Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

コラム

2021/4/25

安ワインとコスパワイン | 造り手の視点から

今の世の中、美味しいものを食べたり飲んだりしたいけれどあまりに高いのはちょっと困る。そう思う方は少なくないと思います。 お手頃なお値段で美味しいものに出会えたなら嬉しいし、それが安いと感じられるものであればなお嬉しい。生活に直結するだけにそのものの価格はそうそう無視できない要素です。 ワインにしてもやはりそう。 世の中で有名なワインはぜひ飲んでみたいと思わせてくれるものの、その価格からとても手が出せないボトルが多くあります。しかもそんな印象が先入観となってワインは高いもの、と思われている場合も少なくありま ...

Limited 醸造

2024/1/9

白ブドウとの混醸がもたらす赤ワインの色への影響

ワイン醸造の手法の1つに混醸 (co-fermentation) と呼ばれるものがあります。 混醸とは2種類、もしくはそれ以上の数の種類の異なるブドウ品種を同じ容器の中でまとめて醗酵させる醸造方法です。醗酵が終わったワイン同士をブレンドする手法に対して醗酵前にブレンドしてしまうことが特徴です。 なお、フィールドブレンドは同じ畑の中に複数の品種のブドウを取り混ぜて栽培する、混植をさします。フィールドブレンドの畑で収穫されたブドウの醗酵は必ず混醸になりますが、混醸自体は別々の畑から収穫された異なる品種のブドウ ...

ブドウの病気 栽培

2021/8/21

ぶどう栽培と牛乳による病気予防 | ブドウ畑のウドンコ病対策

ブドウが罹る病気はいろいろありますが、その中でも世界中で発生しており、ブドウ栽培における三大疾病ともいえる病気があります。 です。 これらの病気はブドウの品質や収穫量に大きな影響を及ぼすやっかいな病気として知られています。そのため対策方法もいろいろ開発されており、従来型の薬剤による防除だけではなく、ブドウ品種の改良によっても進められています。 増え続けるブドウ品種 | PIWIというカテゴリー 栽培技術 | ブドウ栽培における病気への対策 - 防除の方法 三大疾病のうち灰色かび病だけは他の2つと少し毛色が ...

徹底解説 醗酵

2021/4/4

徹底解説 | ワイン酵母のキホンのキ

ワインを造るために欠かすことのできないモノが2つあります。 1つは原料となるブドウ。そしてもう1つが、酵母です。 酵母はワインやビール、日本酒といった醸造酒を造る以外にもパンの記事を醗酵させる時にも使いますので誰にとっても比較的身近な存在です。イースト (yeast) とも呼びます。 一方で、「酵母ってなに?説明して」といわれたときに皆さんは迷うことなく説明できるでしょうか。 今回は酵母の基本をおさらいします。 酵母とはなにか 酵母は一般的に「菌」と呼ぶ種類の微生物の一種です。 微生物学的にいえば細胞壁を ...

ブログ

2021/3/31

CLSを改善させる | アフィンガーでの対策例

アフィンガーを使っているような人はブログの収益化を目指している人が多いのではないだろうか。 そしてそうした人たちはきっと自分のサイトのSEOについても日々、頭を悩ませ対策を講じているのだろう。そうした人たちにはCLS (Cumulative Layout Shift) という単語には馴染みがあると思う。 今回は表のサイトのCLS評価があまりに分かるかったので改善をすることにした顛末を記録として残しておくことにする。アフィンガー、特にアフィンガー6 「Action」を使っていてCLSの評価が低い人は参考にし ...

ランキング

2022/1/31

ドイツワイン トップ100 | 2020年版

少し古い話になりますが、昨年、2020年の11月末に Jamessuckling.com にて"TOP 100 WINES OF GERMANY 2020" と題した記事が公表されました。 https://www.jamessuckling.com/wine-tasting-reports/top-100-wines-germany-2020/ 記事のタイトルは2020となっていますが、内容は2019年のワインのテイスティングを中心としたものです。 テイスティングノートは上記サイト内の有料部分に掲載されて ...

販売戦略

2022/4/11

ワインのコスト構造と利益の実態を知る

製品を作っているメーカーであれば自分たちが作っている製品の製造コストは誰もが正確に認識しているもの、と思われるかもしれません。 さらに各商品の価格はそうした製造コストに基づいて決めれているものだと思われている可能性は大きいと思います。 実はワインに限っては必ずしもそうではない、と言ったら驚かれるでしょうか。 正直なところ、ワイナリーに所属してワインを造る責任者をしていても「製品1本あたりのコスト」はほぼ把握できていません。 ヴィンテージ全体の生産コストはまだ把握できますが、販売のためのコストを見込む段にな ...

ブログ

2021/3/18

WordPressのカスタムフィールドを使ってデータベースを実現する方法

手元のデータ、気が付くと保存場所があちこちに散逸してしまって保存したはずなのにどこにいったのか分からない、ということがよくある。一部のものはGoogleスプレッドシートなどのクラウドサービスを利用して経過を記録しているものの、場合によってはあちこちのシートを行き来する必要が出て非常に見にくい。 そこで、もっと手軽に各データを関連付けたうえで必要な視点からまとめてデータを確認できる方法を考えていたところ、案外、Wordpressで構築するのが手間も少なくかつ目的に沿ったものが作れるのではないかという気になっ ...

ワイン 醸造

2021/3/29

ろ過していれば大丈夫? | 清澄剤の残留とヴィーガンワイン

ワインといえばブドウから造られているので、菜食主義の方であっても安心して飲めるもの。 この考え方は必ずしも正しくはないことをご存じの方は多いと思います。 なぜ正しくないのか。 ワインの原料はブドウであっても、ワインを造る工程の中で動物性由来の材料を利用している可能性があるからです。動物由来の材料の多くは"清澄剤”と呼ばれる種類のものに使われており、その代表例が卵白であり、カゼインです。 こうした材料はヴィーガンにとっての問題としてだけではなく、より深刻なアレルギー物質としてたびたび取り沙汰されています。 ...

Amphora Historically Archaeology  - Makalu / Pixabay

品質管理 醸造

2022/1/31

ワインと伝統と容器の関係 | クヴェヴリやボックスボイテルの意味を考える

伝統的にワイン造りの現場で使われ続けている容器。冷静に考えてみるとなぜ使っているのか分からない、というケースもあるのではないでしょうか。 なぜクヴェヴリを使うのか。ボックスボイテルの何が普通のボトルと比較して優れているのか。こうした問いに即答できるでしょうか。 この問いはとても多角的なもので、一面からだけ判断することにどれほどの意味があるのかは疑問です。ですが、ワイン造りの現場でこうした容器を使うかどうかを判断するためには、少なくとも醸造の面からその意味を考えておくことには意味があります。 今回はこうした ...