ワイン

グリューワインというワインの飲み方

12/18/2018

Foto: bitt24/Shutterstock

ドイツの冬といえば、グリューワイン(Glühwein)がとても有名です。

特にドイツ各地で開かれるクリスマスマーケットでは無くてはならない定番のものの1つであり、寒い中クリスマスマーケットを訪れたドイツ人たちはこのグリューワインを片手に友人たちと語らいながら時間を過ごしています。最近では日本でもビンに入れたものを売っているところが増えてきているようですし、日本各地で開かれるドイツ式クリスマスマーケットを合わせて少しずつ馴染みが増えてきているのではないでしょうか?

グリューワインとはなんなのか?

グリューワインは名前に「ワイン」とついているとおり、ワインを使ったアルコール飲料の一つです。ある意味では、ワインの飲み方の1つ、と言ってもいいかもしれません。

このグリューワインを一言で説明するなら、「味付けをしたホットワイン」です (glüh : グリュー=灼熱した、wein=ワインという意味です)。

味付けの方法には決まったレシピがあるわけではなく、作る人によってそれぞれ異なったレシピとなっているため、クリスマスマーケットではいくつもあるグリューワインを売るスタンドそれぞれで異なった味を楽しむことが出来ます。味の傾向としては一般的にはいくつかの香辛料に砂糖もしくはハチミツを加えることで甘めに味を整えたものが多くなっていますが、ワイナリーが直接出店しているスタンドなどではこのような味付けは最小限にとどめ、まさに文字通りのホットワイン、というようなワインの味そのものを全面に出したグリューワインを提供しているようなケースもあります。

グリューワインの歴史とレシピ

中世ではそもそも、ワインに香辛料の類を加えて飲むことが普通に行われていた、と言われています。このことから、寒い冬場に普段から飲んでいるワインを温めて飲む習慣が生まれたであろうことは想像に難くありません。今でこそワインに香辛料などを加えて飲むことはなにか特別なことのように感じますが、歴史的にはそれ自体、何の違和感もなく行われていたことだったのです。

ドイツにおける最も古いとされているグリューワインのレシピは1843年12月にアウグスト・ジョセフ・ルードヴィヒ フォン ヴァッカーバース(August Josef Ludwig von Wackerbarth)という人に書かれたものだと言われており、その内容は以下のようなものだったそうです。

1リットルのワインに対し

  • シナモン 64グラム
  • 生姜 32グラム
  • アニス 16グラム
  • ザクロ 16グラム
  • ニクズク (ナツメグ) 16グラム
  • カルダモン 16グラム
  • サフラン 60ミリグラム
  • これに砂糖もしくはハチミツを加えて甘くする

最近のグリューワインに使われる香辛料

なお最近は多少変わってきていて、シナモン、スターアニス、クローブ、レモンピールそして砂糖もしくはハチミツを加える、というのが一般的なレシピになっているようです。

またこれ以外にもいくつか有名なレシピがあるようですが、なかでも特によく使われているものは以下のようなものです。

  • バニラビーンズ
  • 生姜
  • メースもしくはナツメグ
  • コリアンダーシード
  • アニス
  • 赤コショウ
  • ヒハツ
  • オールスパイス
  • ジュニパーベリー
  • 月桂樹の葉
  • ウイキョウ

グリューワインの作り方

グリューワインの作り方は極めて単純です。

ベースとなる赤、もしくは白のワインに対して、上記のような各種香辛料を入れ、加熱します。その後に砂糖もしくはハチミツを入れて甘くする、というのが基本的な作り方になります。香辛料を入れるのは主に赤のグリューワインに対してで、入れる場合もワイン1に対して0.5ほど水を入れ、予めオレンジを切ったものを入れるなどしてから加熱します。赤のグリューワインの場合は、加熱後にハチミツや砂糖で甘さを加えます。

一方で、白のグリューワインの場合は香辛料はほぼ入れず、水の代わりに白ブドウジュースを入れ(例: ワイン350mlに対してジュース150ml程)、アカシアのハチミツ、シナモンスティック、オレンジピールなどを入れてから加熱します。白の場合には赤とは違って加熱前にハチミツを入れていますので、加熱後には砂糖やハチミツを加える必要はありません。

グリューワインを作るときの注意点

なお、グリューワインを温める際の一番の注意点は「沸騰させない」こと。さらに厳密に言えば、78度以上に加熱しないこと、です。

これはワインに含まれる主要アルコールであるエタノールの沸点が78度であるため、これ以上の温度に加熱してしまうとアルコールが揮発してしまうためです。また、せっかく入れた香辛料の香りもあまりに高い温度で熱してしまうと飛んだり、変化してしまったりします。こういったことを避けるためにも、グリューワインの加熱温度はあまり高くなりすぎないようにすることが大事です。

この加熱温度に関してはビンに詰められた状態のグリューワインを買ってきて温める場合にも同様のことのが言えますので、ご自宅で購入してきたグリューワインを楽しまれる際には注意が必要となります。

またグリューワインを作る際にはステンレス製の容器を使うことをオススメします。アルミニウムや銅、錫もしくは真鍮などを素材を使用している鍋を使用してしまうとダメージを受けてしまう場合があります。これ以外にも、赤ワインを使用したグリューワインは一晩寝かせることでより香辛料などの味わいを強くすることが出来ますが、蓋などで密閉していないままであまり長い時間温度の高い状態を保ってしまうと酸化し、劣化の原因となりますので注意してください。

グリューワインに適したワイン

グリューワインを作ろうとした場合に、どんなワインを使えばいいのか、というのは案外悩むポイントかも知れません。しかし、この質問に対する答えは簡単で、「赤か白かも含めてどんなワインでもいい」というのが実情です。

しつこいようですがグリューワインには様々な香辛料が加えられ、さらには砂糖やハチミツが入れられています。言ってみればもとのワインの味なんてほとんど関係ないのです。買ってみたけれど好みに合わずに残してしまっていたワインなどをグリューワインとして再利用するのもいいかもしれません。ただ敢えて言うならば、あとから砂糖やハチミツなどで甘くするので、ワイン自体は辛口でアルコール度数が高いもののほうがグリューワインとしては美味しく飲むことができると思います。

一方で、使うワインのもとになったブドウ品種の違いや醸造方法の違いでグリューワインにしたあとでもそれぞれ変化が出るのも事実です。クリスマスマーケットのグリューワインのスタンドでも、場所によっては複数のことなるブドウ品種から作ったものを扱っている場所などもありますので、飲み比べてみるのも面白いものです。

今回のまとめ

今回はいつもとは少し毛色を変えて、ドイツの冬の代名詞、グリューワインの作り方を中心に焦点を当ててみました。一口にグリューワイン、もしくはホットワインといっても、いろいろなレシピがあることがおわかりいただけたかと思います。逆に言えば、グリューワインはそれだけ自由度の高い飲み物でもある、ということです。寒い冬に体を温めてくれる手軽な飲み物として、ぜひご自身のレシピを組み上げてみてください。

ちなみに、筆者のお気に入れは酸味を強めに残したリースリングをベースに、香辛料はほぼ入れずにハチミツで甘みをつけたシンプルなものだったりします。簡単に作れるレシピですので、機会があったらぜひ試してみてください。

それでも面倒、という方には温めるだけのものもあります。こちらなどの商品をお使いになる場合にはカップに注いでレンジで温めるだけもいいですが、やはりオレンジピールやレモンピール、シナモンなどを加えても美味しいですのでよかったらどうぞ。

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  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。ドイツのワイナリーで醸造責任者を歴任。栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーの醸造家兼栽培醸造コンサルタントとして活動中

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