ランキングに関する話題が連続してしまいますがせっかくなのでこちらの記事、”Die 10 teuersten Weissweine (最も高価な白ワイン10種)”もご紹介したいと思います。
この記事はやはりインターネットメディアであるCaptain Cork Buchというサイト上に公開されたものですが、データ自体はwine-searcherのものを引用しています。Captain Corkはドイツのサイトということもあってドイツワインがランキングされていた白ワインのみの紹介となっていましたが、ここではせっかくなので赤ワインも合わせて紹介しておきたいと思います。
白ワインの最高値はやはりEgon Müller
白ワインの最高値はやはり期待を裏切ること無く、Egon Müller (エゴン・ミュラー) のRiesling Trockenbeerenausleseでした。販売店における平均価格で13,220 USD。日本円に換算すると約1,437,000円 (1 USD = 108.7 JPY にて換算) です。ちなみに最高価格のもので33,883 USDとなっていますので、日本円では360万円を超え、370万円近いというのだから驚きです。
参考
Trockenbeerenauslese: トロッケンベーレンアウスレーゼ
TBAとも略される極甘口のワイン。日本では貴腐ワインと呼ばれる。Botrytis cinerea (ボトリティス シネレア、貴腐菌) というカビが果実に付着することで果実内の水分が蒸発することで糖度が濃縮された、干しぶどうのようになった果実から造られるワイン。フランスのソーテルヌ、ハンガリーのトカイワインも貴腐ワインに区分されており、ドイツのTBAと合わせて世界三大貴腐ワインといわれている。
ドイツのTBAに求められる条件については、
並び立つもののいないEgon Müller
もっともEgon Müllerのワインの多くは直接オークションにかけられていますので、このような値段になるのもある意味ではうなずけます。ちなみに2018年9月にドイツで行われたナーエ・ラインヘッセン・アール産地に所在地をおくVDP加盟ワイナリーを対象にした、VDP主催のオークションでラインヘッセンの有名ワイナリーであるKellerの2015 Pettenthal Riesling Trockenbeerenauslese Goldkapsel Magnum (1.5l) が出品され、6500ユーロで落札されています。出品者がEgon Müllerと同様に世界的にも有名な、ドイツを代表すると言って過言ではないKellerであること、ラインヘッセンの中でも有名な畑であるニアシュタインのPettenthalで初めて造られたTrockenbeerenausleseであること、さらにマグナムボトルであったことを加味しても日本円にして86万円 (1 EUR = 124.7 JPN にて換算) 程度ですので、Egon MüllerのTBAが如何に破格であるかがおわかりいただけるかと思います。
メモ
このVDPオークションでは、Kellerから同じ2015年のPettenthal Riesling TBA Goldkapselのハーフボトル (375ml) も出品されていましたが、そちらの落札価格は1000ユーロでした。容量的には4倍のマグナムが実際の価格では6.5倍となっていますので、”マグナム”であることがどれだけ付加価値的に高いものであるのかがわかります。
10本中に4本、11本中に5本のドイツワインがランクイン
まずは今回のランキングの結果を見ていただきたいと思います。
- Scharzhofberger Riesling Trockenbeerenauslese, Egon Müller, Mosel: 13.220 USD
- Montrachet Grand Cru von der Domaine Leflaive, Côte de Beaune/ Burgund: 10.030 USD
- Uralter Madeira, J.S. Terrantez.: 8.285 USD
- Montrachet Grand Cru, Romanée Conti, Côte de Beaune/ Burgund: 7.924 USD
- Sauvignon Blanc, Screaming Eagle, Kalifornien: 5.953 USD
- Wehlener Sonnenuhr Riesling Trockenbeerenauslese, Joh. Jos. Prüm, Mosel: 5.090 Euro
- Corton-Charlemagne Grand Cru, Coche-Dury, Côte de Beaune/ Burgund: 5.004 Euro
- Scharzhofberger Riesling Beerenauslese, Egon Müller, Mosel: 4.224 USD
- Riesling Brauneberger Juffer Sonnenuhr Trockenbeerenauslese Goldkapsel, Fritz Haag, Mosel: 3.819 USD
- Corton-Charlemagne Grand Cru, Domaine Leroy, Côte de Beaune/ Burgund: 3.559 USD
- Erbacher Marcobrunn Riesling Trockenbeerenauslese, Graf von Schönborn, Rheingau: 2.999 USD
(出典: Captain Cork, 引用: wine-searcher, 表記の価格は平均価格)
上記のうち、1位、6位、8位、9位、11位がドイツのワインです。8位のEgon MüllerのBeerenausleseを除いてすべてTBAがであるところがいかにもドイツらしいといえる結果だと思います。
ドイツは世界に向けてワインのマーケティング戦略を展開していく上で、”ドイツワインは安くて甘いワイン”という印象が強烈に根付いていることに大変苦労しているのですが、その一方でこのようにドイツの甘いワインは世界のトップレベルにある、と言えることはとても意味のあることです。ただ、いずれにしても”ドイツワイン=甘いワイン”という図式が出来てしまい兼ねないことは頭の痛い事実なのですが。
高価な赤ワインは圧倒的にフランス産
続いて赤ワインの結果も記載しておきます。
- Domaine de la Romanee-Conti Romanee-Conti Grand Cru, Cote de Nuits, France: 19,702 USD
- Domaine Leroy Musigny Grand Cru, Cote de Nuits, France: 15,294 USD
- Domaine Georges & Christophe Roumier Musigny Grand Cru, Cote de Nuits, France: 12,882 USD
- Domaine Leroy Chambertin Grand Cru, Cote de Nuits, France: 7,480 USD
- Domaine Leroy Richebourg Grand Cru, Cote de Nuits, France: 6,015 USD
- Domaine du Comte Liger-Belair La Romanee Grand Cru, Cote de Nuits, France: 5,113 USD
- Domaine Leroy Romanee-Saint-Vivant Grand Cru, Cote de Nuits, France: 4,917 USD
- Domaine de la Romanee-Conti La Tache Grand Cru Monopole, Cote de Nuits, France: 4,716 USD
- Seppeltsfield Para Vintage Tawny Port, Barossa Valley, Australia: 4,261 USD
- Domaine Faiveley Musigny Grand Cru, Cote de Nuits, France: 4,260 USD
(引用: wine-searcher, 表記の価格は平均価格)
赤ワインの分野では9位にランクインしているオーストラリアのSeppeltsfieldを除き、すべてフランスのワインです。名前を見ても錚々たるワイナリーが連なっており、納得はあっても驚きはない、という印象の結果と言えるのではないでしょうか。もっとも1位のロマネコンティの平均価格が白ワインのEgon MüllerのTBAの価格を鼻で笑えるような値段になっていることには驚愕するしかありません。
データの見方には注意が必要
ここまで引用しておいてからの記載になってしまいますが、今回のランキングの引用元であるwine-searcherのデータは見方に少し注意が必要です。
まず、今回のランキングの結果を見て気が付かれた方も多いとおもいますが、各ワインには年代がありません。これはwine-searcherのデータベースに登録されている同一ワインの各年代のものを合わせた平均価格や最高値を表記しているためです。つまり、実際のワインの中身を細かく見ていけばヴィンテージによって価格の上下が生じており、ランキングの順位が変わります。今回のランキングは、あくまでもデータベースに登録されているワインのなかで安定して高い価格をつけられているワインのランキング、という意味になります。
これと同様の理由で、データベースに登録されることがない、もしくは機会が少ないワインについてはリスト落ち、もしくは順位が下る傾向がある可能性があります。値段の高いワイン、といえば真っ先にイメージするのがいわゆるカルトワインの数々ですが、今回のリストにはそれらの名前はほとんど見ることは出来ません。この理由として、実際に価格がそこまで高くなかったという可能性もありますし、そもそもデータベースに登録されることがなかったという可能性もあるわけです。ですので、やはりこのランキングを見るときには最低限、一般流通に乗るワインであること、という条件が入っていることに注意が必要です。