栽培

ブドウ畑の冷害対策

03/19/2018

先日ブドウの芽吹きが早まることにより冷害リスクが高まる、という記事を書きましたが、この冷害への対策にはどんなものがあるかご存知でしょうか?

冷害対策のいろいろ

もっとも伝統的な対策は、"焚き火"です。

 

ブドウ畑のあちこちで火を焚くことで空気を温めるのと同時に、上昇気流を作ることで空気を撹拌することが目的です。昔は火の維持が大変でしたが、最近ではBBQで使うような、長時間にわたって強い火力を維持できる固形燃料が使われるようになっています。

2つ目の手段が、"ヘリコプター"。

ヘリコプターを畑の上空でホバリングさせることで空気を撹拌します。ただ、これは即効性はあるものの、極めてコストの高い手段です。気温が冷害を起こすまで下がるのは大体が夜中なので、騒音の問題もあって投入出来る地域はある程度限られる方法と言えます。

 

逆転の発想、水を撒く!

3つ目が、"水を撒く"ことです。

ある意味で逆転の発想です。氷点下の中で散水することで芽を含むブドウの枝を氷で覆ってしまおう、というものです。

ここで注目なのが、水を撒くことで芽を"凍らせる"のではなく、芽を氷で"覆う"ことです。こうすることで芽を氷点下の気温から守ることが出来ます。なぜか?話は単純で、水は0度で凍結します。それ以下の温度にまで下がることは一般的にはありません。つまり、氷の中は0度程度に維持されるわけです。一見してコストも低く、自然環境にも優しい方法に見えるかもしれませんが、この手法にも当然いろいろと欠点があります。世の中、そうそう簡単にはいかないものです。

 

散水はかえって芽を傷つけるのか?

ところでこの"芽のまわりに氷がある状態"に関して、この氷が集光効果を持つためにかえって芽を傷付ける可能性がある、という記事を読んだことがあります。とある有名な方が書いていたものなので一概に間違いとは言えないだろうとは思うのですが、個人的には疑問です。

 

理由は2つ。一つはそんな話はその記事以外のどこでも聞いたことがないこと。そしてもう一つは、物理的な"焦点距離"の存在です。

みなさん誰でもが、人生の数々の瞬間の何処かで虫眼鏡を使って太陽光を集めてものを燃やした経験があるのではないでしょうか?

その時のことを思い出して欲しいのですが、虫眼鏡を燃やしたいものに密着させた状態で燃やしたいものは燃えたでしょうか?そして、虫眼鏡をものに密着させた状態でその後ろにあるものを燃やすことは出来たでしょうか?

純粋な光学の話として、レンズで光を集光するにはそのレンズの曲率に適した焦点距離が必要です。ついでに言えば、屈折率も影響します。レンズ一枚で焦点距離をゼロにすることは不可能ではないかもしれませんが、非常に困難なはずです。しかも、それが屈折率1の水によって作られたものであるならなおさらです。

何が言いたいのか、と言えば、芽を密着した状態のレンズである氷で、密着した対象の芽を太陽光の収束によって傷付けるのは物理的に不可能なのじゃないか、よって、この氷で芽が傷つく心配は不要なのではないか、ということです。

事程左様にこの分野ではまだまだ未知のことがたくさんあるのです。

 

日本の茶畑は先行事例

すっかり冷害対策から話がそれました。

最近は上記の手法の他にも、日本のお茶畑で見かけるような巨大扇風機の導入、という方法も見受けられます。まだ課題も多いようですが、かなり現実的かつ実用的な手段として注目されてきている技術でもあります。冷害へどうやって対処していくのかはドイツだけではなく、世界的に頭の痛い問題なのです。

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  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

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