Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

ワイン

2022/4/11

持ち込みワインボトルの冷やし方とその温度

徐々に気温が暖かくなってきて、春を感じる過ごしやすい季節になってきました。花が開いて世界が明るくなり出すと、お酒を飲む機会も増えてくるもの。 お花見、BBQ、ホームパーティーやワイン会。手持ちのワインを持ち寄ってみんなで楽しく飲みたい、そんな気持ちも盛り上がってきます。 そうした楽しいイベントが仕事の後だったり、日中から外出する予定のある日の夕方以降だったりすると気になるのが、ワインの温度。持ち出すときにはきちんと冷えていたワインも、移動や業務時間中に適切に冷やすことができず温まってしまうことはよくありま ...

ワイン 品質管理

2022/5/15

ワインボトルの保管方法 | 縦置きと横置き、どちらが正解なのか

ワインを保管するときにおそらく誰もが一度は疑問に思うこと。それがボトルの置き方でしょう。 ワインのボトルは横置きにしなくてはいけないのか、縦置きにしてはいけないのか。 少し調べてみると、コルクで密閉しているボトルに関してはコルクの乾燥を避けるために横置きにするべき、という説明を多く見かけます。一方でスクリューキャップのものやプラスチック系の樹脂を使った合成コルクを使用しているボトルでは乾燥による劣化が生じないので横置きの必要はないとされています。 こうした、ある意味における世の中の常識とも思われている保管 ...

品質管理

2022/4/11

ワインの量と品質の関係 | 液面の高さは何を語るのか

ワイン、なかでも古酒と呼ばれる、造られてから十数年、長ければ数十年を経たワインではその品質管理の基準の1つに「液面の高さ」が取り入れられていることがあります。 インポーターさんや業者さんの中には独自に液面の高さをチェックして、規定の範囲よりも液面が低い場合には出荷しない、と決めていらっしゃる場合もあるようです。ワインをお好きな方々が集まるワイン会でももしかしたら「このボトルは液面が下がっている」なんて話を耳にするかもしれません。 この「液面が低い」話の特徴は、このセリフが出た場合は十中八九、そのボトルの品 ...

栽培

2022/4/11

植物の未来の姿を知る実験 | FACE

FACE、と呼ばれる実験をご存知でしょうか。 おそらく多くの方は知らないと思います。ですが、それも当然です。この実験、植物の成長や環境から受ける影響を調べる人たちからするともう10年以上にわたって活用されてきたものですが、一般の人が目にしたり耳にしたりすることはまずないものだからです。 FACEとはFree Air Carbon dioxide Enrichmentの略で、大気中の二酸化炭素濃度を人為的に引き上げ、その環境下で植物がどのように反応をするのかを観察する大型実証実験を指しています。 なぜこの実 ...

ワイン 不快臭

2022/4/11

熟成香か欠陥臭か アセトアルデヒドを知る | 醸造と熟成がもたらす香りの要素

アセトアルデヒド、という言葉を聞いたことはあるでしょうか。エタナール (ethanal) とも呼ばれる物質です。 アルコール (エタノール: ethanol) の最初の代謝物で、お酒を飲むと体内でアルコールが分解されていく過程で生成されてもいます。 二日酔いを避けるために。アルコールの分解を知ろう! https://nagiswine.com/alcohol-01/ 体内でエタノールがアセトアルデヒドに分解される際にはアルコール脱水素酵素 (ADH) と呼ばれる酵素が働きます。この一方で、アセトアルデヒド ...

ワイン 栽培

2022/4/11

ワイン用ブドウの栽培 | クローンを知る

ワインの勉強をしていると「ブドウのクローン」という言葉に遭遇することがあります。 クローン。 最近ではワイン以外の分野で耳にする機会も増えてきた単語ですが、まだまだ一般に広く認識されているようなものではありません。しかもワインの分野では醸造面よりも栽培面での意味が大きく、テイスティングの場で注目されることはあまりありません。 クローンがなんなのか、何となくはわかっていても理解しきれていない場合も多いのではないかと思います。一方でこだわる人はこだわり抜くのがこのクローンでもあります。 この記事ではブドウのク ...

醸造

2022/5/15

除梗がワインにもたらす影響

1年かけて育て上げ、収穫したブドウが醸造所に届いたときに最初に醸造家が頭を悩ますのが、そのブドウをどうやってワインに仕上げていくのか、です。 この「どうやって」にはいろいろな意味が含まれています。 そんな中の1つが、「どうやって搾るか」です。 実はこの問いかけにもさらに多くの内容が含まれているのですが、今回考えるのはそうした中でも最初の方に位置する質問である、「除梗をするのか、しないのか」です。 除梗の意味と目的 除梗とは読んで字のごとく、梗を取り除くことをいいます。ブドウはたくさんの粒が緑色をした茎のよ ...

不快臭 品質管理

2022/4/11

マロラクティック発酵とワインの欠陥臭 | MLFの両面性

ワインの酸を減らしたり、独特な香りやニュアンスを持たせるために積極的に活用されるマロラクティック発酵 (Malolactic fermentation: MLF)。ワイン造りにおける微生物を利用した醸造手法です。 化学的な手段に頼らない、より自然的な手法である点も好まれる理由の1つです。 ワインと酸と乳酸菌 | MLFを知る https://nagiswine.com/mlf-01/ ワインの味と酸の関係 | ワインを丸くする2つの方法 https://nagiswine.com/adic-managem ...

醸造

2022/4/11

ワインと酸と乳酸菌 | MLFを知る

ワインにとって酸は欠かせない要素です。 ただ、酸は多すぎても少なすぎてもダメ。全体とのバランスがとても大事です。 ワインには複数の酸が含まれていますが、ワイン造りの視点から見て特に重要なのは酒石酸とリンゴ酸です。この2つの酸はワインに含まれている酸の中でも特に量が多く、ワインの持つ酸味にも強く影響を与えています。 ワインと酸 | ワインの有機酸を考える3つの視点 https://nagiswine.com/acid-01/ ワイン造りの過程で味を調整するために酸味のバランスを取ろうとするとき、多くの場合は ...

醸造

2022/4/11

ワインの味と酸の関係 | ワインを丸くする2つの方法

ワインにとって欠かすことのできない、とても大事な要素の1つが酸です。 国や地域、ブドウの品種を問わず、美味しいワインには必ずと言っていいほどそれなりの量の酸が含まれています。逆に酸がたりないワインではそれがどんなに有名な産地のワインであったとしても高い評価を得ることは難しくなります。ワインの味の中心は糖分と酸とアルコールのバランスで形作られているといえます。 またワイン含まれる酸の量はワインの熟成に対しても少なくない影響を与えます。このため、いいワインであればあるほどそこに含まれている酸の量が重要になるの ...