世の中のワイナリーを見渡していると、通常のワイナリーの他にビオロジックとエコロジック、ビオディナミッシュ(英語:バイオダイナミクス)というような区分を見つけることが出来ます。
今回はこの中でも、ビオロジックとエコロジックについて注目してみたいと思います。なお、筆者がこれらの単語をカタカナで表記することにどうにもならないほどの違和感を感じるため、以後はそれぞれ、Bio、Ecoと表記することにしたいと思います。
BioとEcoの違いは何か?
そもそも日本ではこの辺り、特にEcoの概念に対する定義が曖昧なことが多いようですが、ドイツでは明確な規定があります。その一方で、BioとEcoの間に差はありません。
つまり、Ecoに対応しているワイナリーはそのままBioに対応したワイナリーでもあるのです。ちなみにこの後にも書きますが、認証制度を持っているのはEcoであり、ドイツではその認証を持たない限りはEcoを名乗ることは出来ませんので、BioではあるけれどEcoではない、という可能性はあり得ます。
これは次の回に書きますが、Ecoの規定に準じた取り組みを行っていながらも、敢えてEcoの認証をとっていないようなワイナリーでは時々耳にすることのあるケースです。
なおEcoに関しては元々が学術分野における概念ですが、現在ではその運用に関して認証制度が作られ、行為者の行動を縛るための制度が設けられています。
学術的な意味でのEcoの概念とは一般的に、世の中に存在するあらゆる生物や生態系を取り扱うことです。ここが出発点となって、すべての生物や生態系、つまり自然環境にとって優しい行動、のように解釈されています。Ecoの概念においては基本的に除草剤のような化学品由来のものを使用することは認められていない一方で、ある程度の制限はありつつも機械やその他の文明の利器を使用することは特に問題視されないなど、その範囲は広くそして曖昧でもあります。おそらく、この曖昧さが日本をはじめとして明確な規定を持たない地で、Ecoという概念がよく分からないまま使われている理由の一つでもあるのでしょう。
Bioに至ってはもともとの語源が生物学ですから、さらになんとなく、ふんわりと、生物に優しいというようなイメージで認識されているように思います。この意味で、EcoとBioを区別して使うことはそもそも難しいことだといえるのかも知れません。
Ecoに関する規定
ドイツにおけるブドウの栽培およびワインの醸造においては、ワイナリーがEcoを名乗るにはどのような行動を取らなければならないのかが明確に規則化されています。それらの規則に準拠し、公式な審査を受け、認証をとることで初めてEcoを名乗ることが許されます。
なお、この認証は基本的にはワイナリー単位ですが、同時に畑単位でもあるので、こちらの畑から造ったワインはEcoだけど、あちらの畑のブドウから造ったワインはEcoではない、なんてこともあり得ることはあり得ます。このようなケースにおいては当然ですが、ワイナリーがEcoを名乗ることは出来ません。あくまでも、その畑で取れたブドウから造ったワインのエチケットにのみ、Ecoの表記を入れることが許されます。
ただこのようなケースはかなり特殊な事例です。
Ecoに関する規定は畑のことから醸造所の中まで細かく及んできますので、全体的にはEcoではないけれど一部だけはEco、という動きはとても非効率かつ、コストが嵩みます。このため、ワイナリーとしての印象を良くするためにも、ワイナリー単位でEcoの認証を受けていることが一般的です。
さて、Ecoの認証に関する規定ですが、かなり事細かに決められています。細かいことはある程度省くとして、重要な点は以下のようにまとめられます。
- 最低3年間の移行期間をおかなければならない
- ブドウの苗をはじめ、畑および醸造過程で導入されるものはEco基準に対応していなければならない
- 除草剤等の使用は禁止
- 銅の散布許容量が通常よりも低く制限される
- 肥料の種類とその最大散布量が規定される
- 二酸化硫黄の使用可能量が低く制限される
- 一部の醸造手法が規制される
- 最寄りの監督局に登録し、その審査を受けなければならない
ワイナリーはこのような規則を遵守し、監督局の審査に通ってはじめてBioの認証を取得し、エチケット上に定められたシンボルを表記することが出来るようになります。このシンボルに関してはEU圏内で定められたもので、Eco認証をとったワイナリーはこのシンボルを記載することが義務付けられます。自分たちのブランドイメージに合わせて勝手にシンボルを変えるようなことは認められていません。
次回は、Eco認証取得ワイナリーを取り巻く最近の問題について書きたいと思います。