発酵

発酵について語ろう

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今までに発酵を実質的に引き起こしている存在である酵母などについてはお話をしてきましたが、発酵それ自体については説明をしたことがなかったので、この機会に改めて発酵というものについて書いてみたいと思います。

発酵のメカニズム

上記の関連記事でも書いたとおり、発酵とは糖からアルコールと二酸化炭素を作り出す反応であり、その反応は酵母によって引き起こされます。ワイン造りにおいて酵母が必須、と言われる所以はここにあります。

 

どれだけ品質のいいブドウを造ろうと、醸造過程において酵母が介在しなければワインは絶対に造ることが出来ません。

 

ブドウ中、もしくはブドウを絞ったジュースの中に存在する糖分は、酵母によって取り込まれ、酵母の代謝活動を通してアルコールと二酸化炭素、それに微量の各種副生成物へと変換されます。ちなみに、この際に得られるアルコールの取得率は理論値で51%です。これは、発酵の対象となっている糖分のおよそ半分強がアルコールになり、残りの半分弱が二酸化炭素となることを表しています。

 

具体例でみてみると、仮にジュース内に1リットルあたり100gの発酵可能な糖分があったとすると、発酵後はアルコールが51g/l、二酸化炭素が49g/l 発生することになります。アルコール度数にして6%強です。なおこの数値は理論値ですので、実際は周辺環境などによって多少変化します。

 

また、この51%という数字は発酵対象とする糖分のアルコール変換度合いを意味していますので、仮に上記のジュースにおいて残糖を20g/l残す前提で発酵を行う場合には、そもそもの発酵対象の糖分量が80g/lとなり、生成されるアルコールの量は最大で約41g/l程度となります。

 

残糖管理の方法

上記の例で、残糖を20g/l残す前提で、と書きましたが、実際の作業的には予め20g/lに当たる量の糖分を別のところに除けておいて、発酵後に足すようなことはできません(技術的には可能ですが、これはワインに対する”補糖”の扱いになるため別の問題が生じます)。このため、実際の運用としては発酵過程において適宜その状態をモニターし、残糖が20g/lのタイミングになった時点で発酵を止める、という作業が必要になります。

この、どのタイミングで発酵を止めるのか、という判断が、ドイツワインで言えばカビネットやシュペートレーゼといった糖度の高いブドウを原料として使っていても甘口のワインになったり辛口のワインになっていたりしている理由です。発酵を早めに止めれば甘口に、遅く止めたり、自然に止まるまで止めなかったりすれば基本的に辛口になります。

 

 

実際に発酵を止める方法はいくつかあり、醸造家は自身の目的や方向性に合わせてそれぞれの手法を選択したり組み合わせたりすることとなります。また、発酵にはいくつかの段階があり、それぞれの段階において発酵の止めやすさが異なりますので、自身が止めたいタイミングに止めやすい発酵の段階が来るように調整することもまた、発酵の重要な管理項目となります。

 

発酵の勢いを管理する

発酵には勢いというものがあり、それは発酵の条件によって変化します。勢い、とは単純に速度、と言い換えてしまって問題ありません。

 

発酵の勢いがある、ということは発酵の進捗が速い、つまり、短時間で糖が食い尽くされ、アルコールや二酸化炭素に変換されている状態を指します。人間でもカロリーを消費するとそうであるように、酵母も糖分を摂取して代謝を行うと、そこに熱が発生します。このことから、発酵の勢いが強いことはそのまま、発酵中の液温が高くなっている状態であることも同時に示しています。

 

この発酵によって発生する熱は、それ自体が発酵の勢いに影響を及ぼします。

 

液温が高くなると酵母の活動が活発化し、それを受けて発酵の勢いが上がっていきます。発酵の勢いが上がると、そこでまた熱が発生し、その熱の影響で発酵の勢いが、、、というサイクルが生じるのですが、このサイクルが行き過ぎると発酵が暴走状態に入り、コントロールすることが出来なくなってしまいます。一度醸造家のコントロールから離れた発酵は途中で止めることが難しいですし、そもそも進行が速すぎて狙ったところで残糖を調整するようなことはほぼできなくなります。

一方で、発酵中の液温を管理することで発酵の勢いを管理することが可能となりますので、醸造家はこの液温管理をもって発酵管理をしていることがほとんどです。

 

発酵の勢いを管理することと発酵を止めることは別のこと

なお、液温管理でもって発酵の勢いをコントロールすることは可能ですが、これだけで完全に発酵を止めることは困難です。この場合の”完全に”とは、恒久的に、という意味です。

 

すでに書いてきたように、発酵の反応は糖分を消費する代謝活動です。このため、発酵が続く限りはワインやジュースの中の糖分は減り続けますし、これに反比例してアルコール度数は上がり続けます。つまり、ワインの味や状態が変わり続けます。これは品質管理上、重要な問題です。

このため、醸造家はどうやって発酵を止めるのか、その技術をしっかりと身に着けておく必要があるのです。


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