醗酵

酵母ってなんですか?

04/09/2018

発酵に欠かせないもの、それが酵母です。

酵母とは微生物の一種で、およそ発酵とよばれる工程がともなう場面では非常によく利用されているものになります。ワインや日本酒における発酵はもちろん、パン生地の発酵などにも利用されます。あまり認知度は高くないようですが、チョコレートに必須のカカオ製造にも酵母は無くてはならないものです。一方で発酵は発酵でも、味噌、醤油、ヨーグルト、塩辛、漬物などに利用されている、いわゆる乳酸菌発酵は酵母ではなく、その名前の通り乳酸菌を利用したものとなります (味噌や醤油の発酵には酵母も利用されていますので、すべてが乳酸菌のみで行われているわけではありません)。

またこれは別の話ではあるのですが、たまに同じ微生物の括りだからなのか、酵素を利用した反応を酵母を利用したもの、としている文章を見かけるときがあります。酵母と酵素は完全に別の物ですのでご注意ください。

ワイン用酵母と清酒酵母

酵母には様々な種類があり、各種用途にあったものが選択的に使用されています。一方で、ワイン用酵母と言われるものと、日本酒用途に使われる清酒酵母と言われるものは基本的にSaccharomyces系統と呼ばれる同系統の酵母であり、両者の間にはほんの僅かな差しかありません。しかし、同時にこのほんのわずかな遺伝子情報の差によって、ワイン用酵母と清酒酵母は区別され、さらにそれぞれの中でも異なった性質を持つ酵母が数多く存在しているのです。

酵母を特徴づけるもの

酵母の特性とは、主にその酵母の代謝活動の特徴になります。

酵母はその代謝活動においてブドウ糖を取り込み、主にアルコール (エタノール)と二酸化炭素、そしてATPおよびNADP+を作り出しますが、この発酵過程全体の中ではこれら以外にも様々なものが発酵副産物として生成されています。そして、この代謝活動を行える条件や、その効率、さらには代謝活動の結果生み出される生成物の違いがそのまま、酵母としての特徴となります。具体的に言えば、酵母が代謝活動を行える温度帯や生み出せるアルコール量、アロマの種類などです。

この発酵によって生み出されるアロマの種類はいろいろありますが、ワイン用酵母では比較的フルーティーなものが多くなっており、ワインメーカーは自分の造るワインに持たせたいアロマを生成することの出来る酵母を選択して使うことが出来ます。ワインの香りは様々な要因に起因します。最近は加工香の方により注目が集まるような部分もありますが、この発酵香を選択することは醸造面で非常に大きな意味を持ちます。

香りの種類とその由来に関する記事はこちらを御覧ください。

⇒ 香りの種類とその区分

⇒ ワインの味わいを作る、ということ

純粋培養酵母と野生酵母

以前の記事に書いた純粋培養酵母とは、上記の酵母の持つ特徴を選別し、その特徴に適合した基本的には単一の酵母だけを選択、培養したものとなります。ここで”基本的には”と書いた理由は、昨今販売されている酵母のパッケージには、複数種類の酵母を混ぜているものもあるためです。

なお、野生酵母とはこのような培養酵母以外のものすべてを含みます。ワイン醸造で話をする限りにおいては、基本的にはSaccharomyces系統以外の酵母のこととなります。

乾燥酵母および野生酵母に関する記事はこちら。

⇒ 野生酵母の功罪

限定記事を読む

メンバーシップ|すべての限定記事を読むならこちら

ワインの世界へ、もう一歩: 醸造家の視ているワインの世界を覗く部

醸造家の視ているワインの世界を覗く部

note|一部の限定記事を定額/単独購読するならこちら

マガジン: 醸造家の視ている世界

醸造家の視ている世界 note版

ワイン造りに、あなたらしさを活かすパートナーを

栽培や醸造で感じる日々の疑問や不安を解消し、ワインの品質をさらに高めたい──
Nagi Winesは、あなたの想いとスタイルを尊重しながら、すべての工程をともに歩みます。

経験豊富な専門家が現場に入り、知識・技術・品質の向上を、実地作業を通じて支援。
費用を抑えつつも、あなたのワインらしさを守りながら確かなフォローを行います。

まずはお気軽にご相談ください。

無料相談する

  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。ドイツのワイナリーで醸造責任者を歴任。栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーの醸造家兼栽培醸造コンサルタントとして活動中

-醗酵
-, , ,