Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

栽培

2023/5/5

ワイナリーのリスクヘッジ | 植栽密度を考える

ブドウ栽培をしていくうえで、単位面積あたりに何本のブドウの樹が植えられているのか、という点は畑全体をデザインしていくうえで重要な情報になります。とはいっても畑の形状は千差万別。しかも周囲との状況によって植え付けられるはずの場所に植え付けられず、区画によって面積当たりの本数がまちまち、なんてことは往々にして起こります。 そこで複数の畑の間での比較をしやすくするために使われるのが、植栽密度という単位です。これは、実際の畑に植え付けた本数を面積1haあたりに換算して求められるもので、区画間のバラツキなどに影響さ ...

ブドウの病気 栽培

2021/8/21

ワイン用ブドウの三大疾病 | べと病の原因と対策

雨の多い年にブドウの栽培農家が特に警戒する病気があります。ベト病です。 ワイン用ブドウに関わらず植物の栽培をしていると避けることが出来ないのが、病気との戦いです。ブドウ畑ではいろいろな病気と出会いますが、その中でも代表的なものがベト病、ウドンコ病、そして灰色カビ病です。 どの病気も特別な病気というわけではありません。毎年とまでは言わないまでも、数年おきには被害が出ている、インフルエンザのような、よくある病気です。 しかし症状が悪化した時の被害は甚大です。年によっては収穫が全く得られなくなってしまうことさえ ...

Limited 醸造

2021/3/29

低コスト醸造が生み出すもの | 安いワインの含有成分を考える

前回の記事、「安いワインと頭痛の関係 | ワインあるある」では値段が手ごろなワインを飲むと頭痛を感じるのは実はこのカテゴリーのワインが「安い、うまい」を備えたワインだからこそ、という話を書きました。これはいわば飲酒量という、量の視点から見た場合のことでした。一方で、頭痛という体調への影響を及ぼす可能性を検討するには量だけではなく、質の面から目を向けることが必要です。 特に、頭痛だけにこだわることなくその他のアレルギー性の反応を対象とするのであればこの点は絶対に避けて通ることは出来ません。 今回の記事ではこ ...

ワインあるある

2022/4/11

安いワインと頭痛の関係 | ワインあるある

安酒を飲むと頭が痛くなる、というのと同じ論調で、安いワインを飲むと頭が痛くなる、ということを時々聞きます。 安酒を飲むと頭が痛くなる理由はわかりませんが、安いワインを飲むと頭が痛くなる理由は分かります。それは、そこに頭が痛くなる原因の物質が含まれているからです。もしくは単純に量を多く飲みすぎているからです。ちょっと斜め上に行くものでは、単なる思い込み、という可能性も完全には捨てきれなかったりもします。 一方で、これらの理由はどれもワインが高いか安いかには起因しません。 高いワインであっても飲みすぎていたり ...

PIWI品種 ブドウの品種と病気 白ワイン用ブドウ品種

2021/3/30

SAUVITAGE - ソーヴィターゲ

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PIWI品種 ブドウの品種と病気 白ワイン用ブドウ品種

2021/3/30

MUSCARIS - ムスカリス

[circlecard] 概要 1987年にドイツのフライブルクワイン研究所においてNobert Beckerによって交配されたカビ菌耐性品種 (Piwi品種) であり、白ワイン用品種。交配はSolaris x Gelber Muskateller。SolarisはPiwi品種の第一世代に属することから、MuscarisとしてはVitis amurensis, Vitis lincecumii, Vitis rupestris、Vitis viniferaの4種の系統の遺伝子を持っている。 2018年にオ ...

PIWI品種 ブドウの品種と病気 白ワイン用ブドウ品種

2021/3/30

BRONNER - ブロンナー

[circlecard] 概要 カビ菌耐性品種(Piwi品種)の一つ。1975年にドイツのフライブルクにあるワイン研究所にてNobert Beckerによって交配品種として生み出された白ワイン用品種。交配はMerzling x Gm6494 (Saperavi Severnyi x St. Laurent)でPiwi品種同士の掛け合わせとなる。MerzlingがSeyve-Villard 5276 (Seyval Blanc) x (Riesling x Pinot Gris)の交配品種であるため、遺伝的 ...

醸造

2021/3/29

ドイツにおける赤ワインと白ワインの混合

Twitter上でPostした、ドイツ国内で赤ワインと白ワインを混ぜてロゼが造れるってお話は間違いですよ、というPostが意外に反応が多かったので、念のため一次情報と合わせて記載しておきます。 あぁ、分かったロゼではないケースの話か...ロゼとして売ってはいけないものはワインとしても”ロゼ”ではないので、これをロゼの製造方式として考えてはダメなやつですね誰が広めたのか知りませんが、完全に解説ミスだと思われます”ロゼ”は赤と白の混合は認められていませんご注意ください— Nagi@ドイツでワイン醸造家 (@G ...

徹底解説 醸造

2023/3/25

徹底解説 | ロゼワインの醸造手法とその特徴

以前、ロゼのワインは産地や品種が分かっていても内容が想像しづらい、という話題を見かけたことがあります。 これはとても興味深い半面、ワインを実際に造っている側からすると、「あぁ、まぁそうかもしれないな」と納得できてしまう点でもありました。ではなぜ、ロゼは仮に飲む前から産地や品種が分かっていてもそこと実際のワインを結び付けることが簡単ではないのでしょうか? 今回はそんな疑問に対して、「ワイン造りの方法に基づく理由」に焦点を当ててみていきたいと思います。 普段からロゼを飲んでいてどうもモヤモヤすることがある、と ...

醸造

2021/3/29

ワイン純粋主義との相克 | 醸造家はパズルを解けるのか

ワインを造っていると数々の「悩ましい出来事」に直面しますが、その中でもこの時期に多いのがワインを可能な限り「純粋」に保ちたいという想いと、それを実現できない現実との対立です。 世の中、ワインの持つ個性をTerroirといった、ある限定された地域的な特性、つまり独自性に求めることがよくあります。このことの良し悪しはともかくとして、仮にそのような限定された範囲にのみ生じる特性をワインに持たせたいと考えるのであれば、そのワインは少なくともそのような地域から収穫されたブドウで造り、別の個性をもったものとは混ぜ合わ ...