Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。ドイツのワイナリーで醸造責任者を歴任。栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーの醸造家兼栽培醸造コンサルタントとして活動中

徹底解説

2022/5/15

全房発酵のウソ、ホント | ブドウの茎がワインに与える影響

ワイン造りの方法で、除梗もしくは全房発酵という言葉を聞いたことはあるでしょうか。 どちらもワインを造るときにブドウをどういう状態で使うのかを表した言葉です。 ブドウの房は緑色をした茎のようなものにブドウの粒がたくさんついた形をしています。この茎の部分のことを果梗 (かこう)、もしくは単に梗 (こう) といいます。 ワイン造りの現場では、ワインを造るときにこの梗を取り除いてブドウの粒の部分だけを使う造り方を除梗といい、梗も含めて房ごと使うことを全房といいます。全房発酵とは、梗を含めた房の全てを入れた状態で果 ...

ナチュラルワイン

2022/9/3

ナチュラルワインの現在地

注意 この記事では内容の関係上、ほかの記事のように、ナチュラルワイン、自然派ワイン、ヴァン・ナチュール、ナチュールなどの用語の使い分けは行っていません ナチュラルワインの人気が続いています。身の回りを見回してみても、ナチュラルワインを専門に扱うワインショップやワインバー、レストランも比較的簡単に見つかるようになりました。 もしかしたら飲むワインはナチュラルワインだけ、という方もいらっしゃるかもしれません。 ワイン業界内でも存在感を見せるナチュラルワインですが、未だにその定義は曖昧です。任意の団体が組織され ...

醸造

2022/5/15

酸化をさせて酸化から守る手法 | ハイパーオキシデーション

ワインと酸化。これはとても相性の悪い組み合わせです。 飲み始めたワインのボトル。美味しいのだけれど1本は飲みきれず、翌日飲もうと思って栓をして冷蔵庫に保管。ところが翌日から仕事が忙しかったり体調が優れなかったりでワインを飲む気になれず、気がついたら抜栓から1週間。ようやく落ち着いて、ワインでも飲もうかと冷蔵庫から取り出したボトルをグラスに注いで口に運んだら味が違う… こんな経験は誰にでもあると思います。 ワインの味を変えてしまった犯人は酸素です。ワインをグラスに注いだ分、ボトルに入ってきた空気に含まれてい ...

醸造

2022/4/16

ワインの香りの秘密

ワインの香り。それはワインを楽しむ上でとても重要な要素です。 ワインに含まれる香りの成分はとても多く、数百種類に及ぶとも言われています。そうした中からそれぞれの香りを拾い上げ、表現する行為はワインを楽しむ醍醐味の1つでしょう。 ワインの香りを探っていると、時として意外な香りに出会うことがあります。ブドウだけから造られているはずなのに、花や木、動物を思わせる香りがあるだけではなく、スパイス、バニラ、チョコレートなんてものも出てきます。 ワインの香りは使われているブドウの品種によっても違います。普段から飲みな ...

販売戦略

2022/4/11

ワインのラベルは味わいを作る

ワインを買いたい。 そう思い立ってワイン売り場に赴くと、そこにはたくさんのラベルが並んでいます。あらかじめ買うボトルが決まっていれば別ですが、そうではなかった場合、あなたはどうやって買うボトルを決めているでしょうか。 国、地域、畑、ブドウ品種、生産者、etc, etc… たくさん並んだボトルの中から欲しい1本を選び出すための絞り込み要素はいろいろあります。試飲ができるお店であれば実際に飲んでみて、味を確かめてから決めることもできます。一方で、必ずしもそうやって悩みながら決めているとは限らないのではないでし ...

醸造

2022/4/11

ワインの発酵期間

誰もがそんな事は知ってるよ、とおっしゃるかもしれませんが、ワインはブドウの果汁を発酵させて造られています。 発酵という工程は醸造酒と呼ばれるアルコール飲料にとって欠かすことのできない、もっとも重要なものです。逆にいえば、原料になるブドウを発酵さえさせられれば他には何もなくてもワインは出来上がります。 発酵について語ろう https://nagiswine.com/fermentation-01/ そんなワイン造りの中心部分を担う発酵ですが、今日摘んできたブドウが明日には発酵を終えてワインになるわけではあり ...

徹底解説

2022/5/15

ワインの安定剤は何を安定させるのか | アラビアガム (アカシア) について

「ワインはブドウだけから造られているもの」。多くの人が思っているはずのことですが、それに反して一部のワインのバックラベルを見ると添加物に関する記載がある場合があります。 添加物にはいくつかの種類がありますが、その中でも有名なのが酸化防止剤と安定剤です。 酸化防止剤は主に亜硫酸とも呼ばれる二酸化硫黄 (SO₂) が使用されています。この物質はごくまれに防腐剤と誤解をされていたり、頭痛の原因のように言われることもありますが、物質としては比較的よく知られています。一方で安定剤はその目的も使用されている物質もあま ...

不快臭

2022/4/11

光が変えるワインの香り | 日光臭

日光臭。 青く晴れ渡った空の下にひらめく洗い立ての白いシーツ。そのシーツに包まれたときに感じる、幸せなお日様の香り。と思ってしまいそうな名前ですが、残念ながら違います。 日光臭とはLight-struck taste (LST、Light-struck flavor: LSFとも)、Goût de Lumi`ereとも呼ばれる欠陥臭の1つです。ビールや牛乳で指摘されることの多いオフフレーバーですが、日本酒やワインでも無縁のものではありません。 日光臭は主に保存中に発生する欠陥臭です。その名前の通り、ワイン ...

ワイン

2022/4/11

持ち込みワインボトルの冷やし方とその温度

徐々に気温が暖かくなってきて、春を感じる過ごしやすい季節になってきました。花が開いて世界が明るくなり出すと、お酒を飲む機会も増えてくるもの。 お花見、BBQ、ホームパーティーやワイン会。手持ちのワインを持ち寄ってみんなで楽しく飲みたい、そんな気持ちも盛り上がってきます。 そうした楽しいイベントが仕事の後だったり、日中から外出する予定のある日の夕方以降だったりすると気になるのが、ワインの温度。持ち出すときにはきちんと冷えていたワインも、移動や業務時間中に適切に冷やすことができず温まってしまうことはよくありま ...

ワイン 品質管理

2022/5/15

ワインボトルの保管方法 | 縦置きと横置き、どちらが正解なのか

ワインを保管するときにおそらく誰もが一度は疑問に思うこと。それがボトルの置き方でしょう。 ワインのボトルは横置きにしなくてはいけないのか、縦置きにしてはいけないのか。 少し調べてみると、コルクで密閉しているボトルに関してはコルクの乾燥を避けるために横置きにするべき、という説明を多く見かけます。一方でスクリューキャップのものやプラスチック系の樹脂を使った合成コルクを使用しているボトルでは乾燥による劣化が生じないので横置きの必要はないとされています。 こうした、ある意味における世の中の常識とも思われている保管 ...