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嫌気環境下における醸し発酵とは

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前回の記事で嫌気環境下における醸し手法の一つとしてMacération carbonique (マセラシオン カルボニック / カーボニックマセレーション)というものを紹介しました。

カーボニックマセレーションという醸造手法

何かとフランス語の借用が多いため、分かりにくく馴染みにくいのがワインの醸造関連用語。 ですが、そんななかにあって“カーボニックマセレーション”という名前を何となく耳にしたことがある人は意外と多いのでは ...

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ただこの手法は若干、特殊なものに分類されており一般的な嫌気環境下における醸しの方法とは言いにくい部分があります。

その一方で、より一般的な嫌気環境下における醸し工程中であっても多かれ少なかれMacération carboniqueが並行して行われている、もしくは意図したわけではなくとも生じている、なんてこともあります。つまり、Macération carboniqueをより詳しく語るためにはもっと一般的な意味での嫌気環境下における醸しの手法というものを理解しておく必要があります。

 

そうすることでどのくらいの割合で両者を組み合わせていけば自分が造りたいスタイルのワインに近づいていけるのか、もしくは、どのような醸しの手段をとると狙ってなくても両者の組み合わせが生じ、結果として出来上がるワインのスタイルに影響が出るのか、ということに対して理解や推測がしやすくなります。

 

今回はこの、“より一般的な意味での”嫌気環境下における醸し (醸し発酵) について解説します。

 

嫌気的環境とはなんなのか

まずは今回の記事の中心となる知識である、「嫌気的環境」というものについてのおさらいです。

 

醸造関連用語としての「嫌気的環境」とは、酸素の少ない、もしくは全く存在しない状態のことを指します。Macération carboniqueの時には雰囲気中における許容酸素濃度は1%以下と具体的な数値をあげましたが、この「嫌気的環境」という概念においては具体的な酸素濃度は規定されていません。

特にここは日本語の素晴らしいところで、嫌気“的”という言葉の通りに雰囲気中全体として酸素以外の窒素や二酸化炭素ガスの量が通常の大気中における酸素濃度に対して支配的であればそれは嫌気的環境である、ということが出来ます。

 

ただこんな面倒くさいことを考えるのもなんなので、簡単に酸素がほとんどない状態、と理解していただければ十分です。

そして発酵が絡んでいる状態における嫌気的環境とはほぼ100%、二酸化炭素ガスによって形成される、ということを前提としておさえておいてください。

 

嫌気環境はどうやって作られるのか

ではこの酸素のほとんどない、嫌気環境はどうやって作られるのでしょうか?

 

Macération carboniqueの場合は酵母を介した発酵が原則としては行われていないため二酸化炭素ガスの供給源が存在せず、嫌気環境を形成するためには外部からガスを容器中に充填する必要がありました。

一方で今回の状態は「醸し発酵」としているようにブドウの果実は多かれ少なかれ破砕されており、マセレーション(醸し)と発酵が並行して進行しています。このため雰囲気中に必要となる二酸化炭素ガスは発酵によって生じるものを流用することが可能です。

発酵による炭酸ガスが十分に供給されるまでの期間が長くなりそうな場合など、容器を最初から嫌気状態におきたい場合にはもちろん外部からガスを充填してやることも可能です。

 

必要なのは密閉型の容器

ある意味で当然のことでもありますが、嫌気環境を形成するためには発生した炭酸ガスの拡散と、周囲の大気からの酸素の流入を防止するために密閉型の容器を使用する必要があります。

一般的な赤ワインの醸し発酵では開放型の容器が用いられることが多いのですが、これに対して密閉型の容器を用いることで得られるメリットとデメリットは以下のようなものがあります。

 

メリット

  • 酸素の流入を防止できる
  • 二酸化炭素ガスの拡散がない
  • 外部からの昆虫などのコンタミネーションがなく衛生的な環境を維持しやすい
  • 発酵後の澱の処理がしやすい
  • 発酵後にそのまま貯蔵タンクとして利用できる

 

デメリット

  • 開放型と比較してコストがかかる
  • ワインの状態管理が目視ではできない
  • 構造的な問題で機械的な可動部分などの清掃がしにくい

 

圧力をどうするのか

嫌気的環境における醸し発酵を考える際に重要になる点が、圧力の扱いです。



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