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自然な?ワインの造り方

投稿日:11/08/2020 更新日:

先だってこんなTwitter上にこんなPostをしました。

 

 

この記事を読んでくださっている皆さんは、この2枚の写真の違いがお分かりになるでしょうか?

今日はこの写真とそこに関わる「自然な?」ワインの造り方についてです。なお、この記事ではあくまでも自然「な?」ワインの造り方にフォーカスしていますので、ナチュラルワインや自然派ワインと呼ばれるカテゴリーに属しているワインについて言及しているわけではないことにご注意ください。この「?」が重要です。

なおこのあたりの区分は以前別の記事で書いた以下のような基準に基づいて使い分けています。

 

Bio: Euの認証制度に基づいて規定されたルールに準拠したもの

ナチュラルワイン / ナチュラル: ワイン雑誌によって規定された定義

自然派ワイン / 自然派: 手を出さないことを前提とする今流行の定義

 

このあたりの区別が今一つよくわからないな、という場合にはこちらの記事など参考にしてみてください。

ビオとナチュラル | 醸造面から見たその違い

筆者がTwitterで時々、思い出したようにPostしてはそのたびに(筆者のアカウントとしては)軽くバズったような状態になるキラーワードがあります。それが「ナチュラルワイン」です。   最近 ...

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嫌われるSO₂とフィルタリング

突然ですが、皆さんはナチュラルワイン業界、自然派ワイン業界における2大嫌われ者、ご存知でしょうか?

酸化防止剤、亜硫酸、SO₂といろいろな呼び方をされる二酸化硫黄とフィルタリング、つまり「ろ過」です。このどちらかが行われているワインは多くの場合において自然ではない、ナチュラルではない、といっていわれのない非難を受けます。

フィルタリングはともかく二酸化硫黄の添加については必ずしもこの非難の対象に当たらないことは上記の記事の通りなのですが、ろ過は完全にNG扱いされています。

 

なぜろ過をしてはだめなのか、自然ではないのか。この問いについてはとても興味深いですが、醸造的な意味は持たない問いでもあります。

そこで今回はフィルタリングがダメなことを言及するのではなく、どうしたら醸造的な手法でフィルタリングを回避していくことができるのかについて見ていきます。

 

フィルタリングをする理由

ワインの醸造、特に白ワインの醸造ではフィルタリングは重要な意味を持ちます。なぜでしょうか?

一番重要な答えは、「ワインは濁っていてはいけないから」です。

濁ったワインは何が悪いのか

  「濁りワイン」 日本では意外に市民権を得ている印象の強いワインのカテゴリーですが、これは日本独特な動きと言えます。 注意 「濁りワイン」という名称はもしかしたら特定の造り手に帰属する商標 ...

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こちらの記事にも書いていますが、フィルタリング = 濁りの解消を必ずしも意味しません。しかし一方で、ワインのろ過が最も手軽に、かつ確実に濁りを取り除く手法であることは間違いがありません。

またこれ以外にもワインボトルの中に見られる沈殿物もフィルターを通す強い動機付けの一つです。

 

ワインに対してある程度以上の関心をお持ちの方にとっては笑い話でしかないのですが、中にはボトルのそこに析出した酒石をみて「ボトルの中にガラス片が入っている」として大きなクレームになった事例もあります。こうした不幸な誤解が生むクレームをもとに製品の回収対応などを行うことはワイナリー側にとっても避けたい事態です。

またこのようなケースとは違って、ワインの中になんからの異物が混入してしまっていた場合などは笑い話などにはなりようもない大問題となります。

ですので、転ばぬ先の杖、とばかりに不安要素を取り除こうとする予防行為がフィルタリングでもあるのです。

 

なお赤ワインよりも白ワインでよりフィルタリングを重要と考える理由は、ワインの濁りやボトルのそこへの沈殿物が白ワインの方がより目につきやすいこと、赤ワインでは比較的「ワインには澱が出る」という認識が一般化していることなどが上げられます。

 

フィルタリングを避けるには

フィルタリングを行う目的は以下の2つです。

  1. ワイン中の浮遊物を取り除く
  2. 将来的にワインを変化する/させる可能性のあるものを取り除く

 

場合によってはフィルタリングの目的 = 安定化 という書き方をしている場合もありますが、これはまさに上記の2つ目の項目のことを指しています。経時によってワインの状態が変わることを「不安定」といいますので、例えば時間の経過によって沈殿物が生じることは不安定であり、これが出ないようにすることを「安定化」と言っているのです。

フィルターをかける目的がワインの安定化で、安定化をしていないワインが多くの場合で「ワイン」として認められていないのであればただ単純にフィルタリングをワインの製造工程から排除すればいい、という結論にはなりません。フィルタリングを工程上からなくすのであれば、何らかの方法でフィルタリングをすることで得られる結果と同等の結果を獲得しなければなりません。

そこでフィルターの目的が上記の2つだとすると、そこからフィルターの実施を回避する具体的な方法が見えてきます。キーワードは「透明にする」と「変化させない」です。

 

次のページ以降では以下の内容に沿って説明を続けます。

  • フィルタリングを避けるには
  • ワインを透明にする冷却処置
  • 引き算の対応、足し算の対応
  • 沈殿のメカニズムを考える
  • 高温環境下で加速する沈殿作用
  • 液体の粘性を上げる
  • 今回のまとめ | ノンフィルターは自然な造りを意味するか?



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