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Nagi
ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。ドイツのワイナリーで醸造責任者を歴任。栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーの醸造家兼栽培醸造コンサルタントとして活動中
世界における最高級ワインはなにか、と聞かれたら何と答えるでしょうか? ボルドーやブルゴーニュの赤ワイン? アメリカを中心としたカルトワイン? 多くの人に愛されるシャンパン? それとも今を時めくナチュラルワインでしょうか? ことドイツにおいては法的な格付け上、最高級ワインといえばTBA (Trockenbeerenauslese、トロッケンベーレンアウスレーゼ)、つまり貴腐ワインです。一方でこのような法的な格付けの裏付けがなかったとしても、毎年行われるワインオークションで最高値を付けるのはいつでもTBAであ ...
記事をお読みいただく前に この記事では説明の都合上、学術用語としての“発酵”と一般的なアルコール生成手段としての意味での“発酵”が同一文章内に特に断りなく混在して使用されています 何度か発酵についての記事を書いてきました。発酵とはぶどうジュースがワインになるために絶対に欠かすことのできない、とても重要な工程です。 発酵にはいくつか欠かすことのできない要素があります。そのもっとも代表的な存在が、酵母です。 一方で、ワインに対して酸素が大敵であることは周知の事実です。酸素 = 酸化というイ ...
先日の9月12日に筆者が勤めるワイナリーで2019年シーズン初となるブドウの収穫がありました。ブドウの成長が異常に早く、それに伴い例年よりも1か月近くも収穫が早まった2018年ほどではないものの、2019年もやはり長期平均の視点から見ればかなり早いシーズンの幕開けとなりそうです。 このようなブドウの成熟の早期化の背景には年間平均気温の上昇があります。 地球全体での気候変動が叫ばれて久しいですが、実際にブドウの成熟過程を通して日々その変化を目にしているとその影響の大きさがまさに身をもって実感できます。 そし ...
前回の記事で嫌気環境下における醸し手法の一つとしてMacération carbonique (マセラシオン カルボニック / カーボニックマセレーション)というものを紹介しました。 ただこの手法は若干、特殊なものに分類されており一般的な嫌気環境下における醸しの方法とは言いにくい部分があります。 その一方で、より一般的な嫌気環境下における醸し工程中であっても多かれ少なかれMacération carboniqueが並行して行われている、もしくは意図したわけではなくとも生じている、なんてこともあります。つま ...
何かとフランス語の借用が多いため、分かりにくく馴染みにくいのがワインの醸造関連用語。 ですが、そんななかにあって“カーボニックマセレーション”という名前を何となく耳にしたことがある人は意外と多いのではないでしょうか? カーボニックマセレーションとは、一般にはシャンパーニュ(シャンパン)と並んで日本でもひときわ知名度の高いワインである、「ボジョレー・ヌーヴォー」の生産手法として広く知られている醸造手法のことです。 日本ではカーボニックマセレーション (Carbonic maceration) と英語からの訳 ...
先立って「ワイン醸造の暗部?補糖は悪なのか | シャプタリザシオンをめぐって」というワインの補糖に関する記事を公開したところ、 補糖の有無よりも補糖することによるワイン内の糖分の量が気になる、ぶっちゃけ、補糖したワインは太る気がする という旨のコメントを複数名の方からいただきました。 先日の記事でワインに補糖していることを告げるともれなくお客様からトーンダウンされることを嘆いてみせたのですが、補糖が原因で太るということならそれも納得です。 間接的とはいえ、このワイン太るよ、と言われて喜べる人はいないですよ ...
日本酒における醸造用アルコールの添加、ワインにおける補糖。 これらは随分と敵視されていることが多いように感じます。行ってみれば醸造酒の暗部、アンタッチャブルな領域、という印象でしょうか。 おそらく日本酒にしてもワインにしても、本来は栽培や醸造の結果として得るはずの糖度やアルコールを外部から補填することに対して、その目的および理由の如何を問わず、なんらかの悪印象を受けている結果からきているのだろうと思います。 もしくは一部の国地域において高品質ワインを謳うカテゴリーで補糖が禁止されている点をもって、補糖する ...
はじめまして。 読者の中にはもしかしたらご存知の方もいらっしゃるかもしれません。Nagi's Wine Worldのライターとして招待して頂いた奥村嘉之と申します。 私の初投稿となる今回の記事はメトキシピラジンという化合物について。 この化合物に関してはかつて自身のnoteでも取り挙げているのですが、ここでは当時より1回り以上踏み込んだ話ができればと思っています。 そもそもメトキシピラジン(Methoxypyrazines)という化合物をご存知でしょうか。 そういった基本の部分から、その化合物がどのように ...
Foto : DWI 昨日、8月13日にドイツで今年最初となるブドウの収穫が行われたとのニュースがDWI (Deutsches Weininstitut / Wines of Germany) より発表されました。 今回はそちらの記事を簡単にご紹介します。 Erste Trauben für Federweißen gelesen ”Erste Trauben für Federweißen gelesen (フェーダーヴァイサー用の最初のブドウが収穫された)” と題されたこちらので記事では、8月13日に ...
ワインのマーケットは世界中に存在しています。 その数ある市場の中でも特に存在感が大きいのが英国で、世界中のワインメーカーがこの市場における自身のワインの評価に注目しています。 この一方で、特にドイツワインにとって無視できない市場がアメリカ市場です。ドイツワインの輸出に関する統計を見ると、米国市場は2位以下に金額ベースで倍以上の差をつけての断トツのトップです。 現にアメリカ向けの出荷が多い小規模のワイナリーではその生産のほとんどをこの市場向けが占めており、造ると同時に売り切ってしまう、などという例も決して少 ...