Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。ドイツのワイナリーで醸造責任者を歴任。栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーの醸造家兼栽培醸造コンサルタントとして活動中

ワイン ワインあるある

2021/6/20

ワイングラスとスワリング | ワインあるある

ワインが注がれたワイングラスをクルクル回す、スワリング。ワインのある場所ではとてもよく目にする光景です。人によってはこれでもか、というくらいにクルクル、クルクルしています。 このスワリング、やった方がいいという方とやらない方がいいという方がいらっしゃいますし、やるにしても最初はダメ、という方もいらっしゃいます。とあるSNS上で時々、思い出したように話題になる程度にはいろいろな意見のある行為です。 スワリングをする、もしくはしない理由はいろいろと耳にしますが、科学的な根拠の話になると話題の盛り上がりの割には ...

ブドウの病気 栽培

2021/8/21

ブドウの日焼け対策 | カオリンは救世主になり得るか

ブドウの芽吹きから2か月弱が過ぎ、畑では新梢が日に日に長くなってきています。これにあわせるように、1日の最高気温が高くなり、すでに夏を思わせるような気温になる日も出てきています。 この6月頭には最高気温が28℃にもなる日が数日続き、今夏の厳しい暑さを早くも予感させています。こうなると心配させるのが、ブドウの日焼けです。 ぶどうの日焼け https://nagiswine.com/winegrape-01/ 特にここ数年は気候変動の影響を受け、ドイツでも夏が非常に暑くなっています。もともとドイツはブドウ栽培 ...

コラム

2021/5/30

地理的表示とワインの価値

ワインの出身地とそこに由来する特徴を保証する地理的表示。GI (Geographical Indication) とも呼ばれます。 国や地域、産地で細分化されているので覚える対象が多く、すべてをきちんと把握しようとすると大変です。 しかし一度覚えてしまえばワイン選びにも役に立つ場面が多い知識です。資格の受験を考えたことのない方でも興味を持って調べた経験をお持ちの方は少なくはないのではないでしょうか。 地理的表示の有無は数多くのワインが並んだ棚の中から自分の好みに近いタイプのワインを選び出すための手段の1つ ...

ワイン

2023/12/7

ワインと酸 | ワインの有機酸を考える3つの視点

ワインには欠かすことのできない要素があります。 アルコール? お酒ですからアルコールは必須です。これがないとせっかくお酒を飲んでいるのに酔えません。 タンニン? 赤ワインには適度の渋みが欲しいですね。赤ワインの色味にも影響しています。フェノール、とまとめて表現する場合もあります。 甘味? デザートワインのように深い甘さを持つワインも絶品ですが、オフドライのほのかな甘みも飲みやすさを増してくれます。ちなみにワインの関係者はよくこの甘味を指して、残糖や残糖分と表現します。 こうした成分はもちろん大事です。そし ...

醸造

2021/5/16

古くて新しい容器、アンフォラを知る3つの視点

アンフォラ。 ワイン界隈で近年、話題になることの多い単語です。何となく耳にしたことがある、という方も多いのではないでしょうか。 アンフォラ (amphora、複数形は amphorae もしくは amphoras [Wikipediaより]) は簡単に言えば取っ手のついた陶器の壷です。古くは紀元前15世紀ごろのレバノンですでに使われていたそうで、ワインに限らず様々なものを入れる容器として使われていました。 形状は時代や地域によって様々あるようですが、多くは丸い壷の首の部分を長くすぼませて、そこの両端に取っ ...

品質管理

2021/5/10

3つの視点から捉える振動の影響 | 振動はワインをどう変えるのか

ボトルに入れられワイナリーから出荷されたワインはいろいろな面から影響を受け、その味を変えていきます。この味が変化していく状況を熟成や劣化と表現しています。ワインの熟成や劣化と聞いて思いつくのは、多くの場合、酸化や熱劣化ではないでしょうか。 ワインが影響を受ける要素として挙げられるのが以下の5つです。 これらの中でも温度による影響がもっとも大きいといわれています。 しかし酸素との接触が酸化を引き起こし時としてワインの味も香りもダメにしてしまうことは周知の事実ですし、湿度の変化はコルクの乾燥による液漏れやカビ ...

Building Tanks Wine Stainless Steel

コラム

2021/5/2

ワインを原料とする安ワイン | バルクワインの世界

ワインは高いもの、と思われている方は少なくないと思います。しかし、それは極一部の限られたボトルの話。ワインは極端にコモディティ化が進んだ商品セグメントで、価格競争は非常に厳しくなっています。しかも競争相手は世界中から出てきます。 一方でこうした競争の恩恵で市場には低価格のワインが数多く並び、日々の食卓を彩る一役を買っています。 この記事を読んでくださっている皆さんもスーパーで数百円で販売されているワインを目にしたことがあるのではないでしょうか。 こうしたワインの多くにはバルクワインと呼ばれるワインが関わっ ...

コラム

2021/4/25

安ワインとコスパワイン | 造り手の視点から

今の世の中、美味しいものを食べたり飲んだりしたいけれどあまりに高いのはちょっと困る。そう思う方は少なくないと思います。 お手頃なお値段で美味しいものに出会えたなら嬉しいし、それが安いと感じられるものであればなお嬉しい。生活に直結するだけにそのものの価格はそうそう無視できない要素です。 ワインにしてもやはりそう。 世の中で有名なワインはぜひ飲んでみたいと思わせてくれるものの、その価格からとても手が出せないボトルが多くあります。しかもそんな印象が先入観となってワインは高いもの、と思われている場合も少なくありま ...

Limited 醸造

2024/1/9

白ブドウとの混醸がもたらす赤ワインの色への影響

ワイン醸造の手法の1つに混醸 (co-fermentation) と呼ばれるものがあります。 混醸とは2種類、もしくはそれ以上の数の種類の異なるブドウ品種を同じ容器の中でまとめて醗酵させる醸造方法です。醗酵が終わったワイン同士をブレンドする手法に対して醗酵前にブレンドしてしまうことが特徴です。 なお、フィールドブレンドは同じ畑の中に複数の品種のブドウを取り混ぜて栽培する、混植をさします。フィールドブレンドの畑で収穫されたブドウの醗酵は必ず混醸になりますが、混醸自体は別々の畑から収穫された異なる品種のブドウ ...

ブドウの病気 栽培

2021/8/21

ぶどう栽培と牛乳による病気予防 | ブドウ畑のウドンコ病対策

ブドウが罹る病気はいろいろありますが、その中でも世界中で発生しており、ブドウ栽培における三大疾病ともいえる病気があります。 です。 これらの病気はブドウの品質や収穫量に大きな影響を及ぼすやっかいな病気として知られています。そのため対策方法もいろいろ開発されており、従来型の薬剤による防除だけではなく、ブドウ品種の改良によっても進められています。 増え続けるブドウ品種 | PIWIというカテゴリー 栽培技術 | ブドウ栽培における病気への対策 - 防除の方法 三大疾病のうち灰色かび病だけは他の2つと少し毛色が ...