醸造的な意味から厳密なお話しをすると、ロゼはロゼであっていろいろは基本的にないのですが、それでも2つ、3つはヴァリエーションが存在していますし、さらには醸造的な条件を知らなければロゼとなんの違いもない、むしろ、飲む側のイメージとして持っているロゼに合致しているように感じるものなんてものもあります。この辺り、ドイツの厳密さというか、細かさを感じなくも無いところです。飲む側からすれば、美味しいと感じるかどうかが全てなので、この細かさに意味があるのかはちょっと疑問、という印象も無きにしもあらず、なんですが。
今回は、こんなロゼの種類に関するあれこれを2回に分けてお届けします。
Rotlingってなんだ?
ドイツにいてもなかなか耳にしないワインの一つにRotling (ロートリング)というものがあります。かれこれそれなりの期間ドイツで居住していますが、未だかつて数えるほどしかこのワインには出会っていません。特に探していないので、目についていないだけ、ということはあると思いますが。
さてこのロートリング、非常に簡単に、消費者的な視点から身も蓋もなく一言で言ってしまえばロゼです。ただし、その作り方に特徴があり、醸造的にはロゼとは呼びませんし、呼んではいけないことになっています。
ロートリングは赤と白の混合OK
以前の記事でご紹介したとおり、ドイツではロゼと銘打っていいワインは赤ワイン用ブドウから作られたものに限られます。
ロゼの作り方に関する記事はこちら
これに対して、ロートリングは赤ワイン用のブドウと白ワイン用のブドウを混合して造るワインのことです。ただし、これらのブドウを混ぜていいタイミングは法律で決められています。
ドイツのワイン法では白黒のブドウを混ぜていいのは、加工前のブドウの時点か、マイシェにした時点までです。その後のモストの段階や、発酵が完了したワインの状態で混合することは認められていません。
ちなみに両者の混合比率に関する規定は特になく、赤ワイン用ブドウ95%に白ワイン用ブドウ5%を混ぜても、逆に90%の白ワイン用ブドウに10%の赤ワイン用ブドウを混ぜてもすべてロートリングです。このため、ドイツ以外の国ではちょくちょく見かけるような、赤ワインだけれども味や風味、香りに変化を持たせるためにわずかに白ワインを混合する、というようなワイン造りの手法は、ドイツではワインの段階での混合は認められませんし、ブドウもしくはマイシェの時点で行っていればエチケットにはロートリングであることを記載する義務が生じます。
場所によって名前を変えるロートリング
さらにここがドイツの不思議なところ、というか、州ごとの独立心旺盛なところというべきか、このロートリングは作られる場所や条件によってその名前を変えることがあります。主にヴュルテンベルク地方で生産されているシラーワイン(Schillerwein)、グラウブルグンダーとシュペートブルグンダーのブレンドに限定されたバーデン地方のバーディッシュ・ロートゴルト(Badisch Rotgold)、ザクセン地方で生産されているシーラー(Schieler)などがこれに当たります。
今回はロゼであってロゼでないRotlingについてお話しをしました。
次回はロゼであるのにロゼでないようなワインについてお話したいと思います。