二酸化硫黄 醸造

二酸化硫黄、正しく理解していますか? 1

更新日:

 

このBlogでも度々話題にしている二酸化硫黄、やはり注目度の高い話題のようで、多くの方に御覧頂いているようです。ただその一方で、この物質を正しく解説したものが少ないからなのか、この二酸化硫黄というものを正しく理解しないまま、健康を害するもの、よくないものと一元的に捉えてしまっている方も多いように思います。今回は数回にわたってこの嫌われ者の持つ、正しい姿を解説していきたいと思います。

 

以前に投稿された二酸化硫黄に関わる記事はこちら

⇒ 二酸化硫黄無添加ワインの作り方

⇒ ナチュラルワインは甘くないんじゃなかったんですか? 其の壱

⇒ ナチュラルワインは甘くないんじゃなかったんですか? 其の弐

二酸化硫黄は防腐剤か?

時々、二酸化硫黄のことを防腐剤、と表現する言説に出会うことがあります。気持ち的にはイメージが悪いこともあり、間違いです、と切って捨てたいところなのですが、現実問題としてそのような効果がないわけでもないため、単純明快に否定することが難しいのが非常に悩ましいところです。

 

そもそも、防腐剤、とは何でしょうか?

 

当然、食品にしてもなんにしても、物が腐るのを防止するもの、です。

では、腐るとはどういう事を言うのか。辞書によれば、細菌の作用で植物性・動物性のものが分解して変質すること、と解説されています。そう、細菌、もしくは微生物によって有機物が変質すること、特に人間にとって都合の悪い方向に変質することを腐る、と言っているわけです。

そして、二酸化硫黄の持つ効能の一つとして、この細菌や微生物の動きを抑制する、というものがあります。この意味において、二酸化硫黄は確かに防腐剤でもあるのです。しかし、ここには但し書きがつくのです。そして、その但し書きのことを知っている人はおそらくそれほど多くないと思います。

 

二酸化硫黄の持つ防腐作用は限られている

ここからは詳しい話をするためには化学の知識が必要になります。ただ、そこまで解説しているとキリがないので、ここではごく簡単にまとめていきます。しかし、この知識は当然、醸造家であるなら知っていなければならない知識ではあります。醸造家は醸造家であると同時に、化学者でなければならない所以の一つです。

 

ごくごく簡単に言ってしまうと、二酸化硫黄はワインの中においてはその大部分がイオン化した状態で存在します。そしてこのイオン化した二酸化硫黄は、上記のような、微生物や細菌に対しての影響力をほぼ持ちません。つまり、ワイン中に存在しているほとんどの二酸化硫黄は防腐剤としての役目は持っていません。この意味において、二酸化硫黄は防腐剤ではありえないのです。

 

細菌や微生物の活動を抑制する意味

ワインの中において二酸化硫黄が防腐剤的な意味をほとんど持たないとはいっても、この物質が持つ、細菌や微生物の活動を抑制する効能が意味を持たない、ということにはなりません。むしろこの効能がなければ、衛生的なワイン造りは出来ない、といっても良いくらいです。

 

ワイン造りの過程において、微生物汚染に対処していくことは極めて重要なテーマです。

日本酒や味噌、醤油のような日本人に馴染みの深い他の発酵製品と違ってワインは、基本的には原料を事前に加熱することなくそのまま使います。加工前に洗浄したり、消毒したりということもしません。言ってみれば、屋外に長期間にわたって置かれていたものをそのまま加工しているのです。このため、加工前のブドウには多くの雑菌や微生物が付着している可能性が極めて高く、それがそのままワインとしての加工工程に入ってきます。あまり大っぴらに言いたいことではないですが、人によってはなんと不衛生な、と顔をしかめてもおかしくないことだと言えるのです。

 

そんなブドウの加工工程において、いかに衛生状態を担保するのか、という命題への答えが、二酸化硫黄の添加なのです。

二酸化硫黄は前述のとおり、細菌や微生物の活動を抑制する効能を持っていますので、これらの雑菌の繁殖を抑えることが出来ます。また、カビの増殖を抑えることにも効果的です。確かに二酸化硫黄はアレルゲンかもしれませんが、だからといって少量の二酸化硫黄を使用することでより大きな健康被害や味や香りへの悪影響を及ぼす微生物汚染を防止することが出来るのであれば、この物質の使用に意味が無いとは言えないのではないでしょうか?二酸化硫黄を毛嫌いしていらっしゃる方にはぜひ一度、考えてみていただきたいことです。

 

二酸化硫黄への認識と使用の制限

人体への影響の話が出てきましたので、ここで二酸化硫黄の持つ人体への影響と、ドイツにおける使用量の制限に関する規制について説明しましょう。

 

まず、二酸化硫黄は人体に対するアレルギー物質、つまり、アレルゲンである、という認識はドイツを含むEU域内においてもごくごく一般的なものです。このため、ワインに対しても大量に添加することは法律で禁じられています。

二酸化硫黄のワインへの添加は、具体的にはそのワインの等級と残糖の量によって細かく規定されています。

  • 赤ワインで残糖が4 g/l 以下: 150 mg/l
  • それ以外のワインで残糖が5 g/l 以下: 200 mg/l
  • 赤ワインで残糖が 5 g/l 以上; 200 mg/l
  • それ以外のワインで残糖が 5 g/l 以上: 250 mg/l
  • シュペートレーゼおよび多数のA.O.C. ワイン: 300 mg/l
  • アウスレーゼおよびそれに類似した他国のワイン: 350 mg/l
  • アイスワインやトロッケンベーレンアウスレーゼなどのさらに等級の高いワインおよびそれに類似した他国のワイン: 400 mg/l

また、それぞれのワインで10 mg/l 以上の二酸化硫黄を含む場合には、エチケットにその旨を明記することが義務付けられています。

 

なお、ワイン造りの過程ではさまざまな理由とタイミングでワイン中に二酸化硫黄が入り込んできます。これらの理由の中には、醸造家が狙ったものではないものまで含まれています。その一方で、上記の規定は最終的にワインの中に確認できる二酸化硫黄の総量を対象としており、その由来は一切問われていません。つまり、それが自然生成されたようなものであったとしても、ワイン中に規定量以上存在していればエチケットには明記しなければならないですし、仮に規制された量以上に入っていればそれはワインとして販売することが出来なくなります。

 

次回は、二酸化硫黄の持つ抗酸化作用についてのお話しをしたいと思います。

 




あなたへのおすすめ記事

1

先日、当サイトの記事を読んでくださっている方から「ブドウ畑やワイン生産者における山や川の重要性」についてご質問をいただきました。せっかくですので今回はこのテーマについて筆者の個人的な見解に基づくものに ...

2

前回は主にドイツにおけるEcoとBioの違い、そしてEcoの認証をとるために求められる条件についての説明をしました。   関連 ビオとエコは違うのか?   今回は、ワイナリーが苦労 ...

3

棚に並んでいるワインのボトルを見ていると、実に様々な種類の栓を使ってボトルが密閉されていることがわかります。コルク、合成コルク、スクリューキャップなどなど。最近は技術の発展に併せてシリコン系のものも出 ...

-二酸化硫黄, 醸造
-, , , , , ,

Copyright© Nagi's Wineworld , 2019 All Rights Reserved.