仕事の流儀

雨降りがもたらすもの

05/14/2018

今年のドイツでは降雨量が例年と比較してもかなり少ないのですが、昨日、今日と雷を伴った断続的な雨が続いています。日本で言うゲリラ豪雨ほどの勢いがあるわけではないのですが、それでも二日間の合計ではそれなりの降水量にはなっているようです。

雨のもたらすもの

ぶどうに限らず、植物の成長に雨は欠かせません。雨が降り、それが土壌に吸収されることで初めて植物は根から水分を吸収し、成長を行っていくことができるようになります。

これが樹齢を重ねた樹であれば、根の到達深度がそれなりになっているため水分を吸収できる物理的な機会が多く、多少の雨不足でも渇水によるストレスは相対的に少なく済みますが、現在筆者がかかわっているような、新しく作られたばかり、植栽されたばかりのぶどうの苗木にとっては少しの雨不足も大きな問題になります。

このため、今回の雨降りはこのぶどうの苗木たちにとってはまさに恵みの雨になったことだと思います。

雨がもたらす困ったこと

ただこの一方で、今回の雨を単純に喜べない部分もあります。それは、今回の雨が直接、間接の両方意味で病気のトリガーになる可能性があるためです。

戦いが始まったぶどう畑”という記事にも書きましたが、今、ぶどう畑では最初の薬剤散布が行われています。

畑によってはすでに終わっているところもありますが、場所によってはまさに撒いたばかり、というところもあるのが現実です。今回の雨は、これらの、撒かれたばかりの薬剤を洗い流してしまった可能性があるのです。仮に散布した薬剤が定着する前に洗い流されてしまっていた場合には、当然ですが、その薬剤を撒いたことによる効果を期待することはできません。つまり、ぶどう栽培者はもう一度、散布をし直さなければならなくなります。

また、雨が降ると当然ですが湿度が上がりますので、カビ系や菌系の病気の発生リスクが一気に高まります。

特に一部の病気は地面で越冬しているものもあるため、これらのものが降雨によって活発化し、ぶどうへの感染を始める可能性もあります。このような意味では、雨の後はぶどう栽培的な意味でのリスクが相当高まるのです。

雨は植物にとってなくてはならないものですし、栽培家にとっては望ましいものです。ただその一方で、雨が運ぶリスクもそれなりにあり、悩ましいばかりです。

畑に関わる身としては、今回の雨が病気を運んで来ていないことを望むばかりです

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Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

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