醸造

プレスのはなし

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ワインを生産するために欠かすことの出来ない装置、というものは複数存在しています。そんな中でも特に重要度の高いものがプレスでしょう。

 

赤ワインでは多少状況は変わるのですが、概要的にみれば狭義のワイン造りはぶどうを搾り、ジュースを得ることから始まります。この、ぶどうを搾る、という行為に欠かすことの出来ない装置、それがプレスです。

 

 

プレスの種類

プレスにはいろいろな種類があります。

これは製造メーカーの種類、という意味だけではなく、その機構の種類、という意味でも同様です。

 

 

昔、むかし。プレスの起源の頃に遡れば、ワイン造りにおけるプレスはまだ人が足でぶどうを踏み潰す行為を指していました。それが徐々に機構を持った装置になり、機械化が進んで今日に至っています。

 

足踏みの頃の昔と現代で何がもっとも変わったのかといえば、それはプレス圧です。もちろんもっと細分化して両者の違いを上げていくことは可能ですが、そのほぼ全てをプレス圧の違いに起因させることが可能です。 

しかしこの一方で、機械化されたプレス、という枠組みで比較を行うと、もう少し違った風景が見えてきます。

 

機械化されたプレスにおいてはかけられるプレス圧の上限にはほぼ差はありません。そのため、開発の方向がプレス圧そのものではなく、プレス圧のかけ方に向いていました。どういう手段でもってぶどうに圧を加えていくのか、というのが、機械化されたプレスにおける種類の違いとなります。

 

 

圧のかけ方の違い

圧搾のための機構を持ったプレスとして原初的なものは、バスケットプレスと呼ばれる、単純に上から下に向かって圧力を加えていくタイプのものでしょう。

 

実際に今でもワインの歴史博物館のようなところに行けば、まず間違いなくこのタイプのプレスが展示されています。ちなみにラインガウの有名なワイナリーでもあるエーバーバッハ修道院でも、かつて使用されていたこのタイプのプレスの展示を見ることが出来ます。

 

このタイプのプレスの動作機構は、言ってみれば漬物石を使って漬物を作っているのと同じです。

容器の中にぶどうを入れ、後はひたすら上から下に向かって圧力を加えていくことでぶどうを潰します。機構は極めて単純で、プレスとしてのコストも抑えられます。一方で、搾汁の効率は悪く、プレス圧も高くなりがちです。

 

このバスケットプレスの搾汁効率の悪さを改善しようとして開発されたプレスの機構が、単純に押し付けて潰すのではなく、そこにひねりを加えていく、というタイプのものです。

これは言ってみれば、ネジ山を切った容器の中にぶどうを入れ、その片側、もしくは両側からネジを締めていくという機構のものです。中に入れられたぶどうを押しつぶしていく、という機構自体はバスケットプレスと同じですが、接触面が回転しているためぶどうの破砕効果を得ることが出来るため、搾汁効率は良くなります。しかし、ここで問題になったのが、この”ぶどうの破砕効果”です。

この効果によって確かに搾汁効率は上がったのですが、一方でぶどうの実や房を余計に破砕してしまうことによって果汁品質の低下をまねく可能性が高くなってしまったのです。

 

このような経緯を経つつ、最近の主流となっているプレスの方式が、メンブラン方式です。

これは簡単に言えば、ぶどうを収めた容器のなかで風船を膨らませることでぶどうを潰す、という動作機構をもったプレスです。プレス方式自体はプレス面の回転を含まない、バスケットプレスとほぼ同様の方式となっています。

また、このプレスは動作プログラムとしてプレス中に複数回にわたって風船を膨らませたり萎ませたりしています。その上で容器自体を回転させることを併せて行うことでプレスの中で潰されたぶどうをほぐし、ほぐした後で再度、プレス圧をかけています。こうすることによって、バスケットプレスであった搾汁効率の悪さという欠点を改善していますし、より低圧でのプレスを実現しています。

 

 

どのプレスがいいのか?

必要となるプレス圧、搾汁効率、搾られたジュースの品質等を総合的に考慮するのであれば、メンブランプレスが現時点においてはもっとも工業的に優れている、というのが大方の見方です。実際に現場で使われているプレスは、機械的なものを否定するポリシーのようなものを持っていないのであれば、圧倒的にメンブラン方式が支配的です。

一方で、プレス面にひねりが加わってしまうタイプのものは上記の通り、搾汁効率は良くても果汁品質に難があることが多いため、最近では避けられる傾向にあります。

 

意見が分かれるのが、バスケットプレスです。

 

最近流行りの、ワイン醸造の懐古主義的な動きの中ではこのプレス方式は圧倒的な支持を得ています。

またトロッケンベーレンアウスレーゼのような、搾汁のためにとにかく高いプレス圧が必要となるものに対しては、このタイプのプレスが唯一の選択肢であるとも言えます。

 

プレスの機構比較において話をややこしくするのが、搾られたジュースに含まれる澱の量に基づいた果汁品質比較の結果です。この基準に基づいた方式ごとの比較をすると、バスケットプレス方式で搾られたジュースがもっとも高品質である、という比較結果が多くなります。このため、品質を追い求める少量生産のワインにおいては、あえてこのプレス方式にこだわる、という場合があるのも事実です。

しかし、このような傾向の結果が得られるのはあくまでもある一定量までの、比較的少量のプレスに限定した場合、ということも知っておく必要があります。

 




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