発酵 醸造

発酵途中の温度管理 - 液温を下げる

更新日:

ワインの発酵とその間の温度管理はきっても切り離せない、とても重要な関係にあります。

ブドウを搾ったジュースがワインに変化していく発酵過程において、その間の液温が低すぎれば酵母が活動できずに思ったような発酵を得ることは出来ませんし、逆に液温が高すぎると今後は酵母の発酵が活発になりすぎ、ワインの香りを構成する上でとても重要な芳香系の成分が揮発してしまったりします。特に酵母の活動が強くなりすぎ、発酵の状態が暴走してしまうことはワインの醸造面から見て絶対に避けたいため、発酵中の温度は比較的低めに留めることが最近では多くなっています。

この傾向は香りがより繊細な白ワイン系でより顕著で、白ワインの発酵時の管理温度は16~18度程度、赤ワインでは20~25度程度とするワイナリーが多いのではないでしょうか?

ちなみに赤ワインの発酵温度が白ワインの発酵温度よりも高いのは、赤ワインが香りを気にしていないというわけではなく、赤ワインに適した酵母の適正活動温度が白ワイン用の酵母よりも高めの領域にあることに加え、赤ワインの場合は果皮などからの抽出をかける必要があるためです。また、一般的には赤ワイン用のブドウの方が収穫時の果汁糖度は白ワインの場合よりも高くなっている場合が多く、この高い糖度を残すこと無く完全に発酵させるためには白ワインの場合よりも高い酵母の活動量が必要になる、という側面もあります。

今回は、このワインの発酵時、もしくはその前後で行われる温度管理に関して、特に液温を低くする場合に焦点を合わせて詳しくみていきたいと思います。

ジュースの温度を冷やす時

一般的なワインの発酵を行う場合においては、この”ジュースの温度を適度に冷やす”というケースが最も多くなります。

まず、白ワインの製造過程においては収穫してきたブドウをプレスに入れて搾って得られたジュースを清澄するのにまず冷やします。これは、ジュースの液温を下げたほうがジュース内の不純物を沈殿させるのに効率が良くなるためです。これは水に塩や砂糖を溶かすことを想像してもらえれば理解しやすいかと思います。水の温度が高いと塩や砂糖はより多くの量溶け込みますが、温度が下がると溶けた塩や砂糖は析出してきて容器のそこに沈殿します。また、ゼラチンなども温度が高いと溶けますが、温度が下がると凝固します。

ジュースの清澄もこれと同じで、ブドウの果汁に含まれる余分な成分や混ざりものを析出させたり凝固させたりすることで沈殿させたいので、液温を下げる、というわけです。

 

発酵中も液温を下げる

すでに上にも書きましたが、白ワインの適正発酵温度は20度を下回っているために発酵中も液温を下げることがよくあります。

発酵という行為はまさに酵母の「活動」のことです。そしてこの活動は、糖分というカロリーを消費して行われています。酵母に限らず人間でもそうですが、一般にカロリーを消費する行為には発熱が伴います。発酵というこの酵母のカロリー消費活動もこの例に漏れることはなく、発熱が伴っており、発酵中のジュースの液温は例外なく数度上がります。この上がる幅と上がり方はまさに発酵の状態次第で変わるのですが、ピーク時でだいたい5~10度程度は上がるのが普通です。

加えてブドウの収穫を行う時期は晩夏から初秋にかけてなので、10年前ならいざしらず、最近ではまだまだ外気温が高い時期でもあります。このため収穫されたブドウを搾ったその時点でジュースの液温がそれなりに高いことはよくあることです。ワイナリーではブドウの収穫を午前中や早朝に行うことでブドウが日光によって温められることを避ける場合も多いですが、それでもやはり液温の上昇はなかなか避けられないことでもあります。

もともとの液温が高い状態に発酵による液温の上昇が加わってしまうと、液温は容易に25度を超え、発酵の暴走の危険性も飛躍的に高まってきてしまいます。これを避けるため、発酵中もジュースの液温を冷やす必要が出てくるのです。

ただし、清澄の時も発酵の時も液温を冷やしすぎることは逆に望ましくありませんので、いずれの場合にもジュースの”冷やしすぎ”には注意が必要です。

 

液温をもっと下げる時

発酵中には液温を下げすぎないことも重要ですが、その一方で液温を氷点下まで下げる必要がある場合もあります。

それは、「発酵を止めたい時」です。

これは甘口のワインを造る際によく使う手法です。酵母の活動量は温度に依存しますので、液温を極端に下げることで酵母の活動量を可能な限り引き下げることで発酵を止めるのです。ただこれだけでは液温が再び上がった時に酵母が再活性してしまいますので、一般的には温度を下げて酵母の活動が下がった状態で二酸化硫黄を添加して酵母を無活性化します。さらには液温を保ったままフィルターをかけることで酵母を物理的にジュース(すでに発酵しているのでワインになっていますが)から分離してしまうことで再発酵のリスクを可能な限り抑えることもあります。

なお、二酸化硫黄の添加によって液温に関係なく酵母を無活性化させることは可能です。一方で液温を下げることを通して酵母の活動量を抑えることには、より少ない量の二酸化硫黄の添加で酵母を無活性化できる、という明確なメリットがあります。酵母の活動量が高い状態からいきなり無活性の状態まで活動量を急減させることは非常に大変です。また、一度は発酵が止まったと思っても翌日にはまた発酵が始まってしまっていた、なんてこともあるため、より確実に残糖を残した状態で発酵を止めたいのであれば、液温を下げることは不可欠となります。

この傾向は、残す残糖量が多ければ多いほど強くなります。

 

今回のまとめ

液温を下げるケースは主に白ワインの醸造を行う場合により多く発生します。赤ワインであっても、ロゼやWeißherbst (ヴァイスヘルプスト) 、もしくはBlanc de Noir (ブラン・ド・ノワール) など抽出を軽めにするワインでも同様です。

ポイントとしては、液温を下げる中でも清澄の段階ではより低めに、一方で発酵の段階では多少高めに液温を設定する、ということです。これに対して、残糖を残す場合には凍らない程度に容赦なく温度を下げます。一つの目安としては清澄の時点では5度以下、発酵時は18度前後、発酵を止めるには0度以下、となります。なお発酵時は発酵による液温の上昇を含めてこの温度なので、実際にはこれよりも低い温度で管理する必要があることに注意してください。

参考

発酵や酵母の活動についてもっと知りたい方はこちらの過去の記事も参考にしてください




あなたへのおすすめ記事

1

ワインの味はブドウの味であり、その味は畑で作れらます。だからこそワインメーカーは畑での仕事に力を入れるのです。   しかし、ワインの味はケラーで作られるものでもある、ということはご存知でしょ ...

2

まだ本格的な収穫はごく一部でその大半がSekt用のベースワイン向け収穫などが中心となっているものの、勤めているワイナリーでも日々、収穫が行われています。   今までは立場的にも収穫の現場にい ...

3

ワインに関する記事の中で“香りの種類”と聞いたら、大概の人が想像するのはまずワインから漂う香りの種類のことだと思います。このワインからは青いりんごの香りがする、とか、干し草のような香り、とかいうあれで ...

-発酵, 醸造
-, , , , , , ,

Copyright© Nagi's Wineworld , 2019 All Rights Reserved.