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ワイングラスが変わるとワインの味は変わるのか? | ワインあるある

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最近、某有名MW (Master of Wine) がプロデュースしたワイングラスが日本でも発表され話題となっています。

このMWが自身では赤でも白でもワインを飲むときには長年に渡って同じグラスを使っていること、時に白ワインのほうが平凡な赤ワインよりも豊かな芳香を含むにも関わらず白ワインを飲むときには赤ワインよりも小さなグラスを使う、という「一般常識」に疑問を持っていたことなどがこのグラスをプロデュースするきっかけになったそうです。

 

グラスの大小はともかく、実際にワインの現場では使うグラスを変えると同じワインでもその表情が大きく変わるということはよく言われますし、実際に多くの方に経験的に理解されていることでもあります。

 

では実際のところ使うグラスによってワインの味は変わるのでしょうか?

もし味が変わるとしたらそれはなぜなのでしょうか?

 

今回はそんな疑問について解説をしていきます。

 

使うグラスによってワインの味は変わるのか?

結論から言うと、使うグラスが変わってもワインの本来的な味に変化はありません

 

これは仮に使用するワイングラスを変えても、そのグラスとワインがなんらかの化学的な反応をしてワインの「質」を変えることは通常、無いからです。

一方で、そのワインの味に対する「感じ方」には変化が出る可能性は十分にありますし、実際にその変化を感じている方は多くいると思います。

 

屁理屈だ、と言われる方もいるかも知れませんが、使用するワイングラスを変えることで変わるのは味の「知覚」であって「味そのもの」ではない、という点はグラスの影響を科学的な意味で話題にする場合には絶対に必要な前提となります。

 

ワインの「味」は五感を通して感じている

ワインに限らず人間は「味」を総合的に感じる時には、単に味覚だけではなく嗅覚や視覚といった五感のすべてを通して感じています。

これは例えば鼻をつまんでワインを飲んでみたり、目隠しをしてワインを飲んでみたりすると味が違って感じるという体験を通して理解していただけることと思います。

 

ワインの味に関していえば、香りや色というワインを構成する重要な因子を感じる嗅覚や視覚が味覚以外の重要な感覚器と思われがちですが、実際には触覚などもワインの味を感じる際に大きな役割を果たしています

 

グラスを変えることによって変わるもの

ワイングラスを変える = グラスの形状が変わる、という図式は非常にわかりやすい関係です。

このためワイングラスの形によってワインの味の感じ方が変わる、という理解をしている方が多いですが、実際にはここにもう一つの因子が関わっています。

 

使用するワイングラスを変えるということは、

 

グラスの形状が変わる

グラスの材質が変わる

 

という2つの変化をもたらしているのです。

 

それぞれについて詳しく見ていきます。

 

グラスの形状による影響

ワイングラスの形状がワインの味わいに対してどのような影響をもたらすのかを知るには、グラスの開発がどのような視点で行われているのかを知るのが最も簡単でわかりやすい方法です。

 

多彩な形状のワイングラスを開発しているグラスメーカーとして有名なRiedel (リーデル) 社のサイトを見てみるとこの点について詳しく書かれています。

 

Riedel社はワイン業界では知らない人はおそらくいないのではないだろうか、というほど有名なワイングラスのメーカーで、「グラスの形状は飲み物の個性が決める」というポリシーの基で各ブドウ品種に最適な形状をもったワイングラスを開発、販売しています。

そのRiedel社のサイトに書かれている情報を整理すると、同社が開発で重視している要素が以下のような点であることがわかります。

 

  • 液量
  • 流量
  • 口に含む際の流れ込む舌の上のポイント
  • 香りの出方とその維持

 

実際にグラスが変わるとグラスのボウルのサイズが変わり、ボウルのサイズが変わると入れたワインが空気と触れる表面積が変わります。表面積が変わればそれだけ芳香成分の揮発量や揮発状況が変わりますので、グラスのなかに出てくる香りに変化が出てくるのはある意味で当然のことです。

 

またボウルの形状によって鼻が完全にグラスに覆われるのかどうかも変わりますので、グラスの中にある香りを実際に鼻がどのように感じられるのかも変わります。

ボウルの縁の形状や状態が違えば口腔内に流れ込む流量が変わり、さらに流れ込むポイントも舌の先の方になるのか、奥の方になるのかが変わりますからこれも味の知覚に大きな影響を及ぼすと言えます。

 

またRiedel社のサイトでは直接書かれてはいませんが、グラスの形状が変わると自然とグラスのサイズが変わります。そうすると、グラスの重量が変わります

ボウルのサイズが変わることによる液量の変化と合わせてこのグラス自体の重量の変化も実は人間の味の知覚に影響を及ぼす要因の1つです。

 

なおグラスの製造方法としてハンドメイドかマシンメイドか、という違いがあります。

この違いは主にグラスを持ったり口につけたりした際の触感において大きな差が出ます。この差もまたヒトがそのグラスを使ってワインを飲む際に感じる味や香り、そしてイメージに対して大きな影響を与える要因となります。

 

比較しやすい形状による変化

一度整理するとグラスの「形状」が変わることによって生じる影響には以下のようなものがあります。

 

  • 液体の表面積
  • 液量
  • 流量と流れ込む位置
  • 揮発物質の揮発状況およびその維持
  • 鼻への入り方
  • 重量

 

これらの要素がもたらす味の知覚への変化は個別に切り分けて確認することは非常に難しいですが、全体としての変化を比較することは使用するワイングラスを変えるだけですので簡単です。

注意する点としては、グラスに注ぐワインの温度が変わるとグラスによる変化以外の要因を拾ってしまうため、ワインの温度は一定にしてグラスを比較する必要があるという点くらいです。

 

一方で実際の違いを比較することが非常に難しいのが、次に挙げる「材質」の違いによる変化です。

 

ワイングラスの材質

ワイングラスに限らず、グラスの材質はガラスです。

ただこのガラス、という素材には実は多くの種類があることはご存知でしょうか?

 

ワイングラスに使われているガラスの大きな分類としてよく知られているのが、以下のような分類です。

 

ガラス (ソーダガラスなど)

クリスタルガラス

 

これらの分類は基本的にガラスを作る際の各種原料の種類とその配合具合によって行われています。特にクリスタルガラスは鉛、具体的には酸化鉛を配合したガラスのことを“以前は”指していました

つまりワイングラスに使用されるガラスの種類の大別はその配合に鉛を含有しているかどうかで行われていたことになります。

 

クリスタルガラスは鉛を含む、はすでに過去のこと

クリスタルガラスはガラスの屈折率を高め、透明度を上げるための手法としてガラスの原料に酸化鉛を配合したことが開発のきっかけです。こうして作られたガラスがクリスタルのように透明度が高かったことから、「クリスタルガラス」と名付けられました。

ちなみに物質的な定義でいうとクリスタルは結晶性のものであるのに対して、ガラスは非結晶性のものですので、この名称は完全に矛盾した言葉同士をつなげた造語ということになります。

 

ガラスに酸化鉛を配合すると屈折率が高まるだけでなく、溶融温度が下がり加工性が高まるほか、配合率に応じて比重が高くなる打音が硬質化し余韻も長くなる、といった特徴を得ることが出来ます。

こうしたことから高級なワイングラスには好んでこのクリスタルガラスが使われていました。

 

しかし今ではこのような状況は大きく変わってきています。

 

鉛を抜いた無鉛クリスタルガラスが今の主流

かつてからクリスタルガラスに液体を入れると表面から鉛が溶出し健康被害につながる、という話がまことしやかに流れていました。

実際にはガラス表面から人体に有害になるような量の鉛の溶出が生じることはありません。ただやはりこのようなイメージを持つ方は相当数いたのは事実でした。

 

これに加えて、主に電子、電気系の工業製品における環境負荷の軽減を目的にRoHS指令と呼ばれる規制がEUで採択され、ここで鉛が規制物質として取り入れられたことが大きく影響しました。

RoHS指令による規制は事実上、食品用ガラス製品の製造に対する強制力はないのですが、こうした社会的な動きを背景にワイン用のグラスにおいても鉛フリー化の動きが加速しました。

 

そして現在ではRiedel社やSchott (ショット) 社、Zwiesel Kristallglas (ツヴィーゼル・クリスタルガラス) 社といったワイングラスの製造で有名な企業のぼぼ全社が、自社のクリスタルガラス製品において酸化鉛を使わない配合をもちいた、無鉛クリスタルガラスでの製造を行っています

また一部の製品ではガラスの表面にごく薄い膜を形成することでガラスの表面耐久性を高めるような手法も用いられています。

 

ガラスの材質が変わることで変わるもの

ガラスを製造する際の材質が変わる、つまり原料の配合が変わることで以下のような点が変わります。



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