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Nagi
ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。ドイツのワイナリーで醸造責任者を歴任。栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーの醸造家兼栽培醸造コンサルタントとして活動中
最近は耳にすることが幾分か減ってきている気もしますが、ワインに含まれる酸化防止剤、つまり亜硫酸や亜硫酸塩と呼ばれる添加物がワインを飲んだ際に生じる頭痛の原因だとする言説があります。 まことしやかに囁かれ未だに信じている人も多いであろうこの説ですが、本当に正しいのでしょうか? 今回はワインを飲む際に生じる頭痛の原因についてまとめるのと併せて、それらと酸化防止剤との関係についてまとめます。 そもそも酸化防止剤とはなんなのか まずはおさらいです。 ワインに添加される酸化防止剤とは一般的には二酸化硫黄と呼ばれる化 ...
2018年という年は少なくとも欧州におけるワイン業界では極めて良好な、歴史的な大豊作のヴィンテージになったと振り返られています。 確かに2018年は欧州としては考えられないほど暑く乾燥した夏が驚くほど長く続いた年でした。このためブドウは例年以上に健康的な状態のままに熟成期を迎え、そのままに高い糖度を持つに至りました。この傾向はかつてはワイン用ブドウ栽培の北限と言われたほどに気温が低く、ブドウの熟度が上がりにくいとされていたドイツでも同様でした。 収穫が終わった今になって振り返ってみれば、2018年という年 ...
ワインの醸造を行っていく場合に、ブドウを絞ったジュースや発酵後もしくは発酵中のワインの温度を意図的に上げたり下げたりすることがあります。 ジュースやワインの温度を下げるケースに関しては、「発酵途中の温度管理 - 液温を下げる」という記事でまとめました。 今回はこのケースとは逆のケース、温度を上げる場合についてそのタイミングと設定する温度について解説します。 発酵前に液温を上げる手法はもちろん白ワインの醸造においても意味を持つものですが、特に赤ワインの醸造において大きな意味を持ちます。中でもブドウの健康状態 ...
ワイン醸造における品質管理を考える際にもっとも基本となることは亜硫酸の添加です。 この亜硫酸、亜硫酸塩、酸化防止剤などともラベル上で記載されています。亜硫酸と亜硫酸塩とでは厳密には異なる物質を指しているのですが、基本的には二酸化硫黄 (Sulfur Dioxide: SO2) と表記される物質を意味しています。 筆者が日々の仕事をしていく上ではSO2の表現が最も一般的であり、慣れているためこの記事での表記は"SO2 (亜硫酸) "に統一しています。(純粋な物質として二酸化硫黄 (SO2) を指し ...
とある自然派ワイン愛好家の方が書いていた文章で興味深い内容のものを目にしました。 その記事は自然派微発泡ワインである「ペティアン・ナチュール」を説明するものです。その記事で書かれていたことをざっくりと要約すると、 という内容が書かれていました。 なお念の為修正をしておくと、ここに書かれている“瓶内で二次発酵が生じる”という記載は誤りで、正確には一次発酵が瓶詰め後も継続される、です。 このような記事を読むと、「自然派」という言葉が最近のワイン業界における一つの免罪符になりつつあるように感じます。 泡立ってい ...
シャンパンに代表されるスパークリングワイン。パーティーなど華やかなシーンでは欠かせない存在です。 この炭酸ガスを含んだ発泡性のワイン、一体どうやって造っているのか疑問に思ったことはないでしょうか? 造り方の説明はよく見かけますが、具体的な工程の流れをおさえて解説している日本語の記事は意外に少ないようです。具体的な造り方を知っているとそれぞれの方法で造られたスパークリングワインの持つ特徴も分かりやすくなります。 そこでこの記事ではそれぞれの製造手法の工程をおさえつつ、そこから生まれる特徴や違いを解説していき ...
新たな2019年の年が明けて3週間、多くのワイナリーが半分以上も諦めながらそれでも待ちに待っていた情報が流れました。気温が一気に下がったのです。 天気予報が伝えたドイツ各地の最低気温は軒並みマイナス7度を下回り、場所によってはマイナス10度にまでなりました。アイスワイン用のブドウを収穫することが許された瞬間でした。 [circlecard] 一気に下がった外気温 この線グラフはラインガウ (Rheingau) 地方に数あるブドウ産地のなかでも、有名なワイナリーが多く集まっているラインガウの中心地の一つとも ...
異様なまでに暑く、乾燥した夏を経験した2018年のドイツ。そんな気候から一転して湿度の高い冬に、多くのワインメーカーが頭を抱えています。 最近は世界的にも辛口のワインが存在感を増してきているとは言っても、外から見たらまだまだ甘口ワインの印象が強く残るドイツのワイン。そんなドイツの甘口ワインの中でも毎年その生産の可能性が話題になるのが、アイスワイン(Eiswein)です。 アイスワインは凍らせるものではなく、凍ったもの そもそもこのアイスワインというワイン、”アイス”という名前が付いているがために凍らせるワ ...
「ワイナリーで仕事をする上で、欠かすことのできない道具を一つあげるとしたらそれは何でしょうか?」 もしも人からこんな内容の質問を受けたらまず間違いなく それはトラクターです と即答する自信があります。 ワインを造る上で必須の道具というものは実際のところ無数にあります。タンク、ホース、ポンプ、ハサミ、バケツといったまさに”必須!”というものから、フィルター、樽、長靴、手袋、防寒具などのようなあるに越したことはない、というものまでもうそれは枚挙にいとまがありません。 なのになぜ、トラクターこそが必須!と言って ...
マグナムボトルというものをご存知でしょうか? 主にワイン用に使われるボトルには様々な種類があり、それらは主に内容量によって区別されています。”マグナムボトル”とはまさにこの「内容量」に基づく区分の一つで、通常のワインボトルの2倍の大きさをもつボトルのことを意味しています。ワイン用に使用される最も一般的なボトルのサイズは750mlですので、マグナムボトルはこの2倍、つまり1500mlの内容量を持つボトルのことになります。 一般的にマグナムボトルに詰められたワインは、通常サイズのボトルに詰められた同一のワイン ...