栽培

斜面の畑、Terrasseでのお仕事

08/02/2018

昨日の記事でTerrasseに関する記事をあげましたが、今日はそのTerrasseで筆者が最近従事している仕事の内容について書きたいと思います。

とは言っても、Terrasseだから、という類の仕事はそれほど多くありません。Terrasseを新しく作る、という話になればこれは全く別の話ですが、流石にこの作業を人力で行うことはありえませんので、一度作られたTerrasseにおいては日々必要になる作業は他の普通の畑と大きく変わらないのです。成長に合わせて伸びてきたブドウの枝を針金の中に入れたり、その針金の高さを変えたりしつつ、成長点を落としたり、除葉したりします。

ブドウ畑での各種作業についてはこちらの記事も御覧ください

しかし、その一方でTerrasse独特の作業、というものも無いわけではないのです。

Terrasseにはあって、普通の畑には無いもの

Terrasseにあって普通の畑にはないもの、と言われてすぐに答えが思いつくでしょうか?

答えを言ってしまうと、段差です。

Terrasseにあるもの、というよりも、Terrasseそのものを形作るもの、と言ったほうが適切な気もしますが、この段差の存在とその段差に基づく壁の存在がTerrasseと普通の畑を区別している絶対的な違いになります。そして、この違いから、Terrasseならではの仕事というものが生じるのです。

Terrasseを保守するという仕事

Terrasseは斜面を削って作られているので、時間の経過とともに風雨で崩れてきたりことがあります。もっともこのような大きな保守が必要になることはそうそうありません。その一方で、石壁にしていない斜面部分には当然ながら雑草が好き放題に生えてきます。この雑草が、とても厄介な存在なのです。

一般的にブドウ畑においては雑草刈りはトラクターや草刈り用の小型車両などを入れて行います。

そのような機械の入れない部分のみは機械式や鋤や鍬といった伝統的な手動式の道具を使って人の手で行うことになりますが、大方の部分は人手で行うようなことはありません。例外はトラクターの入れない急斜面にある畑くらいです。しかし、Terrasseの通路の片側にある斜面や壁はこの例外の一つです。場所によっては2mを軽く超える段差のあるTerrasseですから、垂直までは行かなくても相当な急傾斜のその斜面をトラクターなどで作業することはさすがに出来ないのです。つまり、Terrasseの斜面の雑草は人手で刈り払う必要があります。

ちなみにこれらの雑草は、筆者の働いているワイナリーでは高枝切り鋏ならぬ、高枝切りチェーンソー (筆者による勝手な命名。実際の刃の部分はチェーンによる回転ではなく、電動モーターによる前後運動で切っているのでチェーンソーでさえ無い) で段差の下から一生懸命刈り払っています。どうやっても下からでは届かない部分はブドウの樹と段差の縁の間をこの高枝切りチェーンソーを抱えて渡り歩き、上から切る、という手順になります。

この高枝切りチェーンソー、ブレードがモーターに直結している構造のため先端に結構な重さがあり、余計なものを切らないように気をつけつつ上下左右に振り回して雑草を切る作業は結構な手間がかかるだけでなく、素晴らしい全身運動になります。今年のような暑い日々の続く中ではダイエット待ったなし、です。

これが、ここ数日間の筆者の日々の仕事の結構な割合を占めているお仕事になります。

Terrasseには”向こう側”がない

このTerrasseで行っている作業をするうえで注意することが、Terrasseには”向こう側”がない、ということです。

どういうことかというと、Terrasseはいわゆる段々畑になっており、ブドウの樹は崖側の際に沿って植えられています。このため作業は常に通路側もしくは山側、つまり日陰になる側から行うことになります。いわば裏側です。ところが植物の成長は基本的に太陽光の当たる面で活発になりますので、Terrasseにおける作業は必然的に裏側から勢いのある表側の枝を管理しなければならないわけです。

通常の畑であれば、我々は垣根の両側から作業をすることができるのですが、Terrasseに限っては”向こう側”は崖で足場が物理的にないため、これが出来ないのです。この点はTerrasse独特の仕事の方法が必要になる点であるといえるでしょう。

斜面の雑草は悪か?

続いてこの斜面の雑草について少し考察を加えてみたいと思います。

まず、この斜面の雑草群が悪なのか、というと、実は一概にはそうとも言えない部分があります。

すでに何度も書いてきているように、Terrasseはもともとの斜面を削って作っています。このため、部分によっては段差の部分がもろくなっている場合があります。これに対して、この段差の部分に雑草が根を張ることで地面が固められ、雨などによる土壌の流れ出しを防止するのに役立っている場合があります。この"土の流れ出し"というものは進行するとそもそもTerrasseを崩壊させかねないことなので、それを防止することは極めて重要です。この意味においては、雑草はTerrasseにおいて役立つ存在、といえなくもないのです。

雑草はブドウの手強い競争相手

しかしその一方で、雑草の存在はTerrasseにおけるブドウにとって極めて質の悪い競争相手となります。

ちょっと三角形を頭に思い浮かべてほしいのですが、その頂点にブドウが植わっていて、斜辺に雑草が生えています。三角形の中のどこか底辺近くに水があるとして、よりその水にアクセスしやすいのはどちらでしょうか?

答えは簡単で、明らかに雑草です。根を伸ばさなければならない距離が絶対的に違います。つまり、そういうことなのです。また、頂点近くの斜辺に雑草が生えてしまうと、ブドウを巻き込んで成長したり、巻き込まないまでも陽射しを遮ってしまったりもします。

雑草がもたらすメリット以上のデメリットがあるため、これらの雑草は基本的に刈り払われる必要があるのです。

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  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

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