ナチュラルワイン 徹底解説 醸造

ビオとナチュラル | 醸造面から見たその違い

02/22/2020

筆者がTwitterで時々、思い出したようにPostしてはそのたびに(筆者のアカウントとしては)軽くバズったような状態になるキラーワードがあります。それが「ナチュラルワイン」です。

最近、特に日本でよく聞くようになったこのワードですが、実はよく分からない、という方も多いのではないでしょうか?

自然派ワインとも呼ばれるため、漠然とビオなどと同じように身体にいい、健康的なワインのこと、と思っていらっしゃる方もいるかもしれません。

ところが、ビオとナチュラルは同じワインであってもその実態は大きく異なっています。部分的にはナチュラルワインがビオワインの一部に該当する、ということはありますが、ビオワインだからナチュラルワイン、ということはありません。

今回はこの似ているようで似ていない、誤解の多いワインの関係を醸造面から説明します。

この記事を読んでいただければもうビオワインとナチュラルワインの違いに悩むことはきっとなくなります。

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ビオってなんだ、ナチュラルってなんだ

まずは醸造的な違いの説明に入る前に、この両者がなんなのかを確認していきましょう。ビオもナチュラルもよくわからない、という方はとりあえずこの部分だけ読んでいただければ大丈夫です。

馴染みがあるようでない、ビオロジック

本文中でビオというものはビオロジックの略、日本語に直せば有機栽培のことです。

一方でその内容は日本でいう有機栽培ではなく、EU内で規格化されている認証制度の内容に従います。このため、日本で考えがちな有機栽培とは内容が異なる可能性があります。またビオとビオディナミは本来別のものですが、今回の記事では特に分けずに話を進めます。

なお、ビオとエコ、つまりビオロジックとエコロジックは同じ意味です。文中でも混合して使うケースがありますが、単に言い換えているだけと理解してください。

今後は文中ではそれぞれ、Bio、Ecoと表記します。

さてこのBioですが、詳しい説明は「ビオとエコは違うのか?」という記事に譲ることにして、ここではごく簡単におさらいします。

ビオとエコは違うのか?

世の中のワイナリーを見渡していると、通常のワイナリーの他にビオロジックとエコロジック、ビオディナミッシュ(英語:バイオダイナミクス)というような区分を見つけることが出来ます。 今回はこの中でも、ビオロ ...

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Bioの本質は地球環境への親和性です。このため、地球環境、自然環境に対して負荷の大きい手法は用いるのをやめよう、という考えとそのための取り組みがコンセプトの中心にあります。

ですので、規制の中心にあるのも醸造ではなくブドウ栽培です。

醸造面に関わる規制事項としては以下のようなものが挙げられます。

  • 二酸化硫黄 (亜硫酸塩 / SO2) の使用可能量の上限引き下げ
  • 一部の醸造手法の使用規制
  • 補糖用砂糖や酵母等の使用材料のBio対応

とはいっても、SO2の使用量は醸造面よりも栽培面における防除への使用量の規制が主目的ですし、規制される醸造手法はあまり一般的なものではありません。使用用品のBio対応は地球規模での改善の取り組みとして考えれば当然のことといえます。

多少大雑把な言い方になってしまいますが、Bioであることで醸造面に何かしらの規制が入ることは現実的にはほぼありません

実は理解されていないナチュラルという定義

ナチュラル、ナチュラルワイン、ナチュール、自然派ワイン、いろいろな呼び方がありますが少なくとも本記事の中では基本的にすべて同じ意味で使っています。一方で厄介なのが、わざわざ「少なくとも本記事の中では基本的に」としつこいくらいに書いているように、場合によっては使う人によって言葉の意味が変わることがある点です。

これはナチュラルワインという単語に未だもって明確な定義が与えられていないことが原因です。

そもそも公的に明文化され合意が得られた定義がないのですから、その使い方を統一しろといっても無理があります。そのために人によって理解が異なり、使い方が異なります。これがこのナチュラルという単語をより正体不明のよくわからない、ふわっとしたイメージを先行させる言葉にしてしまっている理由です。

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なお、時々オレンジワインと呼ばれるものがナチュラルワインだと思われていることもあるようですが、これも違います。オレンジワインとはざっくり言ってしまえば赤ワインの造り方で造った白ワインのことで、Bioともナチュラルとも直接の関係はありません。詳しくは「徹底解説 | オレンジワインの造りかた」の記事をご覧ください。

徹底解説 | オレンジワインの造りかた

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一応、ワイン業界にもナチュラルワインというものを定義したものがあります。ただそれはワインマガジンが行ったもので公的なものとはいえず、それゆえにかあまり浸透しているようにも思えません。

詳しくは「ナチュラルワインは甘くないんじゃなかったんですか? 其の壱」という記事をご覧いただくとして、この雑誌による定義だけを見てみると以下のように定められています。

  • オーガニックもしくはビオダイナミックに基づく栽培手法によって栽培されたブドウを使用している(認証は推奨されるものの、有無は問わない)
  • 手摘みのみによって収穫されている
  • 野生酵母による発酵を行っている (乾燥酵母を使用していない)
  • 酵素を使用していない
  • 二酸化硫黄以外の添加物を使用していない
  • 二酸化硫黄の総量が70 ml/l を超えていない
  • 清澄およびろ過を行っていない
  • その他の浸透膜やスピニングコーンのような大型機材を用いる醸造手法を使っていない
ナチュラルワインは甘くないんじゃなかったんですか? 其の壱

先日書いた二酸化硫黄を添加しないワインの作り方の記事について、大変ありがたいことにご質問をいただきましたので、今回はそのご質問にお答えする形でもう少し具体的に二酸化硫黄無添加ワインの作り方についてみて ...

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見ていただくとお判りいただける通り、こちらの内容はBioとは逆に栽培面ではなく醸造面の規制を中心に置いています

感覚としては栽培面の規制は最初の「Bioに基づいて栽培されたブドウを使うこと」ということで満足したとして、そこからさらに醸造面に踏み込むことでより厳しさを増した枠組みとして運用したいということなのだと思います。

ただ実際にはこの内容では今の流行りのナチュラルワインを正しく表現しているとはいえないのです。

注意

その後、2020年3月末にフランスのINAOによってナチュラルワインの定義が採用されました。詳細に関しては「ナチュラルワインの定義とそこに見る意味」の記事に書いていますのでそちらを参考にしてください。なおこの記事はINAOによる新定義採択前の時点の内容を元に書かれています。

ナチュラルワインの定義とそこに見る意味

先日、フランスでナチュラルワイン、いわゆる自然派ワインとかナチュールと呼ばれている種類のワインが具体的にどういうものであるべきかの定義が公式に決まった、という報道がありました。 https://www ...

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使用しないことが自然という考え方の蔓延

前述の暫定的なナチュラルワインの定義をもう一度見てみてください。特に各項目の文末に注目していただくと、やたらと「使用しない」「超えない」と否定形で書かれていることがお判りいただけるかと思います。

そして、この否定形が正しくない形で認識され、さらに拡大解釈された結果が現在の「ナチュラルワイン」を巡る消費者だけではなく造り手にも共通した認識となっています。むしろこの点は造り手側がそのように認識し、それに基づいて消費者が啓蒙されてしまった結果、と言ってもいいかもしれません。

それが、「何もしないのが自然」という考え方です。

「使用しない」、「超えない」というならそもそも何もせず、ブドウが「自然」に成長するままに、発酵が「自然」に進むままに任せればいいじゃないか、という一見正しいように見えて、その実、完全に間違った論理の展開です。そしてこの「自然」という単語が自然派という言葉に、そしてナチュラルという言葉につながっています。

これが今の多くのナチュラルワイン生産者とそのワインに適用されているナチュラルワインの定義です。

この辺りの状況は「ワインに品質管理は不要!?半端な自然派という無法地帯が広がる危機感」の記事に書いています。

ワインに品質管理は不要!?半端な自然派という無法地帯が広がる危機感

とある自然派ワイン愛好家の方が書いていた文章で興味深い内容のものを目にしました。 その記事は自然派微発泡ワインである「ペティアン・ナチュール」を説明するものです。その記事で書かれていたことをざっくりと ...

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そもそものワイン雑誌による定義が管理下の自然だったのに対し、こちらの定義は無管理下での野放図ですからその意味するところには大きな違いがあります。そしてこの違いがまた、ナチュラルワインの話をするときに面倒を呼び込んでいます。

美味しいナチュラルとは管理された自然である

以前、Twitterに次のようなPostをしました。ナチュラルワインには美味しいものもある、という内容です。

一応言っておきますが、自然派でも美味しい造り手はいます

ただ、いわゆる自然派ワイン愛好家な方々はそういう私から見て美味しい造り手を好まないことはよくあります

味の好みは人それぞれですので一概に言えませんが、筆者が「美味しい」と感じるナチュラルワインは現在広がっている定義ではなく、もともとのワイン雑誌が定義した内容に基づくものです。

とはいっても、この記事で扱うナチュラルワインを本来の意味に基づくものだけにしてしまうと、今の日本でナチュラルワインに疑問をお持ちの方々の知りたい内容の要請には応えられません。そこで、ここもそれぞれ分けて扱っていきます。

以下ではナチュラルワインもしくはナチュラルという場合には雑誌の行った本来の定義を、自然派もしくは自然派ワインという場合には現在流行している定義を意味しますのでご注意ください。

もう一度、それぞれの言葉を確認しておきます。

文章中で取り違えないように注意してくださいね。

Bio: Euの認証制度に基づいて規定されたルールに準拠したもの

ナチュラルワイン / ナチュラル: ワイン雑誌によって規定された定義

自然派ワイン / 自然派: 手を出さないことを前提とする今流行の定義

醸造面における違いと注意点

ワインの醸造といっても実際の作業には複数の工程があります。ここでは上記の各定義が関係する工程として、

  1. 補糖
  2. 発酵
  3. 安定化
  4. 清澄およびろ過

の4段階に分けて説明を行っていきます。今回は醸造面の違いの説明ですので、栽培面のお話は割愛します。

補糖

Bio、ナチュラルワイン、自然派ワインのいずれでも補糖自体を禁止はしていません。その一方でナチュラルワインや自然派ワインでは補糖を行わないことが一般的な印象を持っています。

これは手を加えない、というよりも、完熟させたブドウを使うので糖度に心配がなく補糖の必要性がない、という前提に立っているためという理由の方が大きい気がしています。

Bioでは逆に補糖を必要以上に嫌うという傾向はあまりありません。添加する砂糖が上記の通りBio基準対応のものを使用しなければならない、という条件はありますが、必要に応じて補糖を行います

なお、ナチュラルワインや自然派ワインの場合に仮に補糖を行う場合には添加する砂糖がBio基準でなければならない、ということは生産者がBio認証を取っていない限りにおいてはありません。どのような砂糖でも使えます。

なおナチュラルおよび自然派では補糖をしない、という前提に立てば、天候次第ではこれらのワインはアルコール度数が低く抑えられる可能性が出てきます

  • Bio: 実施可能。特に自粛もなし。使用する砂糖に制限がある
  • ナチュラル: 実施可能だが自粛の傾向。使用する砂糖に制限はない
  • 自然派: 実施可能だが自粛の傾向。使用する砂糖に制限はない

発酵

Bioとナチュラルワインおよび自然派で大きな違いが出てくる工程の一つです。

Bioでは発酵に使用する酵母に対する規制は乾燥酵母を添加する場合にはその酵母がBio対応のものかどうかだけです。乾燥酵母か野生酵母かは問われません。つまり、発酵を行う手段に対する規制はほぼありません

一方でナチュラルワインおよび自然派ワインでは乾燥酵母の添加は禁止され、野生酵母による自然発酵のみが発酵の手段として認められます。つまりブドウの状態や仕上がりに対する酵母の選択というオプションを用いることはできません。

野生酵母がもたらすものはメリット・デメリット双方にわたり様々です。詳しくは「野生酵母の功罪」の記事を参考にしてください。

野生酵母の功罪

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またこの点が醸造的にもたらすリスクがもう一つあります。発酵の管理です。

野生酵母はどの酵母によって発酵が行われるのかが分かりません。このため、時として発酵力の弱い酵母が一時的に支配的になってしまい、発酵が十分に進まないということが起こりえます

通常であればこのような場合に対してとれる手段がいくつかあるのですが、野生酵母しか使えない、という規制はこの手段の一つを封じてしまいます。

また発酵を促すために酵母の栄養を添加する場合があるのですが、これも特に自然派では嫌うことが多いようです。

  • Bio: 人工培養酵母、野生酵母の併用が可能。また発酵時における酵母への栄養添加も可能 (ただし添加できるものには制限がある)
  • ナチュラル: 野生酵母のみ。酵母への栄養添加は特に規制はないが自粛の傾向が強い。発酵が十分に進まないリスクが高め
  • 自然派: 野生酵母のみ。酵母への栄養添加は特に規制はないが自粛の傾向。発酵が十分に進まないリスクが高い

安定化

安定化とは、発酵が終了した後に主にSO2 (二酸化硫黄、亜硫酸) を添加することで酵母をはじめとした微生物類を不活性化し、ワインの品質を維持するための処置のことです。またこの処置は同時に酸化防止処置でもあります。

二酸化硫黄の働きについては「二酸化硫黄、正しく理解していますか? 1」の記事などを参考にしてください。なお、さらに詳しく二酸化硫黄の使い方を知りたい方は「SO2 (亜硫酸) の添加量とそのタイミング | ワインの品質管理」の記事の購入をご検討ください。

二酸化硫黄、正しく理解していますか? 1

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さてこのSO2の添加というものがBio、ナチュラルを問わず最も誤解されている点でもあります。なぜかBioでもナチュラルでもSO2の添加は禁止されている、と思われがちですが、どちらの区分でも使用量の制限はありますが、添加は認められています。唯一、自然派だけが無添加を強調しています。

SO2の添加許容上限についてはBio、ナチュラル、自然派の順に少なくなっていきます。

Bioはワインの種類とそれぞれの残糖量に応じて上限が個別に規定されていますが、ナチュラルは一括して70 ml/l、自然派は0です

自然派の0は別として、SO2の添加が許容されるBioとナチュラルにしてもその上限量によって安定化できるワインの範囲というものが変わります。

Bioはワインのタイプと含まれる残糖量に応じて上限が設定されているため、どのような味のどのようなスタイルのワインを造るにしてもほぼ問題は生じません。

一方でナチュラルの場合は一括して上限が決めらえているため、事実上、残糖を残さない辛口のワインでないと安定化できません。きちんとした処理を併用できるのであれば中辛口でもぎりぎりいけますが、条件はかなり厳しく難しい範囲に入ります。

仮に収穫したブドウの健康状態が悪かったり、発酵の状態が悪かったりすると辛口であっても安定化は難しい量といえます。

これに対して自然派はSO2の添加をそもそも行っていませんので、安定化は全くなされないままとなります。

このため自然派ワインや安定化度合いが微妙なナチュラルワインでは残糖は残すことが出来ません。残糖が残ってしまうと不活性化されていない微生物が活動してしまい、品質リスクに直結するためです。

  • Bio: SO2の添加は許可。ワインのタイプおよび残糖量に応じて上限が設定されている。無制限ではないためリスクはあるが、基本的には安定化に問題はない
  • ナチュラル: SO2の添加は許可。上限が一律で低く設定されており安定化は辛口以外では難しい。辛口であっても状況次第ではリスク高め
  • 自然派: SO2の添加はなし。安定化はそもそもできず、リスクは極めて高い

清澄およびろ過

いわゆる酵素をはじめとした清澄剤などの添加やフィルタリングの有無に関わる項目です。

この項目もBioとそれ以外の2者とでの違いが大きい部分でもあります。

Bioでは清澄剤およびフィルタリングの方法に対して一部使用制限がありますが、基本的にはいずれも使用および実施は禁止されていません。赤ワインでは生産者の考え方でノンフィルターということはありますが、これはあくまでも生産者自身のポリシーに基づくもので、Bioという枠組みからの要請ではありません。

これに対して、ナチュラルワインおよび自然派ワインでは清澄およびろ過はそもそも行われないことが求められます。酵素も使用できません。

これが何を意味するかというと、ボトルの中にフィルター等で除去されないままに酵母やその他の微生物などが入ってくる可能性が高くなる、ということです。これがSO2等によって安定化されているのであればそれほど問題はありません。しかし前述の安定化の項を思い出してほしいのですが、ナチュラルワインでさえ安定化に不安が残っているケースが存在し、自然派に至ってはそもそも安定化されてさえいません。

さらに発酵の項も思い出していただきたいのですが、ナチュラルワインや自然派ワインでは発酵が中断する、もしくは完全には終わっていないというリスクが付きまといます。これは取りも直さず、ワインに糖分が残ってしまうリスクが高い、ということです。

ボトルの中には不活性化されていない微生物

ワインには糖分が残留

この二つの条件が揃ってしまった場合に何がもたらされるか、すでにお分かりだと思います。そう、ボトルの中で微生物が動くのです。

  • Bio: 使用材料および手法に一部制限があるが清澄およびろ過は可能
  • ナチュラル: 清澄およびろ過は禁止
  • 自然派: 清澄およびろ過は禁止

今回のまとめ | 醸造とは管理の度合いでもある

さてこれまでそれぞれの区分のワインが醸造過程においてどのような違いを持っているのかを見てきました。ポイントは「安定化」という視点です。安定化、というものは言ってみれば自然な動きを抑制する行為ですので、ある意味において「自然」の対極に位置するものといえます。

このためより「自然」を強調する立場になればなるほど、この「安定化」というものに対する取り組みが希薄化していきます。そして、安定化とは品質管理の度合いでもあります。

飲み手の手元にあるグラスまで品質を管理しようとすれば、自然と安定化の度合いは高くせざるを得ません

Bioはこの点で不安はほぼありません。発酵、安定化、仕上げすべての工程で常に高い水準で安定化をして行くことができます。

ナチュラルワイについても状況は厳しくはありますが、しっかりとすべての工程に気を使い、管理をしていくことでその総合として高い安定性を実現することが出来ます。ただし、すべてが一つのバランスとして成り立っているものですので、どこか一つでも管理に失敗すればそれをリカバリーすることは至難です。当然、リスクは高くなります。

そのような高い要求精度をすべて乗り越えてリリースされたワインは造り手の高い技量と妥協のない意識の証明でもあり、惜しみのない称賛に価します。

自然派ワインは安定化の対極にあります。

時としてすべてがうまくかみ合い、いいワインが出来ることもあるかもしれませんが、それは偶然の産物であり継続性を約束するものではありません。ボトルを開けるタイミングによってはそれさえ違った結果になるかもしれないほど不安定なものです。

もちろん、自然派ワインといってもいろいろな造り手がいます。このためその管理の範囲、仕方にもある程度の範囲があります。すべてを十把一絡げに扱うことはフェアとはいえませんが、基本的には安定化とは距離を置いたものであることに違いはありません。

これは筆者の私見ですが、醸造とは品質の管理です。

そして品質の管理とは取りも直さず、安定化の度合いもしくは管理だと考えています。つまり、醸造とはいかに安定した品質のものをきちんと飲んでくださる方のお手元まで届けられるか、ということが本来の目的だと思っています。

ワインを造るだけなら簡単です。ブドウを潰して置いておけば勝手に発酵してワインになります。

しかしそこには品質も醸造と呼べるようなものもありません。あるのはただ野放図な自然の営みだけです。しかしワイン造りに栽培学も醸造学も必要ない、と豪語する自然派の造り手の方の意見の行きつく先はここなのです。

自然派とここで呼称したワイン造りは本当にワイン造りと呼べるものでしょうか?

このような自然派の動きで本来は高く評価されるべきナチュラルワインが不当に貶められてはいないでしょうか?

この記事がBioとナチュラルワインの違いの理解だけではなく、世の中のナチュラルワインを巡る誤解の解消に少しでも役立ってくれることを願っています。

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  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

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