醸造

ワインは菜食主義者に優しくない

03/28/2018

ワインはブドウから作られているので菜食主義の方が飲んでも問題ない。そんな風に思っていませんか?

ワインにも動物由来のものが使われる可能性

これは必ずしも正しくない認識です。一部のワインではその醸造過程で動物性の製品が使われています。ただ、このことを知らずに無防備にワインを飲んでいる菜食主義の方がいるのもまた事実です。

ここで自体をややこしくしているのが、敢えて”ヴェガン向け”と謳っていなかったとしても、そのすべてのワインが動物性の製品を使っているわけではない、ということです。

基本的にワインはブドウのみから作られており、ワイン製造の過程で絶対に必要となる酵母も動物性のものではありません(酵母は微生物ですが、動物ではありません)。ですので、潰したブドウに酵母を添加して発酵させただけのワインであれば、そこには一切の動物性の製品を使用していない、菜食主義の方にも気兼ねなく飲んでもらえるワインとなります。しかしその一方で、一部のワインにはその醸造過程においてカゼインやプロテインを使っているものがあるのです。

ワイン醸造に使われる動物性製品とは

ワインの醸造工程、特に清澄の工程でタンパク質が使われることは比較的よく知られたことなのではないかと思います。これらは牛乳や卵から抽出されているものが主流であり、当然ながら動物由来となります。最近は一部のものでヴェガン需要を受け、植物性のものや魚から抽出したものが製品化されてきたりしていますが、まだまだ量は少ないのが現状です。

こういったカゼインやプロテインはワイン醸造過程において必ずしも使わなければならないものではありませんが、使うことによってワインの生産効率を高めたり、味の調整をしたりすることが可能となります。また、状況によってはワインとして仕上げるために使わざるをえないことがあるのも頭の痛いところです。

使う側の意識の問題も

また、残念ながら使う側が動物由来の成分を使うということがどのような意味を持つのかを考えずに使ってしまっている場合もあります。

このような書き方をしてしまうとヴェガンの方には嫌がられると思うのですが、正直な話、口にしたところで生命にかかわらないヴェガン需要という意味ではこの問題は大したものではないのですが、これが生命に関わる可能性のあるアレルギーの話になると話は大きく変わります。

世間ではよく知られたとおり、タンパク質というものは意外にやっかいなアレルゲンです。このため、牛乳や卵に対してアレルギーをお持ちの方が仮に知らないままこれらのものから抽出されたタンパク質を清澄剤としてしようしたワインを口にしてしまうと、それが原因となってアレルギー反応を発してしまう可能性があるのです。

ことここに至ると、使う側もその意味を知らなかった、というわけにはいかなくなってきます。ワインに限らずそうだとは思いますが、道具を使う人間はその道具の持つ意味や影響をキチンと知っておくべき、ということでしょう。

ちなみに、製造過程で添加されたこれらの成分は基本的にはワイン内の他の成分と反応・結合して沈殿するのに加え、フィルタリングの過程で除去されるためワイン内にはほぼ残りません。ただし、添加されている以上は絶対に瓶詰めされたワイン内に残らない、とは言えないものでもあります。

どのワインが自分に適していのか知る方法はあるのか?

では、どうすればワインがこのような動物由来の製品を使っているのかを知ることが出来るのでしょうか?

基本的には瓶詰めされ、市場に出てしまえば消費者がこのような情報を追うことは非常に難しいのが現状です。一部の国ではエチケットに表記を義務付けているケースもありますが、これは前述の通りプロテインなどがアレルゲンとなる場合があるため、健康被害を防止する目的で義務付けられているものであり、それが動物由来のものかどうかにはあまり注目されていないケースがあります。

現状においては個別にワイナリーに確認するか、エチケットに”VEGAN”と明記しているものを選ぶのがもっとも間違いのない選択肢、ということにならざるを得ません。

ちなみにプロテインはブドウ由来でもワインに含有されるものですので、”プロテインの含有のないワイン”、と言ってしまうとこれは飲めるワインがなくなります。ご注意くださいね。

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  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。ドイツのワイナリーで醸造責任者を歴任。栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーの醸造家兼栽培醸造コンサルタントとして活動中

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