醸造

ロゼをつくるということ

03/21/2018

春が近づいてくると、花見の季節にはキレイな桜色のロゼを、という謳い文句とともにロゼが売りに出されている光景を目にすることが増えるイメージです。本当は美味しいのに、なんとなく中途半端なイメージがつきまとってしまうロゼを押し出していくには、こういった季節感や桜との印象をつなげたマーケティングが大事なのでしょう。

 

ロゼはどのブドウから造られるのか?

さて、イメージに関することはさておいて、ロゼを作る際に使われる原料のブドウが黒ブドウか白ブドウか、またはその両方か、という問いにどう答えますか?

ドイツでワイン作りを学んだ筆者は、当然のように黒ブドウ一択です。ドイツではロゼを赤ワイン用ブドウ以外から作ることは法律的に認められていないので、これ以外の選択肢はそもそもありません。つまり、ドイツにおいてロゼは乱暴なまでに簡略化して言ってしまえば、抽出の軽い赤ワイン、ということです。ちなみにこの"抽出"の程度によってさらにいくつかの段階分けがされていますが、それはまた別の機会に紹介します。

ドイツにおける赤ワインと白ワインの混合

Twitter上でPostした、ドイツ国内で赤ワインと白ワインを混ぜてロゼが造れるってお話は間違いですよ、というPostが意外に反応が多かったので、念のため一次情報と合わせて記載しておきます。 あぁ、 ...

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抽出の程度はどうやって決められるのか?

この"抽出の軽い赤ワイン"であるところのロゼですが、醸造的にいろいろな背景から作られる可能性があります。それらは大体、以下のパターンに分類されます。

 

  1. 積極的に抽出を軽くするケース
  2. 抽出を軽くせざるを得ないケース
  3. 抽出したくても出来ないケース

 

1.は造り手がそれを狙ってやっているので非常にポジティブなケースです。3.も問題がないとは言えませんが、それほどネガティブなケースとは言えません。問題なのは2.のケースです。これは何らかの原因で抽出をかけたくない、かけられない、ということでもあるからです。

そして、このようなケースは往々にして収穫されたブドウの健康状態に起因しています。つまり、ブドウの健康状態が悪く、強い抽出をかけてしまうと苦味やえぐ味といった味覚的なもの以外にも嗅覚的、もしくは視覚的にネガティブな影響を受けてしまうような場合にはワインメーカーの望むと望まざるとにかかわらず抽出を軽くせざるを得ず、結果としてロゼになってしまう、ということです。

もちろん造り手としてはいつでも自分の決断で抽出量を決めたいところですが、必ずしもそうは出来ないのがワイン造りの難しさ、とも言えるのでしょう。

 

本気のロゼには捨てがたい魅力がある

残念ながら瓶詰めされ、棚に並んだロゼをみて、そのロゼがどのような理由からロゼになったのかは判別が難しく、時には残念なものを手にとってしまうこともあります。しかし、上の1.のような、積極的に作られたロゼは赤のようにアグレッシブなまでに前面に出てくる香りや味を敢えて控えめにすることで非常に繊細にブドウの特徴を表現します。その明るくキレイな色とともに、一歩下がったところから慎ましく自分を主張してくる素晴らしいロゼをぜひ一度、楽しんでもらいたいと思います。

 

ロゼやそれによく似たワインのヴァリエーションに関する記事を更新しましたので、こちらも御覧ください。

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醸造的な意味から厳密なお話しをすると、ロゼはロゼであっていろいろは基本的にないのですが、それでも2つ、3つはヴァリエーションが存在していますし、さらには醸造的な条件を知らなければロゼとなんの違いもない ...

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  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

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