発酵

Federweißer(フェーダーヴァイサー)ってなんだろう?

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すでに一昨日、8月6日のことですが、ラインヘッセンでフェーダーヴァイサー用のブドウの収穫が始まった、というニュースが出ました。

ブドウの品種はソラリス。果汁糖度は90エクスレだったそうです。ちなみに90エクスレ、という表現は日本では馴染みが薄いかもしれませんが、おおよそで言えば20Brix強というくらいの糖度ですので、相当甘くなっていたことになります。

ソラリスという品種は早熟の品種として知られていますが、それでもこの時期にこれほど糖度が上がることは通常無いことです。

 

まだ8月上旬といっていいこの時期にブドウの収穫が行われた例は過去にありません。またこのニュースではラインヘッセンの事例を上げていましたが、プファルツやバーデンでも近日中に収穫が始まる予定とのことですので、この早すぎるほどに早いブドウの成長・熟成はドイツ全土の生産地域で起きていることだと言えます。

ところでブドウの成長の速さや収穫時期の前倒しはともかくとして、今回のニュースで扱われていた"Federweißer(フェーダーヴァイサー)"というものが何なのか、ご存知でしょうか?

Federweißerは発酵中の濁り新酒?

フェーダーヴァイサー(Federweißer)に関してはよく、ワインになる前のブドウジュース、とか、発酵中の濁り新酒、といったような説明がされていることが多いように思います。これはどちらも間違いではなく、まさにフェーダーヴァイサー(Federweißer)を指した表現と言えます。しかし、より厳密にいうとフェーダーヴァイサー(Federweißer)というものはもう少し広い範囲で捉えられることが出来ます。

 

Federweißerの定義とは

フェーダーヴァイサー(Federweißer)というものを辞書的な定義で言うと、「ブドウを絞ったのちに発酵が完了し、フィルターをかけられる前までの間のもの」となります。

 

つまり、ブドウを絞ったばかりのジュースも、ワイン一歩手前のアルコールがしっかり入ったものも、全部がフェーダーヴァイサー(Federweißer)ということになります。なので、フェーダーヴァイサー(Federweißer)は「甘くて微発泡で(ほぼ)ノンアルコール」という認識は部分的には正しいものの、飲む時期によってはまったくの的外れ、ということになってしまいます。またフィルターがかけられる前までのものなので、”濁り”という表現も間違いではないものの、実際には発酵が落ち着いてきた頃に上澄み部分を掬ってくれば”濁り”は全くなくなります。ことほど左様にフェーダーヴァイサー(Federweißer)というものはいろいろな側面をもつ飲み物である、ということなのです。

 

ちなみにフェーダーヴァイサー(Federweißer)は白という意味の"weißer"という単語が入っている通り、白ワイン用ブドウから絞られたジュースが原料になっているものを指し、赤ワイン用の黒ブドウ(どうでもいいんですが、なぜ赤ワイン用のブドウは”黒”ブドウというのでしょう・・・?)が原料となっているものは赤を意味する"rot"という単語が入った"フェーダーローター(Federroter)"という名前で呼ばれます。しかし、実際のところは買う側にこういった知識がないことの方が一般的なので、この飲み物が大々的に売り出される季節のワインスタンドなどではフェーダーヴァイサー(赤)というような記載で売られていることがほとんどです。

 

 

(ほぼ)ノンアルコールのFederweißerはどのくらいの期間楽しめるのか?

絞られたジュースは放っておいたら通常、1週間から10日ほどで発酵が終わります。この期間のうち、甘くてほぼノンアルコールな期間はせいぜい最初の3日間くらい。その後は徐々に甘さがなくなり、アルコールが強くなっていきます。

 

ちなみに以前の記事(カビネットって甘いんですよね?)でも書きましたが、この発酵期間の完了を待たずに発酵を止める処置をしたものが甘口ワインや中辛口ワインとなります。なので、飲む時期によってはフェーダーヴァイサー(Federweißer)はもう、フィルタリングの有無という差はあるものの立派な中辛口ワインや甘口ワインと状態的にはなにも変わらないことになります。

 

ここで、一昨日収穫されて絞られたブドウはすでに発酵が始まって甘さがなくなってきているんじゃないか、ということに気がつく人もいると思います。しかし、実際にフェーダーヴァイサー(Federweißer)として出されるものは大抵の場合、甘さを残しており、アルコールはほとんど入っていないジュースのようなものになります。これはなぜなのでしょうか?

 

Federweißerを甘く保つには

ドイツのワイン法では収穫したブドウは早急にプレスするなり、何らかの加工をしなければならないことになっています。ですので、ブドウのままどこかに保管しておいて、フェーダーヴァイサー(Federweißer)として提供する直前に加工する、という手段は原則として使えません。

 

ではどうするのかといえば、絞ったジュースの発酵を遅らせればいいのです。

具体的な方法としては、

ポイント

  • 圧力タンクに入れる
  • 酵母の添加を行わず野生酵母による発酵を行う
  • 液温を低温に保つ
  • 二酸化硫黄を添加する
  • 炭酸ガスや窒素ガスを充填した密閉容器で保管する
  • 加熱処理する

といった方法が考えられます。

 

発酵に関してはこれらの記事も参考にしてください

 

筆者自身はフェーダーヴァイサー(Federweißer)としての商品化には関わったことがないので実際のところ具体的にどんな方法をとっているのかは知りませんが、おそらく上記の方法を複数組み合わせているのだろうと思います。また、一番使われている可能性の高い方法は、圧力タンクの利用です。

なお、フェーダーヴァイサー(Federweißer)用に用意されたジュースは、フェーダーヴァイサー(Federweißer)として飲まれることを前提にしているのでそのまま発酵させてしまうとあまり美味しいワインにはならない可能性が高くなります。これは、フェーダーヴァイサー(Federweißer)に求められる代表的な味覚の種類と、ワインとして求められる味の種類が大きなところでは重なりながらも、細かいところでは異なっているためです。

美味しいワインは美味しいフェーダーヴァイサー(Federweißer)なくして造ることは出来ません。しかし、フェーダーヴァイサー(Federweißer)として楽しむだけでいいのであれば、このハードルは大きく下がったものになっているのです。

 

筆者をはじめワインの醸造に関わっている人間は造っているワインの品質管理の一環として、自分たちのワインを醸造する際になんどもこのフェーダーヴァイサー(Federweißer)と呼ばれる時期にジュースやワインの味を確認しています。このため本当に美味しいワインにするための初期段階としてのフェーダーヴァイサー(Federweißer)がどのようなものをかを知っています。しかし、だからこそその味をそのまま商品化するのは無理だろうな、とわかってしまうところでもあります。

 

もし本当の意味でフェーダーヴァイサー(Federweißer)を味わってみたい、という場合にはぜひ収穫の時期に知り合いの醸造家さんに頼んでみてください。タイミングさえあえば、きっと美味しいフェーダーヴァイサー(Federweißer)を飲ませてもらえると思います。




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