醸造

ロゼ?ワインのいろいろ、知っていますか? 其の弐

04/08/2018

前回、ロゼであってロゼでない、ドイツのこだわりの名称としてRotling (ロートリン) をご紹介しました。今回はロゼであるのにロゼでないように扱われるヴァイスヘルプストとブラン・ド・ノワールをご紹介したいと思います。

ロートリングに関する記事はこちら

ヴァイスヘルプストとブラン・ド・ノワール

次にご紹介するのがWeißherbst (ヴァイスヘルプスト) とBlanc de Noir (ブラン・ド・ノワール) です。これらはRotlingとは違い、今度はロゼのヴァリエーションの名前となります。

ヴァイスヘルプストとはドイツにのみ存在する、ちょっと複雑なロゼワインのバリエーションです。

ヴァイスヘルプストとエチケット上に記載するためには、まず100%同じ品種の黒ブドウから造られていなければなりません。つまり、単一品種のワインです。さらに95%以上を色がほとんどついていないように造らなければならない、というルールがここに付け加えられます。逆にいえば、5%まではマセレーションを行った状態の果汁を使うことが許されています。ヴァイスヘルプストの色味は金色に近いような色から明るいロゼ色までとなりますが、こうした色の多くがこの5%まで許された色味のある果汁の添加量によって決まる部分となります。

ヴァイスヘルプストの特徴はエチケット上に必ずブドウの品種名が記載される点です。そんなの珍しくない、と思われるかもしれませんがロゼでは複数品種を混ぜていることも多く、そうしたワインではエチケット上に品種が記載されないことも多くあります。しかも白ワインや赤ワインでエチケット上にブドウ品種が記載されている場合と、ヴァイスヘルプストとして品種名が記載されている場合とではその意味合いが少し異なります。

ロゼに限らず、すべてのワインは必ずしも単一のブドウ品種から造られなければならないわけではありません。ドイツで言えば、85%以上を単一の品種で造っていればそのワインのエチケットには単一品種の名前を記載できます。つまり、白ワインのエチケットに“リースリング”と記載されていればそのワインは少なくとも85%はリースリングから造られている、ということです。

赤ワインや白ワインではエチケットに記載されたブドウ品種に割と敏感な方が多いのですが、なぜかロゼではこの意識が希薄になりやすいようです。これはおそらく、ロゼを無意識的にでも赤に白を混ぜたもの、という考えがあるため、もしくはシャンパンがそうであるためなのではないかとも思うのですが、ロゼに関しては比較的、元から複数のブドウを混ぜて造っていると思われることが多いのです。

そうは言っても、ロゼのエチケットにブドウ品種名が記載されていれば、当然そのロゼは85%以上、単一のブドウ品種で造られていることになります。

限りなく、単一品種に近い、ヴァイスヘルプスト

ここでヴァイスヘルプストです。

ワイン業界的にはボルドーのような例外もあるものの、なんとなく、単一品種=いいワイン、という意識が根強くあるように思います。これは世界的にもそうで、単一品種で造っていることをアピールすることはプラスになりこそすれ、マイナスになることはまずありません。

そんな中で、ヴァイスヘルプストは確実に100% 単一品種で造られているのです。これは非常に強いアピールポイントである、きっとワイン法でこのワインの規定を決めた人はそう考えたのだと思います。

実際、ワイン法におけるヴァイスヘルプストに関する規定を読んでみても、ロゼである、というよりは単一の赤ワイン用ブドウ品種から造られた軽く絞られた赤ワイン、というようなニュアンスが強く感じられます。

このような意味では、ヴァイスヘルプストもロゼではなく、色は薄いけれど、赤ワインに区分されているようなものなのです。ちなみに面白いことに、しっかり赤ワインに造ったものに関しては上記の85%を区切りにした区分以外には、ブドウ品種の比率に関する規定はありません。なので、いくら単一品種にこだわって赤ワインを造ったとしても、エチケットにヴァイスヘルプストのようにそのことをアピールするような文言を入れることは出来ないのです。

色の薄いロゼ、ブラン・ド・ノワール

ブラン・ド・ノワール (Blanc de Noir) とはもともとはシャンパンの名称なのですが、これがドイツに来て少し意味を変えて使われています。

シャンパンにおけるブラン・ド・ノワールはシュペートブルグンダー (ピノ・ノワール)とシュバルツリースリング (ピノ・ムニエ) を混合して造られたものを指していたのですが、ドイツでは一般的なロゼよりもさらに色の薄い、ほぼ白ワインと同じ色をしたロゼ、という意味で使われています。複数品種を使用することもできますが、単一品種で造ったワインで名乗ることも許されています。

この名称は現在、ワイン法ではなくワイン法の下部にある条例で定義されています。名乗るための条件はそれほど厳しく規定はされておらず、そうした条件の中でももっとも重要なのが、黒ブドウからマセレーションをせずに造った白ワインに典型的な色をしたワインであること、というものです。このため、ブラン・ド・ノワールという記載がエチケットにあるワインでもものによってその味、香りなどは本当に様々です。醸造的にはマセレーション自体が禁止されていますので基本的には収穫後にすぐに圧搾し、まさに白ワインのように造っていきます。しかしその一方でもろもろの事情によって意図しない抽出がわずかにかかる場合もあり、そうした場合には色を取り除くための処方が必要になる場合もあります。

ワインの色や抽出に関するこちらの記事も参考にしてみてください

⇒ 大豆は大粒、ブドウは小粒

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  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。ドイツのワイナリーで醸造責任者を歴任。栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーの醸造家兼栽培醸造コンサルタントとして活動中

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