醸造

ロゼ?ワインのいろいろ、知っていますか? 其の壱

04/07/2018

醸造的な意味から厳密なお話しをすると、ロゼはロゼであっていろいろは基本的にないのですが、それでも2つ、3つはヴァリエーションが存在していますし、さらには醸造的な条件を知らなければロゼとなんの違いもない、むしろ、飲む側のイメージとして持っているロゼに合致しているように感じるものなんてものもあります。この辺り、ドイツの厳密さというか、細かさを感じなくも無いところです。飲む側からすれば、美味しいと感じるかどうかが全てなので、この細かさに意味があるのかはちょっと疑問、という印象も無きにしもあらず、なんですが。

今回は、こんなロゼの種類に関するあれこれを2回に分けてお届けします。

Rotlingってなんだ?

ドイツにいてもなかなか耳にしないワインの一つにRotling (ロートリング)というものがあります。かれこれそれなりの期間ドイツで居住していますが、未だかつて数えるほどしかこのワインには出会っていません。特に探していないので、目についていないだけ、ということはあると思いますが。

さてこのロートリング、非常に簡単に、消費者的な視点から身も蓋もなく一言で言ってしまえばロゼです。ただし、その作り方に特徴があり、醸造的にはロゼとは呼びませんし、呼んではいけないことになっています。

ロートリングは赤と白の混合OK

以前の記事でご紹介したとおり、ドイツではロゼと銘打っていいワインは赤ワイン用ブドウから作られたものに限られます。

ロゼの作り方に関する記事はこちら

⇒ ロゼをつくるということ

これに対して、ロートリングは赤ワイン用のブドウと白ワイン用のブドウを混合して造るワインのことです。ただし、これらのブドウを混ぜていいタイミングは法律で決められています。

ドイツのワイン法では白黒のブドウを混ぜていいのは、加工前のブドウの時点か、マイシェにした時点までです。その後のモストの段階や、発酵が完了したワインの状態で混合することは認められていません。

ちなみに両者の混合比率に関する規定は特になく、赤ワイン用ブドウ95%に白ワイン用ブドウ5%を混ぜても、逆に90%の白ワイン用ブドウに10%の赤ワイン用ブドウを混ぜてもすべてロートリングです。このため、ドイツ以外の国ではちょくちょく見かけるような、赤ワインだけれども味や風味、香りに変化を持たせるためにわずかに白ワインを混合する、というようなワイン造りの手法は、ドイツではワインの段階での混合は認められませんし、ブドウもしくはマイシェの時点で行っていればエチケットにはロートリングであることを記載する義務が生じます。

場所によって名前を変えるロートリング

さらにここがドイツの不思議なところ、というか、州ごとの独立心旺盛なところというべきか、このロートリングは作られる場所や条件によってその名前を変えることがあります。主にヴュルテンベルク地方で生産されているシラーワイン(Schillerwein)、グラウブルグンダーとシュペートブルグンダーのブレンドに限定されたバーデン地方のバーディッシュ・ロートゴルト(Badisch Rotgold)、ザクセン地方で生産されているシーラー(Schieler)などがこれに当たります。

今回はロゼであってロゼでないRotlingについてお話しをしました。

次回はロゼであるのにロゼでないようなワインについてお話したいと思います。

ワイン用ブドウ栽培やワイン醸造でなにかお困りですか?

記事に掲載されているよりも具体的な造り方を知りたい方、実際にやってみたけれど上手くいかないためレクチャーを必要としている方、ワイン用ブドウの栽培やワインの醸造で何かしらのトラブルを抱えていらっしゃる方。Nagiがお手伝いさせていただきます。

お気軽にお問い合わせください。

オンラインサークル 【醸造家の視ているワインの世界を覗く部】へ参加してみませんか?
サークル内ではさらに詳しい解説記事や関連テーマを扱った記事を公開しています。
メンバー向け記事の一部はnoteでも公開中です。もっと詳しく知りたい方、暗記ではないワインの勉強をしたい方はぜひオンラインサークルへの参加やマガジンの購読をご検討ください。

▼ サークルへの参加はこちらから
https://note.com/nagiswine/circle

▼ noteの購読はこちらから
マガジン: 醸造家の視ている世界
醸造家の視ている世界 note版

  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

あなたへのおすすめ記事

1

今年もまた、収穫の季節が来ています。 ワイナリーのワインリストや植えているブドウの品種の構成にもよりますが、シーズンの最初に収穫されたブドウで造られることが多いのが、スパークリングワインとロゼワインで ...

2

棚に並んでいるワインのボトルを見ていると、実に様々な種類の栓を使ってボトルが密閉されていることがわかります。コルク、合成コルク、スクリューキャップなどなど。最近は技術の発展に併せてシリコン系のものも出 ...

3

日光臭。 青く晴れ渡った空の下にひらめく洗い立ての白いシーツ。そのシーツに包まれたときに感じる、幸せなお日様の香り。と思ってしまいそうな名前ですが、残念ながら違います。 日光臭とはLight-stru ...

-醸造
-, , , ,