Member 栽培

ワインが造れなくなる日

更新日:

この記事は2018年6月2日に投稿されたものを一部加筆・修正し再掲したものです

 

2018年という年は少なくとも欧州におけるワイン業界では極めて良好な、歴史的な大豊作のヴィンテージになったと振り返られています。

確かに2018年は欧州としては考えられないほど暑く乾燥した夏が驚くほど長く続いた年でした。このためブドウは例年以上に健康的な状態のままに熟成期を迎え、そのままに高い糖度を持つに至りました。この傾向はかつてはワイン用ブドウ栽培の北限と言われたほどに気温が低く、ブドウの熟度が上がりにくいとされていたドイツでも同様でした。

収穫が終わった今になって振り返ってみれば、2018年という年は健康状態がよく糖度も高いブドウが前年比で50%以上も多く収穫できた、まさに歴史的な年となったのです。

 

しかしこの一方で、夏前には今までにない形の困難に直面してもいました。

大豊作のビックヴィンテージだったという結果だけを見ていては分からないことですが、全体的にみればブドウ栽培を中心にワイン造りは年々その困難さを増してきています。今のままいけば、現在の世界におけるワイン生産の中心となっている国々ではそう遠くない内にワインが造れなくなる日がくるのではないかと思えるほどです。

ワイン生産地域の変遷については「次代のワイン大国?ポーランドの可能性」という記事も参考にしてください。

次代のワイン大国?ポーランドの可能性

この記事は2018年5月21日に旧ブログサイトにて公開したものに一部加筆して転載しています 今日から少し前になるのですが、5月10日にOSNABRÜCKER ZEITUNGというメディア上で、『Pol ...

続きを見る

 

気候変動がもたらす困難

ここ数年においてブドウ栽培が直面している困難、その多くは世界的な気候変動を発端にしています。

冬が暖かくなったことによりブドウの発芽が早くなりました。これにより遅霜のリクスが劇的に上がり、2017年にはヨーロッパ全土で大きな被害が出ました。この年の遅霜被害は本当に大きく、場所によって収穫量が例年の半分ほどになるところもあったほどです。

 

2018年のブドウの発芽に関しては「早すぎる程に早いブドウの発芽」の記事で報告をしています。また遅霜の対策については「冷害対策」の記事も参考にしてください。

早すぎる程に早いブドウの発芽

Quelle: Weinbau Meier 2日ほど前、FB上のポストをみて驚きました。まだ3月も半ばだというのに、もうブドウの木に発芽が確認された、というのです。これは発芽が大幅に早かった去年と比較 ...

続きを見る

冷害対策

先日ブドウの芽吹きが早まることにより冷害リスクが高まる、という記事を書きましたが、この冷害への対策にはどんなものがあるかご存知でしょうか? 参考 早すぎるほどに早いブドウの発芽に関する記事はこちらから ...

続きを見る

 

ブドウを壊す氷の粒

2018年は幸運なことに遅霜による大きな被害は報告されていませんでしたが、一方で別の被害が報告されました。

 

その代表格だったのが雹による被害です。

 

数日前にフランスで局地的に雹が降りブドウ畑が甚大な被害を受けたというニュースがありました。一方でドイツでも昨日の未明にやはり雹が降り、とある地域ではブドウの80%以上が被害を受けました。(筆者注: 元の記事掲載日に基づく日付。フランスは2018年5月末、ドイツは2018年6月1日を指す)

日本人が雹と聞くとなんとなく小粒のものを想像しますが、最近は大粒化しており、場合によっては小石大のものや子供の握りこぶしほどもあるような氷の塊が降ってくることさえあるそうです。

しかも気象関連の研究機関からは雹は今後更に大型に、そして頻繁になっていく傾向がみられると報告されているのです。

 

大型の物ほど雹自体の自重が増えますので降ってくるときの速度は速くなり、その結果その氷に当たったブドウの受ける被害は大きくなります。冷害はまだ対策も取れますが、雹は対策の取りようがありません。

ブドウ栽培家にできることは雹被害を補償する保険に入って少しでも金銭的被害を抑えることくらいなのです。

 

畑で確認され始めた病気

雹の被害がなかった地域でもやはり昨日くらいからペロノスフォラ (Peronospora, 英: downy mildew, 日: べと病)が確認され始めています。ペロノスフォラの発芽条件は大雑把に言うと、



このコンテンツの続きを閲覧するにはログインが必要です。

会員の方はログインして下さいログイン
会員登録はこちらから

ワインをより深く学ぶことを目的としたサークルを運営しています。サークルメンバーの方はサークル内で行われている各種テーマでのディスカッションにご参加いただけるほか、筆者への個別の質問や当サイトNagi's wineworldに掲載された全ての記事をご覧いただけます。
ご興味ある方はお気軽にご参加ください。

▼サークルへの参加はこちらから
https://note.com/nagiswine/circle




あなたへのおすすめ記事

1

先日、フランスでナチュラルワイン、いわゆる自然派ワインとかナチュールと呼ばれている種類のワインが具体的にどういうものであるべきかの定義が公式に決まった、という報道がありました。 https://www ...

2

筆者がTwitterで時々、思い出したようにPostしてはそのたびに(筆者のアカウントとしては)軽くバズったような状態になるキラーワードがあります。それが「ナチュラルワイン」です。   最近 ...

3

2018年2月に行われたMUNDUS VINIの春の国際ワインコンクールには世界44カ国から6,770のワインが出品され、大賞33品、金賞1,102品、銀賞1,575品の合計2,702品がメダルを獲得 ...

-Member, 栽培
-, , , ,

© 2020 Nagi's Wineworld