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Nagi
ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。ドイツのワイナリーで醸造責任者を歴任。栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーの醸造家兼栽培醸造コンサルタントとして活動中
ブドウの収穫が終わり、いよいよジュースをワインに変えていく重要な工程である発酵。この時にワインメーカーが最も恐れ、最も気を使うことが何か分かるでしょうか? ワインが微生物に汚染されてしまうこと、作業中にこぼしてしまうこと、発酵温度を管理しきれないこと。すべて間違いではありません。どれに対しても気を使う必要があります。しかし、この工程において最も怖いこと、それは、”発酵が途中で止まってしまう”ことです。 発酵がなかなか始まらない、というのは待てばいいですし、微生物の汚染に対しては事前にきちんとした対策をして ...
野生酵母、という言葉に聞き覚えがあるでしょうか? 日本ではこれを天然酵母とか家付き酵母、もしくは蔵付き酵母とも呼んでいるようですが、意味的には同じもののことを指しています。野生酵母の定義は、品質の管理された純粋培養酵母(培養酵母、乾燥酵母ともいいます)以外のすべての酵母のこと、と思っていただければ大まかなところで間違いありません。 培養酵母は”工業的”か? 少し話は離れるのですが、日本でこの手の酵母に関する話題を見ていると、この野生酵母のことを「天然酵母」と呼ぶことでいかにもこれが天然自然のものであり、逆 ...
ワインの味はブドウの味であり、その味は畑で作れらます。だからこそワインメーカーは畑での仕事に力を入れるのです。 しかし、ワインの味はケラーで作られるものでもある、ということはご存知でしょうか? ワインの味は作業によって作り込める ワインの味は醸造過程の作業一つで大きく変わります。 発酵にどの酵母を使うのか、酵素を使うのか、樽を使うのか、使うなら新樽の比率、ローストの程度はどのくらいにするのか。また、単純にどの工程にどの程度の時間をかけるのか、なんてことでもその味は大きく変化します。数え上げたら本当にきりが ...
ワインはブドウから作られているので菜食主義の方が飲んでも問題ない。そんな風に思っていませんか? ワインにも動物由来のものが使われる可能性 これは必ずしも正しくない認識です。一部のワインではその醸造過程で動物性の製品が使われています。ただ、このことを知らずに無防備にワインを飲んでいる菜食主義の方がいるのもまた事実です。 ここで自体をややこしくしているのが、敢えて”ヴェガン向け”と謳っていなかったとしても、そのすべてのワインが動物性の製品を使っているわけではない、ということです。 基本的にワインはブドウのみか ...
先日、とあるワイナリーのワインメーカーさんとお話しをさせていただいた際にとても興味深いお話を耳にしました。コルクが”呼吸をする”というのはまったくの間違いだ、というのです。 コルクが呼吸をするというのは古い迷信か? こんな話をすると、ああ一昔前に言ってたあれね、と思われる方もいるでしょう。今ではコルクが完全な空気の遮断性を持っていることが証明されていて、この樫の樹の樹皮の部分から抜き出された、遥か昔から続く容器の栓が呼吸するなんて話はとっくに否定された迷信だったんでしょ、と。 慌てないでください。この話に ...
スパークリングワインといえば、シャンパンがその作り方である瓶内二次発酵という言葉と共にとても有名です。しかし、この瓶内二次発酵という作り方、実はいくつかのヴァリエーションがあることはご存知でしょうか?また、そもそもこの瓶内二次発酵という方法以外にも作り方があること、ご存知でしたか? スパークリングワインってなんだろう? 今日はスパークリングワインの作り方に注目したいと思います。 作り方に行く前に、簡単にスパークリングワインというものについて確認します。 スパークリングワインとは、発泡性ワインともいう通り、 ...
Trocken (トロッケン)という表記はドイツワインにおいては辛口のことです。なので、スパークリングワインのエチケットにこの表記があると、やはり辛口のことだろう、と思ってしまいがちですが、実はちょっと違います。 スパークリングワインのtrockenは残糖が多い スパークリングワインにおけるTrockenの表記は、残糖でみれば普通のワインの中辛口から甘口にあたります。なので、辛口だと思ってTrocken表記のスパークリングワインを買ってみたら、思ったよりも甘くて驚いた、というのはある意味当然なのです。 ス ...
2018年2月に行われたMUNDUS VINIの春の国際ワインコンクールには世界44カ国から6,770のワインが出品され、大賞33品、金賞1,102品、銀賞1,575品の合計2,702品がメダルを獲得しました。このうち290品がドイツからの出品であり、大賞が3品、金賞が105品、銀賞が182品という結果となりました。 ちなみに、メダル獲得数はイタリアの640品が最多であり、これにスペイン(590品)、ポルトガル(321品)が続きました。ドイツはポルトガルに次ぐ4位で、フランスは267品の5位でした。 ドイ ...
ワインの味に関する規定、と聞くとなんのことか分からないかもしれませんが、これは単純にどういうワインを辛口といったり甘口といったりするのか、というお話です。 この味に関する規定というものは国ごとに違いがあると思われますが、ここではドイツワインに関してのみ記載します。 ドイツワインにおける味の種類 さて、ドイツ国内でワイン法に基づいて規定されている味の種類は以下のものがあります。 基本的にこれらの味はワインに含まれる糖分の量(残糖)によって規定されていますが、トロッケンとハルプトロッケンに関 ...
ドイツワインでカビネットやシュペートレーゼと聞くと、ほぼ自動的に甘いワインのこと、と思ってしまう方はワインの勉強をしている方でも多いようです。ワインの説明をしていると、たびたび聞かれます。でもこれ、半分正解ですが、半分は残念ながら間違いなのです。 甘いワインがカビネットやシュペートレーゼであることが多いのは事実ですが、カビネットやシュペートレーゼが必ずしも甘いわけではありません。 、、、ややこしいですね。このややこしさの正体を知るためには、ドイツにおけるワインの等級の格付け制度と発酵の基本を知る必要があり ...