先日、休暇で日本に一時帰国した際にひょんなご縁から勤めているワイナリーの紹介を兼ねたワインセミナーをやらせていただける機会をいただきました。
年明けすぐの開催となったそのセミナーには数人、ワインの輸入業に従事していらっしゃる方にもご参加いただきました。その際に我々のワインの日本への輸入の可能性についてもお話をさせていただいたのですが、その際に頂いた回答はすべての方が同じで、「Bioではないから難しい」というものでした。
この回答をドイツに持ち帰り職場のボスに話したところ、「日本ではBioであることがそこまで重要視されるのか?」と驚いていました。ドイツでもBioであることを重要視する流通業者は相当数存在するのですが、複数社のインポーター全社が同様の回答をしたことが意外だったようです。
日本でお話をさせていただいた際にはなぜそこまでBioであることにこだわるのか、という点については深く掘り下げてお話をさせていただかなかったため、その正確な理由はわかりません。一方で、日本の市場を考える上で予想できる点はいくつかあります。
今回はこの件を起点にして、BioおよびEcoというものを再度考えてみたいと思います。
なお、欧州においてはBioという言葉とEcoという単語の間に差はなく、同様のものとして扱われています。詳しくは「ビオとエコは違うのか?」の記事を御覧ください。
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ビオとエコは違うのか?
世の中のワイナリーを見渡していると、通常のワイナリーの他にビオロジックとエコロジック、ビオディナミッシュ(英語:バイオダイナミクス)というような区分を見つけることが出来ます。 今回はこの ...
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当ワイナリーの現状
今回のお話を進めていく前に、簡単に筆者がこの記事の執筆時点、つまり2020年1月時点で勤めているワイナリーの状況について簡単に記載しておきます。
当ワイナリーは1988年からいわゆるBio認証を持ったワイナリーとしてブドウの有機農法による栽培を行ってきましたが、2018年よりこの認証を返上しました。こう書くと有機栽培自体を止めてしまったように取られるのですが、そうではありません。我々は基本的には2018年以降もそれ以前と変わらない方法でブドウを栽培しています。
確かにBioの認証団体からは脱退しているため、Bio認証を獲得・維持するために求められる各種制限事項を守る「義務」はなくなっていますが、このことが即農薬などの大量使用につながっているわけではありません。単に使おうと思えば使える、というだけで、実際に使っているわけではないためです。
「Ecoの隣にある問題」という記事でも触れていますが、Eco認証保持の条件と同等、もしくはさらに厳しい基準でブドウを栽培していながらも敢えて認証を取得していないワイナリーもドイツでは多く存在しています。認証なし=有機栽培ではない、という単純な構造は必ずしも成り立ちません。
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Ecoの隣りにある問題
前回は主にドイツにおけるEcoとBioの違い、そしてEcoの認証をとるために求められる条件についての説明をしました。 関連 ビオとエコは違うのか? 今回は、ワイナリーが苦労 ...
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特にドイツは国民性としてもこのあたりに対する感度が高く、仮に認証を持っておらずかつその方面に大きな興味関心を持っていなかったとしても、今どきどこかの国のように薬剤を大量に使うようなことはありません。使うにしても当然のように必要最低限度を見極め、その上でさらに可能な限り使用を制限することはすでに人々の当たり前の考え方となっています。
このため当ワイナリーでも2018年以降、使用している農薬などの量が劇的に増えているということはありません。むしろ2018年や2019年は天候が良かったためブドウに直接散布される薬剤に関してはその使用量を減らした程です。
Bio認証を返上する理由
ではなぜ当ワイナリーはBio認証を返上したのでしょうか。
Bio認証を取得しない、もしくは返上する理由は様々ですが、ワイナリーにおける一般論として見たときにはその理由は以下の2つが非常に大きなウェイトを占めています。
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