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Nagiさんと、ワインについてかんがえる。#37 | ワインの多様性を語ろう - そのワイン、本当に「ワイン」ですか?

聞き手: ヒマワイン (ワインブロガー) X: https://x.com/hima_wine
サイト: ヒマだしワインのむ。

話し手: Nagi (醸造家) X: https://x.com/Gensyo
サイト: Nagi wines

Youtubeチャンネル | Nagiさんと、ワインについてかんがえる。

ワインブロガーであるヒマワイン氏と当サイトの運営者であるワイン醸造家のNagiがワインについて語り合うオンライン企画、"Nagiさんと、ワインついてかんがえる。"。

第37回のテーマはワインの多様性です。

ワインの変容:多様性の波と、その先にあるもの

昨今のワインの世界は、伝統的な枠組みを揺るがすほどの大きな変化の波に洗われています。産地や品種、ヴィンテージといった従来の基準に加え、新たな製法や概念が次々と登場し、その多様性はかつてない広がりを見せています。本稿では、その潮流を概観し、内包する課題と未来への視座を探ります。

ワインの多様化は、ワイン法に縛られない自由な発想から生まれるオレンジワインやナチュラルワインといった新しいスタイルの隆盛に象徴されます [03:03]。また、料理とのペアリング文化の浸透は、これまで「オフフレーバー」とされてきた個性を持つワインにも光を当て、その許容範囲を押し広げる一因となりました [06:08, 06:48]。クラフトマンシップを重視する「クラフト酒」の概念も、この流れを後押ししていると言えるでしょう [04:14]。

しかし、この急速な多様化は、いくつかの懸念も生んでいます。伝統的なワインの「枠組み」が曖昧になることで、品質基準そのものが揺らぎかねないという指摘があります [11:00]。 「ワインとは何か」という定義が希薄化し、生産者自身が自らの立ち位置を見失う可能性も否定できません [11:36]。さらに、この状況は「果実酒イコールワイン」といった誤解を助長し、品質の低下を招く恐れも指摘されています [13:05, 13:53]。ワイン法の存在意義が薄れ、その強制力が弱まっている現状も、この問題に拍車をかけていると言えるでしょう [27:03]。甚だしくは、伝統的な製法に則ったワインよりも、自由な発想のワインこそが「真のワイン」と見なされるような価値観の転倒すら見受けられます [29:16]。このような状況が進行すれば、伝統を愛するワイン愛好家が離れ、ワインという文化そのものが変容、あるいは衰退してしまうのではないかという危機感も表明されています [18:35]。

日本の固有品種であるマスカット・ベリーAが持つ特有の香り(フォクシーフレーバー)の扱いは、この問題を象徴する一例と言えるかもしれません。欧米ではオフフレーバーと認識されるこの香りが、近年国際品種として認められつつある一方で、国内市場では消費者の嗜好と伝統的な品質基準との間で、生産者は難しい舵取りを迫られています [39:07, 42:32]。

また、高級ワインの価格高騰についても言及がありました。その主な要因は生産コストではなく、流通段階における価格の上昇であり、ブランド価値や需給バランスといった「嗜好品」特有の価値観が反映された結果であると分析されています [45:17, 45:47]。

ワインの世界は今、大きな岐路に立たされています。多様性の広がりは新たな可能性を切り拓く一方で、守り継がれてきた伝統や品質への問いを私たちに投げかけています。この変革の時代において、「ワインとは何か」という本質を見つめ直し、その未来をどう描いていくのか。深い洞察と議論が求められていると言えるでしょう。

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  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。ドイツのワイナリーで醸造責任者を歴任。栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーの醸造家兼栽培醸造コンサルタントとして活動中

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