栽培

除草剤をめぐって

05/11/2018

今日は先日と同様に、幹の部分に出た芽の除去を継続して行ってきました。なにしろこの作業、ブドウ畑に植わったすべての樹を一本、一本相手にしていきますのでとにかく時間がかかります。ブドウの品種や樹齢によっても芽の出方はかなり違うとはいっても、結局、一本一本を実際に視認しながら作業を行っていくことには変わりなく、また、この作業と並行して副梢の除去なども行っているので、時間は飛ぶように過ぎていってしまいます。

ここ数日でそれなりの数をこなしてきているとはいっても、もともとのブドウの本数が多いので、まだしばらくはこの作業が続きそうです。

除草剤はありかなしか

そんななか、ブドウ畑のなかで雑草の勢いが増してきたことを背景に、雑草対策を行うことが必要になってきています。

ブドウ畑の緑化管理”の記事でも書きましたが、ブドウ畑における下草は管理される必要があります。このため、ある程度勢力が強くなってきてしまった下草は、なんらかの方法で除去、抑制されなければなりません。そしてこの方法というのが、刈るか、枯らすか、なのです。

刈ると枯らすの間にある差

刈る、とはその言葉のとおり、道具を使って雑草を刈ることです。主な方法はトラクターを使う方法と、手持ちの機械、もしくは鋤や鍬といった完全な手動の道具を使う、人力による方法とがあります。”ビオとエコは違うのか?”という記事でも触れましたが、Ecoの認証を持った、もしくは取ろうとしているワイナリーでは下草の管理はもっぱらこの方法によることになります。

この一方で、枯らす、という選択肢もあります。これは、除草剤の使用を意味します。

どうしても除草剤、という単語を聞くと、ベトナム戦争における枯葉剤の投入とその被害によるベトちゃん・ドクちゃんといった印象が頭に浮かびますので、諸手を挙げてこの化学薬品の使用に賛成する人は少ないとは思います。しかし、少なくともこの薬剤が有用かどうかは好悪の感情とは別に知っておくべきことです。そして、この薬品を使用することは、不要な下草を安価に、かつ効率よく除去する、という点において有用なのは間違いのない事実です。特に傾斜の強い畑などではその有用性はさらに高まります。

このような有用性を理解した上で、使う、使わないを決めることが重要だと思います。

物議を醸す、Glyphosat

ところで、この除草剤というものの中でもっとも一般的に使用されているものが何なのかはご存知でしょうか?

アメリカ企業、具体的に言ってしまえば、モンサント社が製造、販売している製品がそれなのですが、そこに使用されている有効成分であるGlyphosatというものが今、ドイツ国内で大きな物議を醸しています。2017年時点でEUではこのGlyphosatの使用認可を5年延長しており、これだけであればドイツ国内でこの成分を含んだ製品を使うことには何の問題もないはずでした。ところがこのGlyphosatに発がん性のリスクがある、という内容の研究結果が発表されたことによって、事態が大きく変わってきたのです。

使用禁止をめぐる複雑な動き

EU域内における化学薬品のホワイトリスト、もしくはブラックリストはEU全体で管理されていますが、ここでホワイトリストに載せられた化学品であってもEU加盟国内での独自判断により自国内における使用を禁止することは認められています。そして、ドイツは各州に限定的統治権の保有を認めた連邦制共和国ということもあり、さらに各州で独自に州内における薬品の使用を制限する法律を制定することが可能となっています。

この結果何が起きたのかといえば、一部の州でGlyphosatの発がん性リスクを理由にこの化学物質を含む製品の使用を禁止した法律が可決されたのです。そしてそこから、徐々にこの動きが拡大していき、今ではドイツ全土を巻き込んだ議論にまで発展しています。

Glyphosatは有害なのか?

ただこのGlyphosatの示す発がん性に関しては極めて低い、もしくは、リスクを含むかも知れない、という程度の、ごくごく軽度のものに過ぎないとする調査結果も発表されているなど、そもそも発がん性リスクがあるのかどうかもはっきりしていない状況です。そのような状況でいきなり使用を規制した事例が生じたために、これまでもこのGlyphosatを使ってきたし、これからも使いたい農家などからは大きな不満の声が上がってもいます。

この手の議論ではお互いに自分に都合のいい結果だけにしか目を向けないという傾向が少なからず出てくるのものなので、ある程度は仕方ないことなのでしょうが、実務的にはこれまで除草剤を使っていた場所でそれが使えなくなるというのは様々な意味で大問題を引き起こします。

除草剤なんて使わないほうがいいに決まっているんだから、禁止されたっていいじゃないか、という消費者の声も聞こえてきそうですが、ではその代償として製品価格の値上げをはじめとした様々な変化を許容できるのかといえば、これもこれで難しいところです。この後このGlyphosatをめぐる動きがどうなっていくのか、まだしばらくは目が離せそうにありません。

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  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

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