醸造

発酵にとってもっとも怖いこと

03/31/2018

ブドウの収穫が終わり、いよいよジュースをワインに変えていく重要な工程である発酵。この時にワインメーカーが最も恐れ、最も気を使うことが何か分かるでしょうか?

 

ワインが微生物に汚染されてしまうこと、作業中にこぼしてしまうこと、発酵温度を管理しきれないこと。すべて間違いではありません。どれに対しても気を使う必要があります。しかし、この工程において最も怖いこと、それは、”発酵が途中で止まってしまう”ことです。

 

発酵がなかなか始まらない、というのは待てばいいですし、微生物の汚染に対しては事前にきちんとした対策をしておけばそれほど恐ろしいことではありません。もちろん、発酵を管理しきれないことは困りものでありますが、どうしても取り返しのつかない失敗になってしまうことは稀です。

一方で、発酵が途中で止まってしまうことはこう簡単には行きません。

 

発酵が止まる、ということ

これは、発酵の中断というものが非常に多くの原因によって引き起こされうるものだからです。

これらの原因は、単純で比較的簡単にリカバリーすることが可能なものから、一歩間違えばワインの廃棄を考えなければならないような重大なものまで様々です。そして、それらの問題に対して取りうる対策もまた様々なのです。

 

一般的によく知られている発酵中断の原因としては、温度管理のミスやそもそものブドウの糖度の不足などがあります。基本的に発酵の度合いは酵母の活動量に左右されるので、いかに酵母が活動するのに快適な環境を整えてやるのか、ということに注目するのが発酵管理の基本となります。

つまり、発酵が中断してしまう状況というは、酵母の活動環境が著しく悪い、ということと同意なのです。

 

栄養不足による発酵の中断

この”酵母の活動環境が悪い”状態の代表として醸造家間でよく言われるのが、発酵中のモストやマイシェ中における酵母の栄養不足です。

酵母の栄養と言ってもいろいろありますが、代表的なものは窒素やアンモニア、もしくはビタミンの含有量不足です。これらの栄養成分が不足すると酵母の代謝活動が低下し、結果として発酵の中断等につながってしまうのです。

このため、発酵前の段階で窒素量等が不足していることが予測される場合には、予めこれらの栄養素をモストやマイシェに添加しておくことで発酵の中断を防止することは、もはや醸造家にとっては常識ですし、そのための製品もいろいろと販売されています。

 

この一方で、最近の研究で発酵時に必要とされる窒素量が従来基準として認識されていた量よりもかなり少なくていいことが分かってきています。その研究によると発酵中に酵母が必要とする窒素等の量は発酵させるジュースの糖度によって変化するものの、従来言われていた量の半分程度でも発酵に対して悪影響を持たないそうです。

 

これはもちろん窒素等の量が少なくてもなんの問題もなく発酵を完了できる、ということの保証ではありませんが、同時にある程度までの範囲であれば発酵を守るための添加物を使わなくてもいい可能性を示唆するものです。また、収穫時にブドウに含有される窒素等の量を維持するために行われている、畑での作業にも影響を持ちえます。

 

窒素量は基本的に不足する方向に行きがちなので、このような状況は発酵管理上、大きな意味を持ち得るものです。もっとも、これらの物質量に関しては少ないよりは多いほうがいいものなので、少なくていいから増やすための対策をしないでいい、というものではないところもまた、この手の話が単純に完結しないところではあるのですが。

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