先日の「ワインは畑ごとに味が違う、は本当か?」と題した記事で、ワインの味はブドウの実一粒単位で味が違うところをたくさん重ね合わせることでその違いを平均化しながら表現したものですよ、と書きました。
こちらの記事をTwitterでシェアさせていただいたところ、拡散してくださる方も何人かいらっしゃり、結果多くの方に読んでいただくことが出来ました。拡散してくださった皆様、どうもありがとうございました。
もしまだ読んでないよー、という方はぜひ一度目を通してみてください。
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ワインは畑ごとに味が違う、は本当か?
ワインの味を話すときによく、「ワインは畑ごとに味が違う」ということを聞いたりしないでしょうか? これ、実はものすごく当然のことです。 というか、この言説に納得している人、誤魔化されています。いろいろと ...
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ところで、前回の記事ではこの「違い」が具体的にどこから生まれてくるものなのか、という点には触れませんでした。
今回の記事では主に畑に焦点を当てて、このような違いがどのようにして生まれるのかについて、お話をしていきたいと思います。
理想の味はブドウの状態でまず定義される
本題に入る前に、まずは少しだけ面倒くさいお話を先にしてしまいましょう。
先日の記事に書いたとおり、ワインの味は積み上げで造られています。その一方で、造り手が造りたい味としてイメージする、「理想の味」はこうした積み上げの末のものではありません。細かい素材のことはとりあえず考えず、自分が造りたい味をイメージします。
自分はこういう味のワインを実現したい、手元にはこういう特徴を持った素材がある、じゃあ、それぞれをこうやって組み合わせて目的の味に近づけよう、という流れです。
まずイメージがあり、そのイメージに近づけるために積み上げていく、というのが順番です。どんなに優秀なナビであっても、まずは目的地を設定しないことにはそこへ行くための道は案内できないですよね。
ただ、そうはいってもやはりある程度の枠組みは必要です。
例えば、どう頑張ってもブドウが熟さないような冷涼な気候の地域でワインを造ろうとしていたとします。しかしそれにも関わらず、ブドウが完熟していることが大前提となる味のワインを造ろうとすることは可能でしょうか。
絶対に不可能とまでは言わないまでも、やはりなかなか大変です。ですので、まずは「理想の味」の前提は、その「理想」が自分の周りのものすべてのポテンシャルのぎりぎりであったとしても、まずはそのポテンシャルの内側に入っている必要がある、ということです。
狙っているのがポテンシャルとしてのぎりぎりであるとすると、それは「各工程のすべてでベストの結果を得ていくことが求められる」ということです。ポテンシャルの内側に、なんて言われると何となく甘いことを言っているようにも感じられるかもしれませんが、とんでもない。これはとてつもなく大変な挑戦です。
誰の考える「ベスト」なのか
ワインを造る際の最初の工程はブドウの栽培、つまり畑であることはどなたにもお判りいただけることだと思います。この畑という工程での成果物が、収穫されたブドウです。
このブドウの状態がまずは造り手が狙った通りの状態になっていること。それがその後のワイン造りにとってとても重要です。
なおこの点、よくブドウの品質がワインの品質にとって最需要、という表現の仕方で言われています。いいワインはいいブドウから、なんてキャッチフレーズを実際に耳にされた方はとても多いと思います。
これはもちろん間違いではありません。ただ、実は大事な主体が抜けてしまってもいます。
ぜひこの文章を読んでくださっている皆さんに考えていただきたいのですが、いいワインを造る「いいブドウ」とはどんなブドウだと思いますか?
「いいブドウ」と簡単に言いますが、どういうブドウが「いいブドウ」なのか、それを定義することは意外なまでに難しいことです。なぜなら、この定義はどのようなワインを造ろうとするかによって、つまり造り手ごとに、しかもワインの種類ごとに変わるからです。
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