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デザートワインは赤くない?

01/17/2021

ワインの好き嫌いは人によりけりですが、デザートワインの持つ深い甘味を嫌う人はあまり多くはないのではないでしょうか。

デュケムとまでは言わなくても、良い年のリースリングのトロッケンベーレンアウスレーゼを思い浮かべると思わず笑顔になってしまいます。

ところで一口にデザートワインと言ってもその種類にはいくつかあります。それぞれの種類によって造り方が違っており、それにともなって味や香りも全く変わってきます。タイプが異なるワインを比べてみると、これを同じデザートワインと括っていいの?、と言いたくなるほどの違いがあるものも。

色の有無もそんな、タイプを分ける特徴的な要素の一つです。

この記事の目次

- デザートワインとはなんなのか
- 赤色のあるデザート、ないデザート
- ボトリティスとワインの色
- 分解される色素
- 今回のまとめ | ボトリティスのついたブドウから赤いデザートワインを造るには

デザートワインとはなんなのか

デザートワイン、という名前は比較的良く使われるものではあるのですが、この名前自体に定義はありません。とても甘いため、食後のデザートとして供されることが多いことから、デザートワインと言われています。

一部のインターネットサイトなどでは甘口ワインのことをデザートワイン、としている場合もあるようです。

確かにデザートワインが甘口ワインであることは間違いありませんし、どれくらい甘ければデザートといえるのか、という判断には個人差があります。なので、残糖量がこれ以上あればデザートワイン、とするのも少し乱暴といえば乱暴です。

ただそうはいってもやはり何らかの基準は欲しいもの。

私自身が肌感覚として感じている範囲としては、ドイツの基準でいえばアウスレーゼ以上の等級のものはデザートワインといえるだろう、というものです。同じ遅摘みであってもシュペートレーゼはまだギリギリ、デザートワインではないかな、と。

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もちろん中にはとんでもない量の残糖量を残したシュペートレーゼもありますので、そうしたものは例外的にデザートワインの範疇にいれています。

同じ遅摘みなのにシュペートレーゼはデザートワインではないのにアウスレーゼはデザートワイン、という区分に納得いかない方はぜひこの両者を飲み比べてみてください。何となく、私の肌感覚が示す基準をお分りいただけるのではないかと思います。

さて、上記のデザートワインかどうかの判断は「ドイツの基準でいえば」です。当然ですがデザートワイン自体は世界中にある区分ですので、ドイツだけの基準で規定することはできません。
そこで良く言われるのが、

貴腐ワイン
アイスワイン
遅摘みワイン
フォーティファイドワイン
ストローワイン

をデザートワインとするカテゴライズです。

3番目の遅摘みワインにはさらに上述のシュペートレーゼなのかアウスレーゼなのか、といった区分をするケースとしないケースとがあります。

赤色のあるデザート、ないデザート

色の有無がデザートワインのタイプを分ける一つの特徴である、と書きました。試しにオンラインのワインショップなどで極甘口の赤ワインを検索してみてください。

いくつか検索結果は出てくると思うのですが、その検索結果には一つの特徴があるはずです。そう、リキュールを入れて発酵を止めるフォーティファイドワイン (酒精強化ワイン) か、凍結による乾燥処理などをした広義でのストローワインしかないのです。

M.シャプティエ バニュルス リマージュ 500ml [NL フランス ラングドック・ルーシヨン 赤ワイン 極甘口 2722MC031300]

これらのワインは上2つがリキュールを入れることで発酵を中断させ、強い甘味を残しつつアルコール度数もあげたフォーティファイドワインと言われる酒精強化ワイン、3つ目のものが人工凍結させることで水分を抜き果汁の凝縮度をあげた広義でのストローワインとなります。

例外が全くないわけではないのですが、基本的にはフォーティファイドワインやストローワインのように人が積極的に手を加えることで糖度をあげる、もしくは糖度を残す仕上げ方をしたワインでなければ濃い赤色をしたデザートワインは造れません。

そこにはBotrytis cinerea (ボトリティス シネレア、以下ボトリティス) と呼ばれる、いわゆる貴腐菌の存在が関わっています。

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なお、このボトリティスが全くついていない健全果のみが完熟したり、自然凍結したりすることでとても甘くなった場合には遅摘みワインやアイスワインであっても濃い赤い色をした赤ワインのデザートワインを造ることができます。また例外的に元の果皮の色が極めて濃いブドウ品種の場合にはボトリティスがついた場合でも相対的に色味が濃く残っており、赤ワインのように見えるケースも中にはあります。

一方でブドウの果汁がより甘くなるプロセスにボトリティスが強く関わっていますので、このボトリティスを含まない果実から造ったデザートワインは甘さの度合いが多少、低くなる傾向があります。

ボトリティスとワインの色

ボトリティスがついたブドウから造られるワインでは、それが甘口かどうかにかかわらず、基本的に赤ワインは造られません。理由は2つです。

次のページ以降では以下の内容に沿ってお話を続けていきます。

  • 赤ワインを造れない二つの理由
  • 分解される色素
  • 今回のまとめ | ボトリティスのついたブドウから赤いデザートワインを造るにはネズミ臭発生の原因

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  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

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