品質管理

先日公開した記事「ワインのオフフレーバー | UTA / ATA」で、まだ若いはずの白ワインで熟成したようなニュアンスを感じたらそれはUTAと呼ばれるオフフレーバーの1つかもしれない、というお話をしました。

またこの際に、UTAを回避するための対策の1つとしてアスコルビン酸を添加する手法を紹介しています。

ワインのオフフレーバー | UTA / ATA

ワイナリーやワインショップで試飲して気に入った白ワイン。買って帰ってきたけれど、まだ飲み頃には少しだけ早い気がしてもうしばらく自宅のセラーで寝かせることにした。 その後半年経ったある日の食卓。 本当は ...

続きを見る

 

今回はここに関連して、アスコルビン酸のワインへの添加が及ぼす影響について見ていきます。

 

なぜアスコルビン酸の添加なのか

そもそも、なぜUTAの予防にアスコルビン酸の添加が有効なのでしょうか。

 

アスコルビン酸 (ascorbic acid) はいわゆるビタミンCです。

厳密にいえばL体のアスコルビン酸をビタミンCといっていますが、アスコルビン酸=ビタミンCと理解していただいて問題ありません。

 

そこで食品や飲料の原料表示を見ていただくと、多くの場合、このビタミンCの表記で記載があると思います。これは酸味を足すために添加されているのではなく、ほとんどの場合で酸化防止剤として添加されています。

この"酸化防止剤"としての機能がまさにUTAを防止するために必要なビタミンC、つまりアスコルビン酸の効用です。

 

酸化作用を通して生成されるUTA

「ワインのオフフレーバー | UTA / ATA」の記事にも書いていますが、UTAの原因となる物質である2-Aminoacetophenon (AAP / 2-アミノアセトフェノン) はIndole-3-acetic acid (IAA / インドール-3-酢酸) がワインに添加されたSO₂と共酸化し、微量の酸素がスーパーオキサイドやヒドロキシルラジカルに変換され、IAAがフォルミルアミノアセトフェノン (Formylaminoacetophenon) を介してAAPに分解されることで生じます。

つまり、UTAは酸化反応の末に発生します。

 

こうした生成経路の説明を見ると非常に面倒くさく感じますが、極めて単純に言ってしまえば、AAPが酸化作用の結果物なのであれば、そもそも酸化させなければ発生しません。現に抗酸化作用を持つフェノール類を多く含む赤ワインではUTAの発生は確認されていません。

この理屈に基づいて、強い抗酸化作用を持つアスコルビン酸を添加すればワインの抗酸化力が高まり、結果としてUTAの発生を予防できるのです。

 

アスコルビン酸はスーパーオキサイド (O2-)、ヒドロキシラジカル (OH)、ヒドロペルオキシルラジカル (HO2)のいずれとも即座に結合するため、とても優秀な酸化防止剤として多くの食品で広く利用されています。またワインに使う「酸化防止剤」としては伝統的に使われてきている亜硫酸よりもイメージがよく、また頭痛を誘発する、というような誤解も持たれていないため、亜硫酸の代わりにアスコルビン酸を添加するケースも見受けられます。

 

効果のメカニズムとワインへの影響

ここからはアスコルビン酸の添加がワインに及ぼす影響について見ていきます。



このコンテンツの続きを閲覧するにはログインが必要です。

会員の方はログインして下さいログイン
会員登録はこちらから

Member 醸造

2020/9/5

アスコルビン酸の添加がワインに及ぼす影響

先日公開した記事「ワインのオフフレーバー | UTA / ATA」で、まだ若いはずの白ワインで熟成したようなニュアンスを感じたらそれはUTAと呼ばれるオフフレーバーの1つかもしれない、というお話をしました。 またこの際に、UTAを回避するための対策の1つとしてアスコルビン酸を添加する手法を紹介しています。 ワインのオフフレーバー | UTA / ATA ワイナリーやワインショップで試飲して気に入った白ワイン。買って帰ってきたけれど、まだ飲み頃には少しだけ早い気がしてもうしばらく自宅のセラーで寝かせることに ...

ワイン 栽培 醸造

2020/9/5

ワインのオフフレーバー | UTA / ATA

ワイナリーやワインショップで試飲して気に入った白ワイン。買って帰ってきたけれど、まだ飲み頃には少しだけ早い気がしてもうしばらく自宅のセラーで寝かせることにした。 その後半年経ったある日の食卓。 本当はもう少し寝かせておいた方がいいと分かっていながらもついつい我慢できずに取り出してきたのがこのワイン。まだ早いんだろうなぁ、と頭の片隅で考えながらもコルクを抜いて、さぁお楽しみの時間!と思ったらなんだか違う。 まるで何年も寝かせていたような、酸化したようなニュアンスがある。自分の保管方法が悪かったのだろうか?ち ...

Circlepost closed Member 品質管理 醸造

2020/8/22

メンバー限定記事 | チオールと銅の関係

こちらの記事はNagiが主宰するサークル「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」メンバーの方限定の記事となります。 こちらの記事およびサークルにご興味をお持ちいただける方はぜひ覗いてみてください。 ▼サークルへの参加はこちらから https://note.com/nagiswine/circle 醸造家の視ているワインの世界を覗く部 | Nagi@ドイツでワイン醸造家 ワインを中心に、学習や幅広い交流を目的としたオンラインコミュニティ。栽培や醸造、マーケティングなど新しい学びやワイン造りの裏側に触れたい方 ...

Circlepost closed Member 栽培

2020/8/22

メンバー限定記事 | 記事補足: Piwi品種のコストインパクト

こちらの記事はNagiが主宰するサークル「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」メンバーの方限定の記事となります。 こちらの記事およびサークルにご興味をお持ちいただける方はぜひ覗いてみてください。 ▼サークルへの参加はこちらから https://note.com/nagiswine/circle 醸造家の視ているワインの世界を覗く部 | Nagi@ドイツでワイン醸造家 ワインを中心に、学習や幅広い交流を目的としたオンラインコミュニティ。栽培や醸造、マーケティングなど新しい学びやワイン造りの裏側に触れたい方 ...

Circlepost closed Member 品質管理 栽培

2020/8/22

メンバー限定記事 | 畑の状況: Oidium (ウドンコ病) の発生

こちらの記事はNagiが主宰するサークル「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」メンバーの方限定の記事となります。 こちらの記事およびサークルにご興味をお持ちいただける方はぜひ覗いてみてください。 ▼サークルへの参加はこちらから https://note.com/nagiswine/circle 醸造家の視ているワインの世界を覗く部 | Nagi@ドイツでワイン醸造家 ワインを中心に、学習や幅広い交流を目的としたオンラインコミュニティ。栽培や醸造、マーケティングなど新しい学びやワイン造りの裏側に触れたい方 ...

Circlepost closed Member 品質管理 栽培

2020/8/22

メンバー限定記事 | Oidiumの事例

こちらの記事はNagiが主宰するサークル「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」メンバーの方限定の記事となります。 こちらの記事およびサークルにご興味をお持ちいただける方はぜひ覗いてみてください。 ▼サークルへの参加はこちらから https://note.com/nagiswine/circle 醸造家の視ているワインの世界を覗く部 | Nagi@ドイツでワイン醸造家 ワインを中心に、学習や幅広い交流を目的としたオンラインコミュニティ。栽培や醸造、マーケティングなど新しい学びやワイン造りの裏側に触れたい方 ...

Circlepost closed Member 栽培

2020/8/22

メンバー限定記事 | ブドウの日焼け

こちらの記事はNagiが主宰するサークル「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」メンバーの方限定の記事となります。 こちらの記事およびサークルにご興味をお持ちいただける方はぜひ覗いてみてください。 ▼サークルへの参加はこちらから https://note.com/nagiswine/circle 醸造家の視ているワインの世界を覗く部 | Nagi@ドイツでワイン醸造家 ワインを中心に、学習や幅広い交流を目的としたオンラインコミュニティ。栽培や醸造、マーケティングなど新しい学びやワイン造りの裏側に触れたい方 ...

Circlepost closed Member 仕事の流儀

2020/8/22

メンバー限定記事 | グリーンハーベストの裏側

こちらの記事はNagiが主宰するサークル「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」メンバーの方限定の記事となります。 こちらの記事およびサークルにご興味をお持ちいただける方はぜひ覗いてみてください。 ▼サークルへの参加はこちらから https://note.com/nagiswine/circle 醸造家の視ているワインの世界を覗く部 | Nagi@ドイツでワイン醸造家 ワインを中心に、学習や幅広い交流を目的としたオンラインコミュニティ。栽培や醸造、マーケティングなど新しい学びやワイン造りの裏側に触れたい方 ...

Member ワイン

2020/8/31

ハイブリッド品種は「不味い」のか | フォクシーフレーバーを考える

ワインの旧世界と呼ばれる欧州から日本のワイン業界を見ていると感じる大きな違いの一つに品種に関するものがあります。 国や地域によって栽培しているブドウの品種は違うものの、EU圏内のワイン法によってワインを生産している国では「ワイン」として認められるためには最低限、Vitis viniferaと呼ばれる種に区分される系統のブドウ品種でなければならないとされています。一方で日本ではVitis labruscaなど、アメリカ系品種と呼ばれる品種やこうした品種との直接交雑種であるハイブリッド品種を使ったワインをよく ...

Member ワイン

2020/7/24

ワインとアレルギー

ワインといえばブドウだけから造られているので、アルコール以外にアレルギーの心配はない、と思われている方は少なくないのではないでしょうか。 ところが事実はこのような認識からは少し離れたところにあります。   ワインに含まれるアレルギーの原因となる成分であるアレルゲンとしては、酸化防止剤の名前で知られる二酸化硫黄が有名です。SO₂という表記もされるこの化学物質は頭痛の原因物質であるという、間違った俗説でワイン業界における最大の悪役に一躍上り詰めてしまった添加物の一種ですが、ワインにはこうした原料のブ ...

© 2020 Nagi's Wineworld