栽培

除葉をどこまでやるか?

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2018年のドイツの夏は本当に暑く、雨の降らない日が続いています。このためブドウの生育は例年よりも遥かに早く進んでおり、ワイナリーにおける仕事もその分、前倒し、前倒しで進められています。しかし仕事の前倒しには常に時間と労力の確保が必須であるために、その時間や労力を確保できているワイナリーと、出来てないワイナリーとで現在行っている仕事の内容に差が出てきているのが現状です。

 

そんな中で現在筆者が日々、畑で行っているのが除葉の作業です。

今やる除葉の目的

以前にも除葉に関する記事は書いたため、除葉そのものに関する説明は省きます。除葉そのものに関する説明についてはこちらの記事、「除葉の季節」を御覧ください。

 

「除葉の季節」でも書いたことですが、除葉の目的は

ポイント

  • 微小気候の改善
  • カビ被害の減少
  • 実の小型化
  • 実における含有成分量の変化

といったことに大別されます。ちなみに、現在筆者が行っている除葉の目的は、1番目の「微小気候の改善」、言ってしまえばブドウの実の周りの通気を良くすることでカビなどの病気の発生を防止することが最大の目的としています。

場所によってはすでに一度行われている場所もあるのですが、その後の樹の成長によりまた余分な葉や枝が出てしまって通気が悪くなっている部分があったり、現在の気象状況から今までわざと行っていなかった部分の葉を取ったりしています。ちなみに手作業です。

 

 

ブドウに光を当てる必要はない

上の目的にも書いていますが、この除葉作業の目的はブドウの果実の周りの通気状況の改善です。

 

通気が良くなる、つまり乾燥させる、という連想自体は間違いではないのですが、あくまでも風の通りを良くすることだけが目的なので、ブドウに直接太陽光が当たるようにする必要はありません。また、葉に関しても親の仇のように徹底的にむしり取る必要も基本的にはありません。多少、取るべき葉が残っていたところで、通気状況さえ十分に確保できていればそれで十分なのです。むしろブドウの実に直接強い太陽光があたってしまうと実の日焼けの原因になってしまうので、特に白ワイン用のブドウ品種では避けるべきこととされています。

同じ理由から、除去される葉の場所や向きというものにも原則があります。

 

 

除葉をどこまで、どうやってやるのか

くどいようですが、除葉の目的はブドウの実の周りの通気を良くすることなので、仕事としての最低水準は取られるべき部分にある葉のみを最低限除去すること、となります。次の段階が取るべき場所の葉をほぼ全部取ることです。

この2つの水準に基づく作業であれば、作業者は葉を取る位置のみに集中すればいいことになります。視線を上げる必要はありません。慣れてくればほぼ無意識に、何も考えずに流れ作業のように行っていくことが出来るようになります。手作業で行う上では、このやり方がもっとも早く出来る方法と言えます。

 

 

この一方で、ブドウの樹全体で状況を改善していく、という考え方もあります。

 

取るべき場所にある余分な枝や葉はもちろん除去するのですが、これらを除去したあとでも樹の成長具合や枝の伸び方によってはブドウの樹全体が非常に混んでしまって向こう側がまったく見通せない、なんて状況になっていることがあります。このような状態の樹においてはブドウの実も絡み合ってしまっていたり、枝の間に入り込んでしまっていたりして、そもそもの通気状況もあまり良くなければ、果実の成熟がすすんで柔らかくなったときに傷ついてしまったりするような場合が多く出てきます。このような状況を改善するには、ブドウの樹全体を見て余分な枝を除去したり、枝の配置を調整したりする必要があります。

 

 

どちらがいいか、ではない

完成形を見たときに、どちらのほうがブドウ畑として理想的か、といえば後者のブドウの樹全体を見て作業を行う方法の方が理想的ではあるでしょう。ただその一方で、この方法で作業を行うと前者の方法と比較して数倍の時間が必要になります。ただでさえ仕事が押しているときにそんなに時間がかかる方法で10haを大きく超える広さの畑全体を作業することはまったく現実的とは言えません。そんなことをしていては、除葉作業が終わったときには収穫まで終わっていた、なんてことになりかねないからです。

 

このため、筆者自身もあまりにひどい状況でない限りは基本的には必要な部分のみを対象に葉や枝を除去して、樹の上の方には最低限度しか手を出さないようにしています。個人的心情ではぜひ一本一本の樹を理想的な方法で作業していきたいのですが、それはあくまでも「理想」に留まっているのが現実です。

日々の作業で大事なのは、臨機応変に必要な場所に必要なだけの労力をかけること。過剰にも、不足にもならないこと、なのです。



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Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。フリーランスとしても活動中

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