スパークリングワイン 徹底解説

徹底解説 | スパークリングワインの造り方

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ご注意

各製造方法において記載している熟成などの期間および各種条件は特に断りがない場合、ドイツのワイン法に基づいた日数を記載しています

 

スパークリングワインってどうやって造っているんだろう、という疑問に対してきちんと工程をおさえて解説している日本語の記事が意外にないようだったのでこの記事でその疑問に答えたいと思います。

なおざっくりとした造り方の解説は「スパークリングワインのいろいろ」という記事で、ドイツにおけるスパークリングワインの味に関する規定については「スパークリングワインの”トロッケン”は辛口か?」という記事でそれぞれ取り上げていますので、そちらも参考にしてみてください。

スパークリングワインのいろいろ

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スパークリングワインの"トロッケン"は辛口か?

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製法別のスパークリングワインの種類

ここではスパークリングワイン自体がどういうものかについては触れませんが、基本的にスパークリングワインはその”泡”をどういう方法で作っているかによって2つの種類に大別できます。

 

  1. 炭酸ガスを充填することによって”泡”をもたせる方法: セッコ (Secco)、パールワイン (Perlwein) など
  2. 「発酵」によって”泡”をもたせる方法
    1. タンク内二次発酵方式: シャオムワイン (Schaumwein)、ゼクト (Sekt) など
    2. 瓶内二次発酵方式: シャンパーニュ (シャンパン)、ゼクトなど
      1. 完全瓶内二次発酵方式
      2. タンク利用方式 (トランスヴァジール方式)

 

炭酸ガスを元になるスティルワインに充填することでスパークリングワインとする方法に関してはこれ以上の分類はありませんが、発酵過程を通すことで炭酸ガスを発生させる方法に関してはさらに「タンク内二次発酵方式」と「瓶内二次発酵方式」に区分できます。

 

 

なお日本で話題になることが多い微発泡性のワインに「ペティアン (Petillant)」というものがあります。これはブドウ果汁をアルコール発酵 (一次発酵) させている最中に発酵の完了を待たずに瓶詰めし、一次発酵で生じた炭酸ガスを残すことで微発泡させているものになります。発泡性ワインという意味ではこれもスパークリングワインではありますが、この記事では別物として扱います。

アルコール発酵 (一次発酵) 時に生じる炭酸ガスの量に関しては、「発酵について語ろう」の記事で詳細を書いていますので参考にしてください。

発酵について語ろう

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微発泡性のものが多い炭酸ガス注入法

製造工程

スティルワイン → 炭酸ガスを注入 → 瓶詰め → 完成

 

スパークリングワインの製造方法として最も簡単な方法がこの炭酸ガス充填法になります。

元になるスティルワインに対して単純に炭酸ガスを注入するだけの製造方法です。この方法のメリットは、発酵の工程を介さないので元になるスティルワインの味や香りといったキャラクターを一切変えることなくスパークリングワインにすることができることです。

また大量生産も非常に容易ですし、品質管理的にも問題が生じにくい方法です。一方でデメリットとしては圧力タンク等の設備が必要となること、イメージ的にこの方法で製造されたスパークリングワインは「安いもの」と取られることが多いため商品単価が上げにくいことなどです。

 

ドイツでセッコ (Secco) とかパールワイン (Perlwein)  とか呼ばれるカテゴリーのスパークリングワインは大概がこの製法によって製造されています。また、この製法によるスパークリングワインは微発泡性のものが多いことが特徴です。これはドイツ国内に限って言えば、炭酸ガスの充填によって製造することが許されるスパークリングワインの気圧上限が2.5barまでであるためです。

日本国内で市販されている炭酸ジュースの気圧は4bar程度のものが多いそうです。このことから2.5barという気圧がどのくらい弱いものなのかご想像いただけるかと思います。

 

なおこの方法にて製造されたスパークリングワインでは、エチケットに炭酸ガス充填法によるものであることを明記することが求められます。

 

メリット

  • スティルワインのキャラクターを完全に活かしたスパークリングワインが造れる
  • アルコール度数に変化が生じない
  • 製造および品質管理が容易
  • 大量生産に向いている

 

デメリット

  • 専用の製造設備が必要
  • 安価なイメージがついて回る
  • 微発泡性のものしか製造できない (ドイツのワイン法による規制)

 

品質の均一化に向いたタンク内二次発酵方式

製造工程

スティルワイン → ショ糖 (サッカロース: saccharose) と酵母を添加  → タンク内で二次発酵を完了 → 酵母上で90日以上熟成 → 澱引き → 味の調整 → 瓶詰め → 完成

※ 全体の製造期間が酵母添加の日から数えて6ヶ月以上であること

 

タンク内二次発酵方式の最大のメリットは一度に大量のワインを扱うことができることと、その全量を基本的にばらつきなく品質管理することができることです。

一方でこの手法は泡の発生に二次発酵を必要としますので、原料となるスティルワインに発酵の役割を担う酵母と、その酵母のエネルギーとなるサッカロースを添加する必要があります。この酵母による発酵 (二次発酵) を行うことによって原料となるスティルワインになかったニュアンスが追加されることに加え、90日以上は酵母と接触する期間をもたなければならないという規定により、出来上がるスパークリングワインにはある程度、酵母によるニュアンスも加わります。また、アルコール度数が数%程度高くなります

 

なおスティルワインに添加されるサッカロースの量は添加後のワイン1リットルあたりの残糖量が20gから24g程度になるように調整されます。これは二次発酵後の残糖量を加味しているのではなく、二次発酵中に生じる炭酸ガスの量に基づいています。ベースワイン内にこの程度の残糖があると、その全量が二次発酵に使用されることで完成したスパークリングワインの瓶内気圧 (もしくはタンク内気圧) が5~6 barとなります。

 

メリット

  • 発酵の個体差が生じない
  • 製造および品質管理が容易
  • 大量生産に向いている

 

デメリット

  • 専用の製造設備が必要

 

その他

  • ベースとなるスティルワインから香り、味わいが多少変わる
  • アルコール度数が高くなる

 

伝統の製法、完全瓶内二次発酵方式

「瓶内二次発酵方式」と言われる製造方式の中でも、伝統的な方法であり、シャンパーニュ方式にも採用されているのがこの「完全瓶内二次発酵方式」です。この名称自体は次の「トランスヴァジール (Transvasier)  方式」と明確に区別するために便宜上つけたものです。一般的に、「瓶内二次発酵方式」という場合にはこの製法を指しています。

また、この製法は「トラディショナル方式」と呼ばれることもあります。

製造工程

スティルワイン → ショ糖 (サッカロース: saccharose) と酵母を添加  → 瓶詰め → 瓶内で二次発酵を完了 → 酵母上で9ヶ月以上熟成 (※) → 澱引き (ルミアージュ&デゴルジュマン) → 味の調整 (ドザージュ) → 打栓および撹拌 (ポワネッタージュ) → 完成

※ シャンパーニュ方式では澱熟成の期間は最低12ヶ月、酵母の添加から数えて最低15ヶ月かけることが義務付けられている

 

瓶内二次発酵方式の場合、原料となるスティルワインにサッカロースと酵母を添加してベースワインを造るところまではタンク内二次発酵方式と違いはありません。一方で、こちらの製法ではベースワインは最初から流通用のボトルに瓶詰めされ、その瓶内で二次発酵を行います。

よく勘違いされますが、この時点でベースワインが充填されたボトルはコルクではなく、ボリエチレン製の内栓がついた王冠で打栓がされ、寝かした状態で保管されます。スパークリングワインの製造でよくイメージされる瓶を斜めに傾けて専用の台に差し込む光景は発酵後のルミアージュ作業時のものです。

 

発酵後、規定の期間熟成を経たスパークリングワインは瓶内に溜まった澱を除去する作業が行われます。

この澱を瓶の口に集める作業をルミアージュ、瓶の口先を-27度の溶液に浸けて澱を凍らせた状態で栓を抜くことで澱の塊を除去する作業をデゴルジュマンといいます。

ルミアージュは21日 (ドイツ) から42日 (シャンパーニュ) かけて45度から90度左右に回転させながら徐々に瓶の角度をつけていきます。こうすることで澱をゆっくりと瓶の口先に集めることができるのです。なお最近はルミアージュもデゴルジュマンも多くの場合機械化され、1週間程度まで期間の短縮ができるようになっています。

この大幅な時間の短縮は週7日、1日24時間休まずに、かつ一度に大量に作業ができるようになったことによるものです。この機械化による品質の変化はないとされていますので、ルミアージュに21日なり42日なりかけるというのは品質的な意味よりも、1日に可能な作業量に起因するものと考えられます。

 

デゴルジュマンされたボトルには「門出のリキュール (テラリキュール)」と呼ばれる、ワインにサッカロース (多くの場合はサトウキビ糖) を溶かしたリキュールを添加します。これをドザージュと呼びます。

二次発酵を終えたスパークリングワインは基本的に残糖のない、辛口のものに仕上がっています。ドザージュはスパークリングワインの残糖調整を目的としたものであると同時に、場合によってはベースワインに使用したスティルワインとは別のワインを使用することで香りを追加する目的で行われる場合もあります。ドザージュにて味と香りが調整されたボトルは速やかにコルクで打栓され、ポワネッタージュと呼ばれる撹拌工程によって元のスパークリングワインと添加されたテラリキュールを均一化します。

 

この完全瓶内二次発酵方式の最大のメリットは言い方は悪いのですが、マーケティング的に有利だということです。

伝統的な製法であることに加えて、シャンパーニュが採用している製法である、という看板は消費者に対して非常に大きな影響力を持っています。また非常に時間と手間がかかる製法である、という点もこの場合にはプラスの方向に働いています。

一方で醸造技術的には、この製法でなければ実現できない点はほぼありません。強いて言えば以下の2点が特徴といえば特徴と言えます。

 

  1. 瓶内にある液量に対して澱の量の比率が大きくなりやすいため澱熟成において澱のニュアンスを拾いやすい
  2. 瓶外からの酸素と瓶内の炭酸ガスのガス交換による影響が大きくなりやすい

 

しかしこれらも技術的にはタンク内二次発酵方式で出来ないわけではありません。

逆に上記の2点がデメリットとなるケースがあります。

いずれの反応もしくは影響も個別の瓶内で別々に進行するため、ボトルによる個体差が生じやすいのです。ベースワインの作成以降は各ボトルが完全に独立したものとして製造過程が進行し、完成する完全瓶内二次発酵方式ではこのボトルごとにおける個体差を均一化することは事実上、不可能です。

 

メリット

  • シャンパーニュに代表される”伝統的”製法として知名度と価値が極めて高い
  • ブランド化しやすい

 

デメリット

  • 工程に時間と手間がかかる
  • 製造コストが高い
  • ボトルごとの個体差が生じやすい

 

その他

  • ベースとなるスティルワインから香り、味わいが多少変わる (調整できる)
  • アルコール度数が高くなる

 

完全瓶内二次発酵方式における最大のデメリットであるボトルの個体差をなくす製法、それが最後の「トランスヴァジール方式」です。

 

ボトル個体差を解消するトランスヴァジール方式

製造工程

スティルワイン → ショ糖 (サッカロース: saccharose) と酵母を添加  → 瓶詰め → 瓶内で二次発酵を完了 → 酵母上で90日以上熟成  → タンクに移し替え → フィルターによる澱引き → 味の調整 → 瓶詰め → 完成

※ 全体の製造期間が酵母を添加してから9ヶ月以上であること

 

トランスヴァジール方式は二次発酵および澱熟成を瓶内で行うことまでは完全瓶内二次発酵方式と同様の工程を踏みます。

澱熟成が終わったボトルは一度中身を澱ごとタンクに入れてしまい、すべてのボトルの中身を混ぜてしまった上でフィルターをかけることで澱引きを行います。瓶内における二次発酵および熟成で生じた個体差が一度タンク内で混合されることで均一化され、すべてのボトルで同一の品質を維持することができるのが、この製法の最大のメリットとなります。

 

一方で圧力タンクなどの専用設備が必要になる点は、この製法のデメリットだと言えます。設備面での投資は必要ですが、ルミアージュやデゴルジュマンのための手間や時間、瓶を保管する場所などは必要ない (タンクを設置するための場所は必要ですが) ため、生産コスト的には専用設備を導入することが一概にデメリットとは言い切れない部分でもあります。

なおこのトランスヴァジール方式を採用したスパークリングワインでもラベルには「瓶内二次発酵」と記載することが可能です。

 

メリット

  • ラベルに瓶内二次発酵と記載することができる
  • ボトルごとの品質を均一化できる
  • ルミアージュおよびデゴルジュマン等の手間がかからない

 

デメリット

  • 専用の製造設備が必要
  • 製造工程の詳細が明確になると顧客からのイメージに”伝統手法ではない”としてネガティブな影響を与える可能性がある

 

その他

  • ベースとなるスティルワインから香り、味わいが多少変わる (調整できる)
  • アルコール度数が高くなる

 

今回のまとめ

今回はスパークリングワインの製造方法各種を徹底解説してきました。

各製法をよく見ていただくとお気づきかもしれませんが、実はスパークリングワインの製造において最も重要なポイントは「どこで二次発酵を行っているか」ではなく「どれだけの期間澱熟成をさせているか」にあります。なぜなら、この澱熟成が完成したスパークリングワインの味や香りに与える影響が非常に大きいからです。

 

ですので、仮にタンク内で二次発酵を行った場合でも瓶内二次発酵相当の期間、澱熟成を行えばこれと似たニュアンスを得ることは十分に可能です。もちろん細かい要因がいろいろ関わってくることですのですべてがすべて同じようになるわけではありませんが、技術的には炭酸ガスを注入する製法以外の製法はすべて同様の品質のスパークリングワインを造り得ます。

この点を抑えた上でスパークリングワインのグラスを傾けていただくと、そのスパークリングワインがどのような点に注力して造られたものなのか、もう一歩踏み込んで楽しんでいただけるのでないでしょうか。



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Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。フリーランスとしても活動中

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