Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。ドイツのワイナリーで醸造責任者を歴任。栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーの醸造家兼栽培醸造コンサルタントとして活動中

業務日誌

2023/8/7

リアル倉庫番な一日

[circlecard] 効率はパズルのように 「倉庫番」といってどれだけの方に分かっていただけるかはわからないけれど、要は週明けに予定されているボトリングのためにほぼ一日中フォークリフトに乗って倉庫の整理をした一日だった、ということ。 現在勤めているワイナリーではボトリングのための充填設備を自分たちの建屋内には常備しておらず、ボトリングのタイミングに合わせて外部から運び込んでいる。 規模の小さなワイナリーではこのような場合にワイナリーの外に充填設備を設置して作業を行うような場所もあるのだが、それだと天候 ...

業務日誌

2021/3/30

日がな一日木を切った日

[circlecard] 畑のエイリアンを駆逐する どうにか所有するすべての畑で壊れた柱の入れ替えや切れたアンカーやワイヤーの修理が終わり、仕事は次のステップへと進むことになった。 とはいっても剪定した枝の誘引やワイヤーの引き下ろし作業は基本的に東欧方面からの季節労働者の方にお願いすることになったため、我々はまた別の作業に取り掛かることに。 この時期にやる作業としてはいくつかあるものの、今日はイレギュラーともいえる畑のエイリアン退治をすることになった。そう、どこから出てきたのかわからないけれど、畑のあちこ ...

不快臭 徹底解説

2022/7/7

ワインの天敵、硫化臭の正体と取り除き方

ワインの醸造をしていると、どんなに気をつけていても何らかのエラーが発生してしまうことがあります。 そんなエラーの中でも特に発生頻度の高いものの一つが、硫化臭です。 硫化臭はいわゆる腐ったタマゴの匂いであり、臭いの種類としてとても目立つものでもあります。ボトルを開けたときにこの臭いが出てしまうとそれだけでワインに対するイメージを低下させる可能性の高いものでもありますので、ワインを造る側としては絶対に避けたいオフフレーバーの一つです。 そんなワイン造りにおいて厄介な硫化臭ですが、予防する手段、発生してしまって ...

ランキング

2021/3/30

ドイツのベストワイナリー

規模の大きなところから小さなところまで、星の数ほどワイナリーが存在するドイツ。その多くは本当に小規模な家族経営によるもので、すべてを網羅することはほぼ不可能です。 一方でそんな数多あるワイナリーの中でも有名どころというものはやはり固定する傾向にあり、誰による、どんな評価やランキングを紐解いてみても必ず出てくる名前、というものも存在しています。 今回はドイツでも有名なワインガイドの一つが掲載しているドイツワイナリーのベストランキングをご紹介します。 今後、ドイツワインを選ぶ際の参考にしてみてください。 ドイ ...

仕事の流儀

2021/3/30

春を目前にしたブドウ畑の大改修 | ワイナリーの仕事

ワイナリーの仕事といえば、一番に思いつくのはブドウの収穫だという人も多いと思います。 ブドウの収穫はワイン造りの一つのハイライト。これはもう別格と言っていいでしょう。 確かにワイン用ブドウの栽培において最大の目玉はブドウの収穫ですが、これ以外の普段は目立たない、あまり知られていない仕事の数々も決して軽んじることのできない仕事です。 今回は、春を間近に控えたこの時期にワイナリーではどんな仕事をしていの?というかなりニッチな疑問にお答えしたいと思います。 [circlecard] 冬の山場は剪定作業 ワイナリ ...

ブドウの品種と病気 赤ワイン用ブドウ品種

2019/3/18

MERLOT - メルロー

    概要 フランスのボルドーを原産とする早熟系の赤ワイン用ブドウ品種。14、15世紀にはすでに存在していたとされる、カベルネ・フラン (Cabernet Franc) とマグダレーナ・ノワール・デ・シャラント (Magdeleine Noire des Charentes) の交配品種。 世界中において栽培面積が増加を続けており、2015年には約270,000ヘクタールに及ぶなどカベルネ・ソーヴィニヨンについで第2位の生産量を誇っている。 カベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨン ...

栽培

2021/3/30

ブドウの根に差はあるのか | 自根へのこだわり

Quelle: http://www.waxandgrafts.com/wax-and-grafting-process ワイン用ブドウの栽培家にはブドウの「根」に異様なまでのこだわりを見せる人が相当数いらっしゃいます。 彼らの見ているものは、「自根」のブドウです。 ワインの業界にいると相応の頻度で出会うのが、この「自根」を特別視する風潮です。誤解を恐れずに言えば、ワインを勉強している方であればあるほどこの風潮に流される傾向が強いようにも思えます。 では、この「自根」であることは本当に意味があるのでしょう ...

徹底解説 栽培

2025/7/31

徹底解説 | フィロキセラ

Phylloxera (Viteus vitifoliae). Woodcut engraving from the book "Gartenbau-Lexikon (Encyclopedia of Horticulture)" by Th. Rümpler. Published by Paul Parey, Berlin (1882) 2019年3月5日、オーストラリアのヴィクトリア州ヤラ・ヴァレーのブドウ畑で新たにフィロキセラによる被害が発生した、というニュースが流れました。 フィロキセラといえばブド ...

ワイン ワインあるある 二酸化硫黄

2025/7/29

酸化防止剤が頭痛の原因というのは本当か | ワインあるある

最近は耳にすることが幾分か減ってきている気もしますが、ワインに含まれる酸化防止剤、つまり亜硫酸や亜硫酸塩と呼ばれる添加物がワインを飲んだ際に生じる頭痛の原因だとする言説があります。 まことしやかに囁かれ未だに信じている人も多いであろうこの説ですが、本当に正しいのでしょうか? 今回はワインを飲む際に生じる頭痛の原因についてまとめるのと併せて、それらと酸化防止剤との関係についてまとめます。 そもそも酸化防止剤とはなんなのか まずはおさらいです。 ワインに添加される酸化防止剤とは一般的には二酸化硫黄と呼ばれる化 ...

栽培

2021/3/30

ワインが造れなくなる日

2018年という年は少なくとも欧州におけるワイン業界では極めて良好な、歴史的な大豊作のヴィンテージになったと振り返られています。 確かに2018年は欧州としては考えられないほど暑く乾燥した夏が驚くほど長く続いた年でした。このためブドウは例年以上に健康的な状態のままに熟成期を迎え、そのままに高い糖度を持つに至りました。この傾向はかつてはワイン用ブドウ栽培の北限と言われたほどに気温が低く、ブドウの熟度が上がりにくいとされていたドイツでも同様でした。 収穫が終わった今になって振り返ってみれば、2018年という年 ...