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ナチュラルワインの定義とそこに見る意味

更新日:

先日、フランスでナチュラルワイン、いわゆる自然派ワインとかナチュールと呼ばれている種類のワインが具体的にどういうものであるべきかの定義が公式に決まった、という報道がありました。

https://www.decanter.com/wine-news/natural-wine-receives-formal-recognition-vin-methode-nature-435358/?fbclid=IwAR0s7vQayGJrNC-fWgxTqV4NYCX7EY7Vcpk_RMdzLuTVOK8eGojS_RbjW-M

 

こちらのサイトでもナチュラルワインをテーマにするたびに公式の定義がなく不安定な枠組みの中にあるものだ、という点に触れてきましたが、今回の一件はその不安定さが解消される第一歩になる可能性があります。一方で今回採用された定義は実際にはそれほど目新しい内容というわけではなく、大勢に影響するほどのものとも思えない部分があります。

 

今回はこの新しく採用された定義の内容を確認しつつ、その意義について考えていきたいと思います。

 

ナチュラルワインの新定義と従来の定義の比較

今回の報道によれば、フランスで認められたナチュラルワインの定義は以下のような内容になります。実際には名称やロゴの使用などについての規定もありますが、ここでは醸造に関わる内容のみにフォーカスしています。

仏語の原本英文を確認したい方はそれぞれのサイトをご覧ください。

今回採択されている手法は以下のようなものでした。

 

ナチュラルワインの新定義

  1. 有機認証を受けている畑のブドウを100%使用していること
  2. 手収穫であること
  3. 野生酵母による発酵であること
  4. 添加物が不使用であること
  5. ブドウ品質の加工は禁止
  6. ろ過、クロスフィルター、瞬間殺菌、サーモヴィニフィケーション、逆浸透膜等の物理的な醸造技術の使用を禁止
  7. 発酵開始前及び発酵中の亜硫酸添加を禁止。ボトリング前の亜硫酸の添加はワインの種類に関わらず30 mg/l まで可能 (添加を行っている場合はエチケット上への記載義務および使用可能なロゴの変更を伴う)

 

第5項の記載は何を指しているのか具体的には不明ですが、おそらく人為的な凍結・蒸発等による糖度の引き上げなどを禁止しているのだと思われます。

第6項および第7項に関しては今回の情報を掲載しているサイトによっては「ろ過」の文言が抜けてクロスフィルターのみの表記であったり、「ボトリング後の総亜硫酸量が30 mg/l 以下であること」といった記載になっていることがありました。どちらでも大きな差はないように思われるかもしれませんが、醸造面から見ればこれは無視できない大きな違いですので、ここで敢えて強調をしておきます。

 

実はこれまで無秩序に動いていたように思われていた自然派ワイン造りですが、ある程度しっかりとした生産者の方々に最低限度満足しなければならないラインとして参考にされていたものがあります。それが、ビオワインの醸造規定です。

ビオワインにはすでに公的に求められているルールがあります。いわゆるナチュラルワインの生産者の方々の中にもいろいろな方がいらっしゃり、単に自分の考える「自然派」を盲目的に追及された方もいらっしゃれば、ある程度のガイドラインは持とうとする方々もいらっしゃいます。これはそういったガイドラインを持とうとする方々の参考になっていたものです。

なお、このビオワインに関するルールは2012年に施行されたものになります。この法令は比較的頻繁に変更されているため、もしかしたら2020年現在では一部変わっているかもしれない点にご注意ください。

 

ビオワインの公的規定

  1. ビオ認証を取得していること
  2. 冷凍凝縮の禁止
  3. 電気的・物理的な各種加工の禁止 (アルコール度数の引き下げ、亜硫酸量の引き下げ、酒石酸の除去、イオン交換)
  4. 70度以上の加温処理の禁止
  5. 0.2μm以上の孔口径のフィルターを用いたろ過の禁止 (ろ過自体の実施は許可)
  6. 補糖はビオ認証のある砂糖を使う限りにおいて許可
  7. 一部のものに関しては添加物も使用可
  8. 亜硫酸の添加は残糖量が2 g/l 以下の場合、 赤ワインで100 mg/l、白ワインで150 mg/l まで可。上記以外のワインについてはいずれも通常の規定における上限値よりも 30mg/l 低い値を上限とする

※ 加温処理等の一部の手法に関しては規定作成時にまだ議論の俎上にあり、期間を限定して利用が許可されているものがあります

 

ざっと見比べていただくとかなりのところで具体的な数値はともかく前掲のナチュラルワインの規格と似通っていることがお判りいただけるかと思います。

確かに一部で使用が可能であったり、量が多かったりと「緩さ」は見られますが、もともとナチュラルワインを志す生産者たちはベンチマークとなったこのビオワインの規定に満足できず、さらに厳しい自主規制の下でワイン造りをされていた方たちです。ですので、当然のように従来の取り組みがすでにこの規定よりも厳しいものとなっていました。

私が今回の定義の制定は特に真新しことはない、と書いたのはこのような背景に基づきます。

もっとも今回の定義の制定自体がどちらかというと従来の動きの中で内々に作られていたガイドラインを公的に認めた、という位置づけのもののようですので、それもある意味で当然かとは思います。

ですので、今回の定義制定の「公的な」意味は、こうしたガイドラインを無視して独立独歩で好き勝手やっていた方々を排除することにあると私は考えています。

 

醸造的な視点から考える新定義

今回の定義制定の動きがもたらすセールスマーケティング的な意味は上記の通りでいいので、ここからは醸造的な意味について考えてみたいと思います。



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