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オレンジワインは自然派ワイン? | ワインあるある

05/18/2019

オレンジワイン、という名前を聞いたことがある人は今やもう多いのではないでしょうか?

このオレンジワインという単語が聞かれはじめてそれなりの時間が経ちました。そういった流れの中で同じようによく聞くのが、オレンジワインは自然派ワイン、というものです。

実際にこの記事を読んでくださっている方の中にもオレンジワインは自然派ワインの一種だと思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

これは実は大いなる誤解です。

オレンジワインは厳密に言えば自然派ワインではありません

ただここがややこしいところで、ものによっては確かに自然派ワインという区分に分類されるオレンジワインも存在しています。

これはどういうことなのでしょうか?

この記事ではこのオレンジワインは自然派ワインである、というワインあるあるをいくつかの側面からそれぞれの根拠を示しつつ解説します。

この記事を読んでいただければ、オレンジワインとはどのようなものなのか、どうして自然派ワインだという誤解が生まれ、定着してしまったのかを理解していただけるはずです。

オレンジワインの定義

オレンジワインとはそもそもどのようなワインなのでしょうか?

実はこのオレンジワインというものには自然派ワイン、ナチュラルワインと呼ばれるワインと同じで公式な定義はありません

基本的に以下の条件を満たしているワインのことを「オレンジワイン」と呼んでいるだけです。

  1. 白ワイン用のブドウ品種から造られている
  2. 発酵の前後に果皮浸漬を行い、色素成分の抽出を行っている

オレンジワインの醸造については

  • 野生酵母を使用している
  • 温度管理を行っていない
  • 亜硫酸塩 (SO2) の添加を行っていない

などのイメージが付き纏っていますがこれらは最低限度の要求でさえありません

またワインの原料となるブドウの栽培方法についても何1つルールがありません。ビオロジックで作られたブドウである必要もバイオダイナミクスに基づいて栽培されたブドウである必要もありません。

非常に極端な言い方をすれば、白ワイン用のブドウ品種を使用しており、多少濃い色味がついていればそれはオレンジワインと呼ぶことが出来るのです。

オレンジワインの成り立ち

オレンジワイン = ナチュラルワインという構図ができあがった理由を知るためにはそもそものオレンジワインの成り立ちの背景を知る必要があります。

オレンジワインの成立は2000年代

オレンジワインという”商業的カテゴリー”としての成立は非常に新しく、2000年代になってからイギリスのワイン商が言い出したのが始まりとされています。

そう、オレンジワインとは”ワイン商”による”造語”なのです。

これは非常に重要なポイントで、オレンジワインという言葉はワインの特性を示す意味合いよりもマーケティングの一環としてコピーライトとしての意味合いの方が強いものなのです。

オレンジワインの成立時期

オレンジワインを造るための醸造手法は1980年代にイタリアの醸造家によって”再発見”されました。

ちなみにこの辺りの年代については記事によって多少のブレがあります。

この点に関しては今回の記事ではそれほど必要な情報ではないため言及は避けます。ここで重要なのは、イタリアの自然派ワインの醸造家がジョージアで行われている伝統的なクヴェヴリ (qvevri) を使用したワイン醸造手法からインスピレーションを受けオレンジワインの製造を始めた、という点です。

この辺りの関係性からジョージアワインとオレンジワインとが繋げられたり、自然派ワインに繋がったりといった現在に至る構図が作られ始めます。

原点回帰とジョージアワインがつながる奇妙さ

なおこのジョージアにおけるワインの製法からインスピレーションを受けた、という事象は原点回帰 (back-to-basics もしくは back-to-origin) という考え方の中で起きています

確かにジョージアにおけるクヴェヴリを使用したワインの製法は8000~5000年という長い歴史があるとされており、「ワイン造りの原点」と考えるのも分かるのですが、実際にはジョージアでなくても現在のような技術が発展する以前の時代にはどの国のどの地域でもワインが造られる際には多かれ少なかれ同じような手法がとられていたはずです。

ですので、「ワイン醸造手法の原点」としてジョージアの手法を挙げることに実際には意味はありませんし、オレンジワイン = ジョージアのワインもしくはその手法という構図を造ることにはマーケティング的な意味合いしかありません。単にジョージアにはその手法が今でも残っていた、というだけのことです。もともとは誰しもがやっていたこと、まさにoriginなのです。

実際にジョージアはこのオレンジワインという呼称を自国のクヴェヴリワインに付けられることを大変嫌っており、独自の「アンバーワイン (amberwine)」という名称を使っています。

オレンジワインが自然派ワインと思われる理由

オレンジワインというものの概念がその成立の背景から強くワイン造りの原点、特にジョージアにおけるワイン造りと結びついて認識されているものであることがこれまでの内容でお分かりいただけたことと思います。

ここで少し話題がそれますが、質問です。

ジョージアワイン、というものになんとなく自然派ワインのイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか?

  • クヴェヴリという現代的なテクノロジーからかけ離れた容器を使っている
  • 長い伝統がある
  • ワイン造りの原点と言われている
  • とにかく“自然”なイメージがある

こういった個々のイメージが積み重なった結果、ジョージアワイン = 自然派ワインというイメージをお持ちの方が実際に多くいらっしゃいます。そしてこのようなイメージを持つジョージアワインとイメージ的に強く結びついたオレンジワインもまた自然派ワインと思われているケースが非常に多くあります。

実際にはジョージアワイン = オレンジワインではありませんし、そもそもジョージアワイン = 自然派ワインでもないのですが、完全なるイメージ先行の結果このような誤解がはびこってしまっているのが現状なのです。

間違ったイメージを補強してしまう醸造手法

そしてこのようなイメージに基づく誤解を補強してしまっているのが、実際にオレンジワインの生産に用いられている醸造手法です。

実際の問題としてオレンジワインの製造はナチュラルワインの醸造手法ととても相性がよく、実際にオレンジワインを造っている造り手の多くもナチュラルワインの醸造家に区分される方々です。

オレンジワインの醸造ではその色味を抽出するために

  • ステンレスタンクのような密閉型の容器は使いにくい
  • 発酵時の低温管理の必要性が極めて低い
  • 亜硫酸塩 (SO2) の添加と相性が悪い

という特徴があります。

なおこのような醸造的な要求事項については詳しくは改めて徹底解説の記事で説明をしますのでそちらを参考にしてください。

さらに醸造において守ることを要求されるルールが特にはないため

  • 使用する酵母の種類は自由
  • フィルターの有無も自由

という点をはじめとした大きな自由度があります。

つまり醸造においてステンレスタンクを使用せず、SO2を添加せず、温度管理もしない状態で野生酵母を使って発酵させたうえでフィルターをかけずにボトリングをする、という選択肢が選べます

こうして造られたワインはそのままナチュラルワインとしての区分に該当していることがポイントなのです。

今回のまとめ | オレンジワインはナチュラルワインなのか

オレンジワインは今、非常に話題性の高いワインの区分です。このためこのワイン造りを手がける醸造家は多くいますし、その多くがナチュラルワインの造り手でもあります。

SO2の添加を嫌うナチュラルワインの醸造においては原則として白ワインは色味を持ちやすくなります。このために色味の抽出という点に対して抵抗感は低くなりますし、むしろ色味の抽出をかけることこそがナチュラルワインの証明である、という気風さえあります。

さらにはワイン造りの”原点”である、という意識がこの動きを加速させています。

もともとのオレンジワインというものの成り立ちの経緯から自然派ワインとしてのイメージをもたれやすい点に加えて、実際に造っている造り手が自然派ワインの造り手であることがこのイメージを補強し、この補強されたイメージを大々的にメッセージとして全面に押し出した結果としてオレンジワイン = ナチュラルワインという構図が固められつつあります。

しかし実際にはオレンジワインの醸造では野生酵母にこだわる理由も、SO2を無添加にする理由も、ノンフィルターにする理由もありません。また原料となるブドウの栽培方法は極めて自由で、農薬の使用有無を問われることもありません

オレンジワインのすべてが自然派ワインではないですし、この両者に直接的な関連も実際にはないのです。

オレンジワイン = 自然派ワインという構図は誤った認識であり、またマーケティング的な意味合いから敢えて作られた虚像でもあるのです。

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  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

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