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シュペートレーゼなのに甘くない?!その理由を知ろう | ドイツワインの味と等級のルールとは

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”甘いと思って飲んだカビネットが少しも甘くなくてびっくりした”

 

こんな経験をお持ちの方は実は多いのではないでしょうか?

ドイツワインはカビネットやシュペートレーゼとエチケットに書かれていれば甘くて美味しい、と何となく思っている方は多いと思います。ですので、その味を期待して飲んだワインが酸味が強くて甘くなかったらそれは驚きますよね。

 

これはなにもドイツワインを全く知らない初めての方だけではなく、ドイツワインの勉強を始めて間もない方でも起こり得ることです。むしろそういう方のほうが経験しやすいことかもしれません。

そんな初心者泣かせの原因が、今回のテーマです。

 

前回、ワイン関連試験で嫌われる筆頭格であるドイツワインの、その中のカテゴリーについての記事を書きました。

今回はこのお話をさらに進めて、ドイツワインの味の区分と等級の関係についてみていきます。

 

この記事を読んでいただければもうドイツワインを選ぶときに味を間違えて注文してしまうようなことはなくなります。

 

ドイツでワインを造っている筆者による、難しいドイツワインの優しい解説。シリーズ第二回です。

 

なおこの記事では必要なポイントは改めて書いてはいますが、前回の「ドイツワインは難しい? | ドイツワインのカテゴリーを知ろう」の記事を読んでからご覧いただいた方が理解していただきやすいと思います。

 

ドイツワインの等級

まずは前回の解説記事でも書いていますが、ドイツワインの等級というものについて復習をします。

ドイツワインにおける等級を簡単にまとめると以下のようになります。

 

  1. 等級が付くワインの基本はクヴァリテーツワイン (Qualitätswein)とプレディカーツワイン (Prädikatswein)
  2. ドイツワインにおける「等級」という場合は、主にプレディカーツワインに適用されるプレディカートのことを指す
  3. 等級 (プレディカート)はクヴァリテーツワインだけに与えられる特権である
  4. クヴァリテーツワインはワイン法によって指定された13地域内で収穫されたブドウを使ったワインにしか適用されないルール
  5. 細かいルールはあるものの、基本的には指定13地域内で造ったワインであればほぼ自動的にクヴァリテーツワインとしての等級である「QbA」が付与される

 

つまり、等級に関わるお話をする場合は自動的に指定13地域のワイン「のみ」を対象としています。また指定13地域内に入っていても複数の地域を混ぜた場合にはこのルールの適用外となり、クヴァリテーツワインとしては認められません

 

なおドイツのワイン法によって定められているプレディカート、等級は以下の6種類です。

 

  • カビネット (Kabinett)
  • シュペートレーゼ (Spätlese)
  • アウスレーゼ (Auslese)
  • ベーレンアウスレーゼ (Beerenauslese: BA)
  • アイスワイン (Eiswein)
  • トロッケンベーレンアウスレーゼ (Trockenbeerenauslese: TBA、貴腐ワイン)

 

ドイツワインを理解していくうえで最も重要なことは、

これらの等級は発酵が終わった後のワインの状態に対して付与されるものではなく収穫された時点におけるブドウの果汁糖度に対して付与されるものである

という点です。

ブドウの果汁糖度とは、収穫してきたブドウを搾って流れ出てきた果汁に含まれる糖分の量のことです。少し乱暴な言い方ですが、果汁(ブドウ)の甘さのことと思っていただいても構いません。

 

果汁が甘い → 果汁により多くの糖分が含まれる → ブドウがより熟していた → より高い等級が与えられる

 

という構図です。

なおこの構図における例外はアイスワインとトロッケンベーレンアウスレーゼです。この両者には収穫時の果汁糖度以外の条件があります。

アイスワインはその名前の通り、収穫時にブドウが天然凍結していなければなりませんし、トロッケンベーレンアウスレーゼは貴腐菌が付着したブドウから造られている必要があります。

 

等級付の細かいルールは「カビネットって甘いんですよね?」の記事を、貴腐ワインについては「最高級ワインを構成する高貴なカビかブドウを腐らせる大敵か | Botrytisとは何ものか」に詳しく書いていますのでそちらを参考にしてください。


最高級ワインを構成する高貴なカビかブドウを腐らせる大敵か | Botrytisとは何ものか

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ドイツワインの味の区分

ドイツワインにおける等級の付与が出来上がったワインにではなく発酵前のジュースの段階で行われるのに対して、味の区分は出来上がったワインの状態に対して決められます。より厳密にはボトリングして市場に出す直前の状態のワインに対してつけるものです。

 

発酵前にどのような状態のブドウやジュースだったかは無関係です。

 

そしてこれらの味の区分もやはりワイン法によって明確に定められています。

まずドイツにおけるワインの味の種類は厳密には以下の4つのみです。

 

  • trocken (トロッケン: 辛口)
  • halbtrocken (ハルプトロッケン: 中辛口)
  • lieblich (リープリッヒ: 甘口)
  • süß (ズース: リープリッヒよりもさらに甘口)

 

ドイツワインに良く触れていらっしゃる方には上記の区分に疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。「厳密には」と記載したのも実は同じ理由によります。

 

ドイツワインを飲んでいると、まれにエチケットに「mild」など上記の区分以外の記載がされていることがあります。これもやはりワインの味を示しているのですが、いわば例外的な存在です。

この手の表記はワイン法による明確な定義のない、非公式な表現であることが上記の4区分との大きな違いです。

非公式ですので、公的なルールに縛られることなく醸造家やワイナリーが自分たちの感覚で記載することができます。特に上記のmildなどはちょくちょく見かける記載でもあります。

 

この手の非公式な表記の大きな欠点は、何となく同じ方向性の意味を示しているという程度のコンセンサスがあるだけで細かい点での使い方がワイナリーごとに異なっている、ということです。

 

またこれ以外にも例外があります。それがスパークリングワインです。

スパークリングワインにおいては上記区分で辛口を意味するtrockenの上にextra trocken、brut、extra brutという区分があります。逆に甘口側の規格であるlieblichやsüßは使われません。

これらの区分に押される形でスパークリングワインにおけるtrockenは通常のスティルワインでいうところのhalbtrockenよりも甘いくらいの味を指しています。

また上記で書いたmildという区分はスパークリングワインにおいてはhalbtrockenよりも甘いものを表す公式な区分となります。

 

メモ

スパークリングワインの味の区分ではhalbtrockenよりも甘いものには全てmildが使われます。このため、通常のスティルワインでmildを使う場合にもhalbtrockenとlieblichの間の味わいとして使われます。

 

スティルワインにおける味の区分の詳細は「ワインの味に関する規定」の記事を、スパークリングワインにおける味の規定は「スパークリングワインの"トロッケン"は辛口か?」の記事に詳細を書いていますのでそちらを参考にしてください。


スパークリングワインの"トロッケン"は辛口か?

  Trocken (トロッケン)という表記はドイツワインにおいては辛口のことです。なので、スパークリングワインのエチケットにこの表記があると、やはり辛口のことだろう、と思ってしまいがちです ...

続きを見る

 

等級と味の規定の関係性

ドイツワインの理解を難しくしている大きな原因の一つがこれまで見てきた等級と味のそれぞれの規定の関係性にあります。

この原因は簡単で、多くの方が等級の付与に関するルールを

 

甘さに対して付与している

 

肝心の主語である「果汁糖度」を省いて理解してしまっていることにあります。かつての日本市場におけるドイツワインが甘いワインばかり輸入されていたことも無意識に「ドイツワイン=甘いワイン」という構図を頭の中にイメージさせ、この誤解に拍車をかけてしまっているものとも考えられます。

 

この結果、

甘いワイン = カビネットとかシュペートレーゼ → カビネットやシュペートレーゼは甘い → なんならプレディカートが付いたワインは全部甘い

という認識につながってしまっているわけです。

 

一方でここで思い出していただきたいのが、それぞれの規定がどの段階のものに対して適用されているのか、という点です。

 

等級: 発酵「前」のジュース

味: 発酵「後」のワイン

 

上記の通り、両者は付与される時点が全く異なります。つまり、この両者は競合することがなく両立が出来る、ということです。

イメージとしてはクヴァリテーツワインの上にそれぞれのプレディカートが乗っていたように、それぞれのプレディカーツワインの上にそれぞれの味が乗っている構造です。

 

例えばKabinettというプレディカートの付与されたワインにはtrocken、halbtrocken、lieblich、süßのそれぞれの味があり得る、ということです。

これは理論上はアイスワインやトロッケンベーレンアウスレーゼであっても例外ではありません。アイスワインであろうとトロッケンベーレンアウスレーゼであろうと、発酵を最後まで完了できるのであれば辛口の、エチケットにtrockenと表記されるワインを造ることが可能です。

 

名前からくる誤解

実はもう一つ、誤解を招くものがあります。

それがtrockenという表記です。

 

Trockenは主に味の区分で使われる表記で、辛口のことを指しています。

この一方で、同じtrockenという単語が等級の区分でも使われています。そう、Trockenbeerenauslese (トロッケンベーレンアウスレーゼ) です。

 

さすがにTBAは醸造上、通常の方法では辛口のものを造ることはほぼ不可能ですので世の中的には甘いワインとして知られています。

この前提と相まって、trockenという表記でも甘いワインがある、と思われてしまうケースがあります。

 

実際にはトロッケンベーレンアウスレーゼはあくまでも等級の区分なので味の区分を意味することはないのですが、やはり同じ文字が両方の区分に使用されているのが分かりにくさを助長してしまっているようです。

 

なおこのtrockenというドイツ語は英語のdryと同様の意味を持ちます。つまり味では辛口となりますが、中心的な意味はむしろ「乾燥した状態」を指しています。

 

そしてトロッケンベーレンアウスレーゼは単語としては trocken (乾燥した) | beeren (ブドウの粒) | auslese (アウスレーゼ)と分解されます。つまり、乾燥したブドウの粒から造ったアウスレーゼ、というそのまま何のひねりもない極めてドイツらしいネーミングセンスに基づいて名付けられた名前なのです。

 

補糖と味や等級の関係

これは少し細かい話になります。

以前「ワイン醸造の暗部?補糖は悪なのか | シャプタリザシオンをめぐって」という記事に書いていますが、ワインの醸造においては必要に応じてブドウを搾って得た果汁に対して糖分を補填する場合があります。

 

この作業はあくまでもアルコール度数の補填を目的としているため、発酵後には添加した糖分は一切残らないことが原則です。このためルール上、補糖の有無とワインの味には関係性は皆無です。逆に補糖したことによってワインが甘くなっている場合にはそれはまったく別のルールに基づいてその可否が判断されることになります。

 

一方で問題になりそうなのが等級との関係です。

 

等級は発酵前のジュースに含まれる糖分の量によって決まります。このため発酵前に糖分を添加した場合、結果だけを見れば等級を任意に引き上げることが出来てしまいます

ただこれを認めてしまえば当然のことながら等級に関する規定が根本からひっくり返されてしまい、この規定が全く意味をなさなくなってしまいます。このため、プレディカーツワインにおける補糖は全面的に禁止されています。

 

今回のまとめ | 等級と味は関連しない

ドイツワインで誤解されることの多い等級と味の関係を見てきました。

まだまだ日本では辛口のドイツワインを飲む機会自体が少ないと思いますので、「ドイツワイン=甘いワイン」というイメージが強くなってしまうのはある意味で仕方ないことだと思います。

 

そしてそういった甘いワインのエチケットにはカビネットやシュペートレーゼの文字が書かれている。これはもう、カビネットやシュペートレーゼは甘いワインのこと、と思っても当然とさえ言えます。

 

しかし、違います。辛口のシュペートレーゼも中辛口のカビネットもあります

今回はとにかく、

 

等級は発酵前のジュースに、味は発酵後(厳密にはボトリングする段階)のワインにつけられるものである

 

という点を憶えてお帰りください。これさえしっかり憶えておけばもうドイツワインのエチケットで迷うことはなくなります。

なお前回のまとめの一環として、

 

等級 (プレディカート)はクヴァリテーツワインだけに与えられる特権

 

と書きました。今回はこれを少しアップデートして、

 

等級 (プレディカート)は補糖されていないクヴァリテーツワインだけに与えられる特権

 

と憶えなおしていただければ完璧です。

 

 

今回は以上となります。次回は「VDPとその等級」についてです。

 



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