徹底解説

 

着色をほとんど招かないダイレクトプレス法

この果皮と果汁の接触を最大限まで引き下げるのが、ダイレクトプレス方式です。

ダイレクトプレスの場合、プレス前のブドウの状況次第ですが仮にブドウが全く傷ついていない状態でプレスに入れられたのであれば、搾られた果汁の着色度合いは極めて低いものとなります。これは同じくこの醸造手法を用いて造られる、Blanc de Noirが見た目は完全に白ワインと同じになっていることからもお判りいただけるかと思います。

このことから予想できると思いますが、ダイレクトプレス方式だけでは実際にはロゼを造ることはほぼ出来ません。色が薄くなりすぎてしまうためです。確かにロゼは「色の薄い赤ワイン」ですが、「色の薄すぎる赤ワイン」はそれはそれでロゼではないのです。

ロゼで最も重要なのがその色味、と冒頭に書いたのはこうしたことにも関係しています。

 

着色途中の果汁を抜くセニエ法

一方で適度にフェノール類が抽出されたところで果汁を抜いてしまおう、という考え方をしているのがセニエ法になります。

セニエ法はブドウを破砕して果皮と果汁を接触させた状態で一定時間置く、マセレーションもしくは醸しと呼ばれる工程の最中に果汁を抜く醸造手法のことをいいます。ちなみにこの時に「果汁を抜く」のか「果皮を取り除くのか」によって醸造的な目的は大きく異なります。

 

「果汁を抜く」場合にはメインの醸造対象は赤ワイン、逆に「果皮を取り除く」場合にはロゼのみを造ることを目的としています。

よくある方法としては果汁を全量抜くのではなく一部に留め、一定量の果汁を抜いた後もマセレーション自体は継続させます。こうすることで残された果汁に対しては抽出物量が増えるためよりしっかりとした味わいの赤ワインを造ることが可能となります。これはまさに「果汁を抜く」方式の例で、本来の目的は抽出の効いたしっかりとした赤ワインの醸造にあります。

 

このケースにおいてはロゼの醸造は赤ワインの醸造のおまけ的な位置づけになるうえ、ワイン法上の規定でも赤ワイン用果汁の凝縮と解釈されますので、水分量の減少が最大で20%となる量までしか果汁を抜くことが出来なくなります。つまり、ロゼとして造ることのできる量の上限が低めのところで制限されることになります。またこのケースにおける醸造的な特徴は、プレスをしないことです。

果汁を抜いた元のタンクでは引き続きマセレーションが行われていますので、果皮をプレスにかけることが出来ません。この結果、抽出物の量も種類も本来の含有量に対して大きく下がります。さらに前述の通り量も少ないためほかのタンクなどから抜いた果汁と混ぜられることも多く、こうした積み重ねが出来上がったロゼの輪郭をぼやけさせることにつながることが往々にして起こり得ます。

 

一方でワイナリー的にはあくまでも本来の目的は赤ワインの醸造ですので、少々、おまけで造ったロゼワインがぼんやりしていても良しとすることが多いのです。これに対してプレスをするのが「果皮を取り除く」ケースです。

 

こちらのケースでは果皮を取り除いてしまう関係上、それ以上色が濃くなることはありませんので全量がロゼの製造に回されます。

本気でロゼを造る場合にはこの方法をとることがもちろん多いのですが、この手法ではせっかく果皮に蓄積された成分のかなりの量を無駄にすることになります。一度プレスしてしまった果皮を別の果汁に漬け込むことは通常はしませんので、この「ある意味における無駄」を取り返すことは出来ません。

 

時々、プレスを通してフェノール類の抽出が行われる、という話を聞きます。

確かにプレス圧を上げて果皮の細胞の破壊率を上げていけばプレス中の抽出もある程度は期待できると考えられますが、これをやってしまうと雑味の多い味や香りになってしまうことに加え、色の程度の制御もできませんので通常はプレス圧を極端に上げることはありません。つまり、プレス前に抽出された量がワインに含まれる最大値、ということになります。

 

早摘みブドウによるロゼの醸造

早摘みブドウを使ったロゼ醸造あまり紹介されることがありませんが、実はもう一つ、「色を抑える」造り方に基づくロゼの造り方があります。

紹介される機会は少ないのですが、実際の現場ではおそらく最も多くロゼが造られるパターンです。それが早摘みのブドウによる醸造です。

 

早摘みの理由は様々ですが、いずれの場合にも実の熟成が完全には進んでいない状態で収穫をしてしまっていることが特徴です。こうするとブドウの色づきも十分ではないケースが出てきます。ブドウにもともと十分な量のアントシアニン類が蓄積されていませんので、いくら抽出をかけてもそもそも抽出されるべきものがないため色が濃くなることはありません。結果、自然とロゼになります。

またこのケースを選ぶ場合の収穫物は多くの場合、長時間の抽出も高圧でのプレスもできないことが色が濃くならない理由でもあります。

 

前述の二つの手法は「そこにあるもの」を使わないで色を薄くするポジティブともいえる方法でしたが、こちらの方法は「そもそもない」ので色の出しようがないというネガティブな手法となります。アントシアニン類が蓄積されていない、ということはフェノール類全体にわたって蓄積がないということですし、ブドウの糖度も十分に確保できていない一方で酸量が多いケースがほとんどですから、こうしたブドウを使って造られたワインは、全体的にワインとしての”特徴”が出にくいワインとなります

この手法は出来上がるワインの品質を考えればどちらかといえばネガティブな醸造手法となります。しかしその一方でそもそも色の心配をしなくていい、という前提はロゼを造る上では非常に使い勝手のいい手法とも言えます。何より判断が楽ですし、果皮に蓄積させたのに使わないという無駄も表面的には生じません。

 

最終的な品質の良し悪しは別の手法と組み合わせることである程度まで調整することが出来ますので、醸造家としては選択しやすい手法であるとも言えます。

ロゼの醸造は早摘みの場合に限らず、ほぼすべての手法において何かしら別の手段を用いての”調整”が加えられていることがほとんどです。これがそのワインのプロフィールもしくはtypicité (ティピシテ) をより分かりにくくしている原因だとも言えます。単に「色を抑える」造り方であればそこにあるのは本来の品種や産地に紐づいた要素だけですので、多少インパクトは弱くても特徴自体は残ります。

しかし、色味を抑えることを通して本来ブドウが持つ要素を抑えつつ、さらに”調整”を加えることで本来の特徴が調整用のワインの持つ特徴によって上書きされてしまい本来のプロフィールが部分的にマスクされるということが起こり得ます。

ここからはこの”調整”に関わるお話をしていきます。



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