに分類される植物群です。これに対する他方のものは、畑の生物多様性を改善することを目的とした種類の植物群です。

生物多様性、と聞いた時にどのような状況を思い浮かべるかは人それぞれだと思いますが、この単語を使った場合において中心的な役割を果たすのがミツバチです。実際にこの目的のために蒔かれる種の多くは花を咲かせる種類のものでもあります。そしてこれら両者の混合比率に関してはいくつかのモデルケースが提案されており、それに応じたパッケージ商品として提供されたりもしています。

なお話は少し逸れますが、ミツバチは最近の果樹農園を中心に、ある意味において極めて工業的に利用されている昆虫です。一般の方からすればミツバチの利用と聞くと養蜂家のようなものを想像する場合が多いと思いますが、実際にはもっと大規模に、広大な果樹園において効率的に果樹の受粉を行うための手段として利用されています。ぶどうは自家受粉する植物なのでぶどうの栽培にミツバチを直接利用することはありませんし、ぶどうの栽培家がミツバチをぶどう栽培のために購入する、ということもありません。しかし、信じがたいかもしれませんが、今の時代、ミツバチは人工的に養殖され、パッキングされ、配送される商品でもあるのです。その売買の風景は、一般消費者がネットショップに服を注文し、箱詰めされた商品を自宅で受け取るのと何も変わりません。

そんななか、もう数年前から世界中でミツバチの異常行動に関する報告がなされており、このことに関してドキュメンタリーフィルムが作られたりもしています。私の知る限りではまだ明確な原因は判明していないと思いますが、それでもいくつかの可能性と、有力と思われる原因の推測が行われており、問題視がされています。ここドイツでもミツバチの保護に関する各種条例があり、農薬等でもミツバチへの影響度を測定し、段階的にその影響度を評価した上である一定以上の影響を持つものに関しては使用が禁止されたりもしています。

このような背景から、ミツバチに優しい=自然に優しい、というような視点が成り立っており、ぶどう畑の緑化についてもミツバチを意識した内容となってことが多いのです。

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  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

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