先日書いた二酸化硫黄を添加しないワインの作り方の記事について、大変ありがたいことにご質問をいただきましたので、今回はそのご質問にお答えする形でもう少し具体的に二酸化硫黄無添加ワインの作り方についてみていきたいと思います。
このテーマについては内容が長くなりますので、2度に分けて記事にします。第1回目の今回は、ナチュラルワインとはどんなものであるのかについてみていきます。
二酸化硫黄無添加ワインの作り方に関する記事はこちら
ナチュラルワインってなんだろう?
今回いただいたご質問は、ナチュラルワインを飲んでいて甘く感じることがあるのはなぜなのか、というものでした。
このご質問に答える前に確認が必要なことがあります。それは、ナチュラルワインの定義についてです。
このナチュラルワイン、という名前は最近になって一気に広がったイメージが強いですが、その一方で明確な定義を知っている人は少ないのではないでしょうか?多くの人がナチュラルワインとは二酸化硫黄、つまり酸化防止剤や亜硫酸塩と呼ばれる物質を添加していないワイン、という程度の認識でいらっしゃるのではないかと思います。確かにこの認識は一概に間違いとは言えませんが、圧倒的に情報が不足しています。
ただ一方で、この“ナチュラルワインってなんでしょう?”という質問自体にトリックがあることもまた事実です。
というのも、このナチュラルワインという言葉はOIVなどの団体による正確な定義づけがなされていないからです。このため、言い方は悪いのですが、イメージ先行のような状況になっており、言う人によって定義が違う、なんてことはざらでした。しかし、この一方で、2017年5月に世界的に有名なワイン雑誌であるDecanterがこのナチュラルワインというものを定義付けるコメントを出しました。彼ら曰く、“ナチュラルワイン”とは下記の条件を満たすワインのこと、だそうです。
- オーガニックもしくはビオダイナミックに基づく栽培手法によって栽培されたブドウを使用している(認証は推奨されるものの、有無は問わない)
- 手摘みのみによって収穫されている
- 野生酵母による発酵を行っている
- 酵素を使用していない
- 二酸化硫黄以外の添加物を使用していない
- 二酸化硫黄の総量が70 ml/l を超えていない
- 清澄およびろ過を行っていない
- その他の浸透膜やスピニングコーンのような大型機材を用いる醸造手法を使っていない
二酸化硫黄の使用は禁止されていない
さて、上記の各種条件を見ていただくとピンとくるかと思うのですが、ナチュラルワインにおいて二酸化硫黄の使用は量の制限こそあるものの、決して禁止されていません。ちなみに70 mg/l という数字は甘口のワインを作るには心配が多いものの、きちんと管理された品質のブドウから作ったうえでの話ですが、辛口からそれなりに残糖をしぼった中辛口ワインであればそれほど驚く数字ではありません。ブレはありますが、丁寧に作られたワインであればかなりの数のワインが(ナチュラルワインと銘打っていなくても)この範囲に入ることができます。
このことからもお判りいただけるかと思いますが、ナチュラルワインというカテゴリーは世間一般の方が思っているほど二酸化硫黄を忌避もしていなければ、特別なものでもないのです。(この点についてはもちろん、造り手の考え方次第です。造り手のなかには二酸化硫黄の使用を善しとはせず、使わないことに強い拘りをお持ちのワインメーカーももちろん存在します)
次回は甘いナチュラルワインが存在しうる具体的な理由についてお話ししたいと思います。
後半の記事はこちらからもご覧いただけます。