Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。ドイツのワイナリーで醸造責任者を歴任。栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーの醸造家兼栽培醸造コンサルタントとして活動中

販売戦略

2022/4/11

ワインのラベルは味わいを作る

ワインを買いたい。 そう思い立ってワイン売り場に赴くと、そこにはたくさんのラベルが並んでいます。あらかじめ買うボトルが決まっていれば別ですが、そうではなかった場合、あなたはどうやって買うボトルを決めているでしょうか。 国、地域、畑、ブドウ品種、生産者、etc, etc… たくさん並んだボトルの中から欲しい1本を選び出すための絞り込み要素はいろいろあります。試飲ができるお店であれば実際に飲んでみて、味を確かめてから決めることもできます。一方で、必ずしもそうやって悩みながら決めているとは限らないのではないでし ...

醸造

2022/4/11

ワインの発酵期間

誰もがそんな事は知ってるよ、とおっしゃるかもしれませんが、ワインはブドウの果汁を発酵させて造られています。 発酵という工程は醸造酒と呼ばれるアルコール飲料にとって欠かすことのできない、もっとも重要なものです。逆にいえば、原料になるブドウを発酵さえさせられれば他には何もなくてもワインは出来上がります。 発酵について語ろう https://nagiswine.com/fermentation-01/ そんなワイン造りの中心部分を担う発酵ですが、今日摘んできたブドウが明日には発酵を終えてワインになるわけではあり ...

徹底解説

2022/5/15

ワインの安定剤は何を安定させるのか | アラビアガム (アカシア) について

「ワインはブドウだけから造られているもの」。多くの人が思っているはずのことですが、それに反して一部のワインのバックラベルを見ると添加物に関する記載がある場合があります。 添加物にはいくつかの種類がありますが、その中でも有名なのが酸化防止剤と安定剤です。 酸化防止剤は主に亜硫酸とも呼ばれる二酸化硫黄 (SO₂) が使用されています。この物質はごくまれに防腐剤と誤解をされていたり、頭痛の原因のように言われることもありますが、物質としては比較的よく知られています。一方で安定剤はその目的も使用されている物質もあま ...

不快臭

2022/4/11

光が変えるワインの香り | 日光臭

日光臭。 青く晴れ渡った空の下にひらめく洗い立ての白いシーツ。そのシーツに包まれたときに感じる、幸せなお日様の香り。と思ってしまいそうな名前ですが、残念ながら違います。 日光臭とはLight-struck taste (LST、Light-struck flavor: LSFとも)、Goût de Lumi`ereとも呼ばれる欠陥臭の1つです。ビールや牛乳で指摘されることの多いオフフレーバーですが、日本酒やワインでも無縁のものではありません。 日光臭は主に保存中に発生する欠陥臭です。その名前の通り、ワイン ...

ワイン

2022/4/11

持ち込みワインボトルの冷やし方とその温度

徐々に気温が暖かくなってきて、春を感じる過ごしやすい季節になってきました。花が開いて世界が明るくなり出すと、お酒を飲む機会も増えてくるもの。 お花見、BBQ、ホームパーティーやワイン会。手持ちのワインを持ち寄ってみんなで楽しく飲みたい、そんな気持ちも盛り上がってきます。 そうした楽しいイベントが仕事の後だったり、日中から外出する予定のある日の夕方以降だったりすると気になるのが、ワインの温度。持ち出すときにはきちんと冷えていたワインも、移動や業務時間中に適切に冷やすことができず温まってしまうことはよくありま ...

ワイン 品質管理

2022/5/15

ワインボトルの保管方法 | 縦置きと横置き、どちらが正解なのか

ワインを保管するときにおそらく誰もが一度は疑問に思うこと。それがボトルの置き方でしょう。 ワインのボトルは横置きにしなくてはいけないのか、縦置きにしてはいけないのか。 少し調べてみると、コルクで密閉しているボトルに関してはコルクの乾燥を避けるために横置きにするべき、という説明を多く見かけます。一方でスクリューキャップのものやプラスチック系の樹脂を使った合成コルクを使用しているボトルでは乾燥による劣化が生じないので横置きの必要はないとされています。 こうした、ある意味における世の中の常識とも思われている保管 ...

品質管理

2022/4/11

ワインの量と品質の関係 | 液面の高さは何を語るのか

ワイン、なかでも古酒と呼ばれる、造られてから十数年、長ければ数十年を経たワインではその品質管理の基準の1つに「液面の高さ」が取り入れられていることがあります。 インポーターさんや業者さんの中には独自に液面の高さをチェックして、規定の範囲よりも液面が低い場合には出荷しない、と決めていらっしゃる場合もあるようです。ワインをお好きな方々が集まるワイン会でももしかしたら「このボトルは液面が下がっている」なんて話を耳にするかもしれません。 この「液面が低い」話の特徴は、このセリフが出た場合は十中八九、そのボトルの品 ...

栽培

2022/4/11

植物の未来の姿を知る実験 | FACE

FACE、と呼ばれる実験をご存知でしょうか。 おそらく多くの方は知らないと思います。ですが、それも当然です。この実験、植物の成長や環境から受ける影響を調べる人たちからするともう10年以上にわたって活用されてきたものですが、一般の人が目にしたり耳にしたりすることはまずないものだからです。 FACEとはFree Air Carbon dioxide Enrichmentの略で、大気中の二酸化炭素濃度を人為的に引き上げ、その環境下で植物がどのように反応をするのかを観察する大型実証実験を指しています。 なぜこの実 ...

ワイン 不快臭

2022/4/11

熟成香か欠陥臭か アセトアルデヒドを知る | 醸造と熟成がもたらす香りの要素

アセトアルデヒド、という言葉を聞いたことはあるでしょうか。エタナール (ethanal) とも呼ばれる物質です。 アルコール (エタノール: ethanol) の最初の代謝物で、お酒を飲むと体内でアルコールが分解されていく過程で生成されてもいます。 二日酔いを避けるために。アルコールの分解を知ろう! https://nagiswine.com/alcohol-01/ 体内でエタノールがアセトアルデヒドに分解される際にはアルコール脱水素酵素 (ADH) と呼ばれる酵素が働きます。この一方で、アセトアルデヒド ...

ワイン 栽培

2022/4/11

ワイン用ブドウの栽培 | クローンを知る

ワインの勉強をしていると「ブドウのクローン」という言葉に遭遇することがあります。 クローン。 最近ではワイン以外の分野で耳にする機会も増えてきた単語ですが、まだまだ一般に広く認識されているようなものではありません。しかもワインの分野では醸造面よりも栽培面での意味が大きく、テイスティングの場で注目されることはあまりありません。 クローンがなんなのか、何となくはわかっていても理解しきれていない場合も多いのではないかと思います。一方でこだわる人はこだわり抜くのがこのクローンでもあります。 この記事ではブドウのク ...