概要
フランスのボルドーを原産とする早熟系の赤ワイン用ブドウ品種。14、15世紀にはすでに存在していたとされる、カベルネ・フラン (Cabernet Franc) とマグダレーナ・ノワール・デ・シャラント (Magdeleine Noire des Charentes) の交配品種。
世界中において栽培面積が増加を続けており、2015年には約270,000ヘクタールに及ぶなどカベルネ・ソーヴィニヨンについで第2位の生産量を誇っている。
カベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンとブレンドされるボルドースタイルのワインに代表される他、単一品種としても多くのワインが造られている。ポムロールのシャトー・ペトリュス (Chateau Pétrus) などが有名。またイタリアなどでも多く栽培されている。
Merlot Gris、Merlot Rose、Merlot BlancなどはMerlotから派生している品種として知られる。
特徴
円筒形で比較的実が詰まっていない房をつける。房の大きさは中程度。ブドウの粒は丸く、果皮は薄い。青黒い色をしており、果汁分の多い果肉を持つ。
果汁が多く果皮が薄い分、体積あたりのタンニンの含有量は低くなる。早熟品種であり、カベルネ・ソーヴィニヨンと比較すると2週間程度早く成熟する。
果汁糖度は比較的上がりやすい一方で、酸量は低めになる傾向が強い。
ワイン
タンニン量や酸量が比較的低い一方で糖度が上がりやすいため、丸みのある力強いワインになる。典型的な香りとしてはブラックチェリーや熟したプルーン、ブラックチョコレートなどからクローブやビャクシンなどまで。
メルローを使ったワイン造りにはボルドーに代表されるブレンド前提のものと、ニューワールドで多く行われている単一品種によるものとがあり、それぞれにおいて違いが見られる。ボルドースタイルでは収穫時期を早くすることでより酸量を残し、糖度もそこまであげないのに対し、ニューワールドの場合には収穫時期を遅らせることでフェノールの生重苦を促し、より糖度を上げることで力強さと高いアルコール度数をもったワインとすることが多い。
植栽適正
中程度から強めの樹勢を持ち、比較的寒い地方でも植栽できるが水分ストレスに弱い。
枝に関してはうどんこ病、べと病、灰色かび (ボトリティス) に対してある程度の耐性を持っている一方で、芽吹きが早いために遅霜をはじめとした冷害による被害を受けやすい点に注意が必要。また、花はべと病に罹りやすいという特徴がある。
果皮が薄いため、果実部分はボトリティスに対して弱い。
適正地で栽培を行えば収量は多く、糖度も高めとなる。
主なクローン
INRA 184 / INRA 349 / INRA 519 など