Member 品質管理

新しい持続可能性への検討 | Bioを再考する

投稿日:02/01/2020 更新日:

前回の記事「Bioを再考する | 認証返上の理由とは」で最近のBio認証を巡るワイナリー側での動きを紹介しました。

Bioを再考する | 認証返上の理由とは

先日、休暇で日本に一時帰国した際にひょんなご縁から勤めているワイナリーの紹介を兼ねたワインセミナーをやらせていただける機会をいただきました。 年明けすぐの開催となったそのセミナーには数人、ワインの輸入 ...

続きを見る

 

その中で最近の動きとしてBio認証を返上する理由の最たるものが以下の二つであること、また筆者の勤めるワイナリーでは除草剤の部分的な使用を選択したためにそれまで30年にわたって保有していたBio認証を2018年より返上したことを記載しました。

  1. 病気への対策として規定量以上の薬剤を散布せざるを得ない
  2. 急斜面における除草剤使用の必要性

 

30年もの間保持したBioの認証を返上したことに対してはいろいろとネガティブな憶測も呼んでいますが、実際には我々はむしろポジティブな思考に立ってこの決断をしています。

それが、前回の記事のまとめにも書いた新しい動きへの参画です。

従来のBio認証という視点とは異なった、新しい視点から見直そうとする機運が高まってきています

 

今回の記事では今までのBio認証に代わるものとして注目されつつある新たな団体と、その団体が考える持続可能性というものについて紹介します。

 

Bio / Ecoとはなんなのか

Bio認証を返上するケースにおけるワイナリー側の事情を見てきましたが、そもそもBioやEcoといったものがどういったものなのかをもう一度振り返ってみます。

 

まずBioもしくはEcoを認証というシステム化された枠組みの中で見てみると、その本来の意味および目的はSustainability、持続可能性です。

ところが日本語で書かれたとある本にはEco認証を取得したブドウの有機栽培について、

農薬は … (中略) … 使用できるものも … (中略) … あるいは残留が考えられないもので安全性、安心感ともに満たすものに限定されている… (後略)

と書かれています。

ここで注目しておきたいのが、上記の引用にも書かれている「安全性、安心感ともに満たすものに限定」という部分です。

例えこの文章を書かれた著者の方にそのような意図はなかったとしても、この表記だけ見てしまうといかにもBio認証というものが人間の健康的な生活のためにあるように感じてしまいがちです。

 

BioやEcoはヒトのためにあるものか

確かに結果的には人間の健康的な生活、という部分につながることでもあるのですが、直接的な意味でBio認証が目指す持続可能性とは地球、およびそこに存在するあらゆる生態系にとってのものです。

決して、ワイナリーや消費者である人間といった小さな対象に対するものではありません

 

ここは認証の意味と消費者側の認識との間に誤解と乖離が生じやすい部分です。そしてこのような消費者側の誤解に基づく市場における購入意欲への影響が、売り上げや商品展開戦略上の競争力につながる点として評価され、結果としてインポーターさんがBio認証を持っていないワイナリーのワインは取り扱わない、という結論に結びついていると考えられるのです。

この意味においてはBio認証というものはその実態の如何に関わらず、極めて有力な販促ツールとなりえます。

 

しかし実際にはこの逆です。

多少、意地の悪い見方をするのであれば、本来の対象である地球や生態系の持続可能性を保持するためであれば極端な話としてワイナリーやワイン程度であればどうなってもいい、という考え方がそこには含まれています。

そのために仮にブドウ畑に病気が蔓延してもそれを防止、対処するための薬の使用量の例外的な増加はそう簡単には認められません。ブドウ畑という限られた対象にとってはポジティブであっても、地球の存続可能性のためにはネガティブだからです。

つまり、販促ツールどころか、ことと次第によっては自分たちで自分たちの首を絞めつけ、最悪自死に至ることを唯々諾々として受け入れなくてはならない、という制約なのです。

 

BioはBioのためにあるもの

Bio認証というものがワイナリーの存在に特化したものではなく、より広範囲のものに適合するように一般化されたものである以上、その認証の在り方は対象によって少しずつアレンジされたものにならざるを得ないことはある意味で当然のことです。より汎用性のあるシステムとして確立するために注目点もある程度絞り込まざるを得なくなっています。

システムをシステムとして確立する必要性から、よりコアとなる部分にのみ集中した運用となる必要に迫られているのです。

 

そしてごく簡単に言ってしまえばワインという範囲におけるBioの目的とは、土壌の保持にその大部分が置かれています。土壌とそこに存在する生態系を痛めつける可能性のあるものの使用を規制し、その量を制限しているのです。

逆の言い方をすれば、そのような物質さえ使わなければあとは何をやっても認証保持には影響しない、という点にこの認証の功罪があるとも言えます。

 

注目されつつある持続可能性の在り方

最近のドイツではこうしたBio認証の在り方に疑問を呈する向きが出てきています。地球規模での持続可能性とはそうした限定的な視点によるのではなく、もっと総合的な取り組みの中で守られるべきものなのではないか、という視点です。

実際に、地球全体の持続可能性を考えたときに土壌さえ守っていればすべてが安泰、ということはないでしょう。

 

この点をもう少し具体的に見ていくと、例えば化石燃料などに代表されるエネルギーの使用量です。これは従来のBio認証では考慮されない項目ですが、実際には地球環境の保全に対しては大きなインパクトを持った要因であることに疑いはありません。

 

実際にワイナリーでは一般に思われているよりも大量のエネルギーを直接的、間接的に使用しています。分かりやすいところではタンクや各種設備の洗浄に使用する水やお湯、ブドウ栽培で必要とされるトラクターなどの燃料が挙げられます。

またボトルなど日常業務で必要となる各種消耗品の運搬や、ワインを充填して重くなったボトルの搬出、輸送にも多くのエネルギーが消費されています。こうしたエネルギーの消費を管理し、削減することはある意味においては除草剤や殺虫剤の使用を制限し、土壌環境を守ろうとする以上に自然環境や生態系のより長期的な持続性には効果的であろう、という点については一般論として考えてみていただいても理解していただきやすいのではないでしょうか。

 

自然農法=持続可能性とは限らない

なお、意外に思われるかもしれませんが一部分的な見方ではビオやエコ、バイオダイナミズムに即したブドウ栽培ではこのような動きに反しているケースがあります。

Bio認証下やバイオダイナミズムの考え方に基づいたブドウ栽培では薬剤散布の回数が増えたり、前回の記事で書いた除草作業の回数が増えます。そうするとそのために動かさなければならないトラクターの走行距離が増え、必然的に消費されるエネルギーが増えたりするためです。

 

場合によってはだからトラクターではなく馬や牛で耕作をすればいい、と仰る向きもあるかもしれませんが、馬や牛でできることはそもそも限られています。また牛などが排出するメタンは地球温暖化に対して少なくない影響を与えてもいます。”機械を使わないから地球環境に優しい”というわけでは必ずしもないのです。



このコンテンツの続きを閲覧するにはログインが必要です。

会員の方はログインして下さいログイン
会員登録はこちらから

サークル 【醸造家の視ているワインの世界を覗く部】へ参加してみませんか?
ワインを中心に、学習や幅広い交流を目的としたオンラインコミュニティ。栽培や醸造、マーケティングなど新しい学びやワイン造りの裏側に触れたい方はぜひ。
サークルメンバーの方はすべての記事がお読みいただけます。

▼サークルへの参加はこちらから
https://note.com/nagiswine/circle



あなたへのおすすめ記事

1

ブドウ栽培をしていくうえで、単位面積あたりに何本のブドウの樹が植えられているのか、という点は畑全体をデザインしていくうえで重要な情報になります。とはいっても畑の形状は千差万別。しかも周囲との状況によっ ...

2

二酸化硫黄、もしくは亜硫酸、という単語は、最近の日本のワイン業界では蛇蝎のごとく忌み嫌われる不健康ワードの代表のようになってしまっている印象を受けます。その一方で、これらの酸化防止剤を添加しない、二酸 ...

3

  このBlogでも度々話題にしている二酸化硫黄、やはり注目度の高い話題のようで、多くの方に御覧頂いているようです。ただその一方で、この物質を正しく解説したものが少ないからなのか、この二酸化 ...

-Member, 品質管理
-, , , , , ,

© 2020 Nagi's Wineworld