Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

仕事の流儀

2021/3/30

ダメージを受けたぶどうをどうするか

まだ本格的な収穫はごく一部でその大半がSekt用のベースワイン向け収穫などが中心となっているものの、勤めているワイナリーでも日々、収穫が行われています。 今までは立場的にも収穫の現場にいることが多かったのに対して、現在は主にケラーでの仕事を担当しているため畑には行かないことが増えました。では何をしているのかと言えば、朝からその日の行うプレスの準備をしたり前日に絞ったジュースに対して発酵前に必要となる下処理を進める業務を行っています。 収穫時期に畑に行かない、というとなんとなく楽な仕事をしているようなイメー ...

醸造

2021/3/30

暑すぎた夏の代償

ドイツの今年の夏が暑かったこと、そのせいでブドウの成長が例年にないほど早く進んだことはこれまでの記事でも折に触れて書いてきました。その結果として、実際に今年の収穫はドイツ各地で未だかつてないほど早く始まることとなり、筆者の勤めるワイナリーでもすでに収穫が開始されています。 よく夏が暑くてブドウの成長が早くなるのは悪いことなのか、と聞かれるのですが、これは簡単に答えるのが難しい質問です。 暑くなるとワインは力強くなる この質問の答えの一つが、ポルトガルやスペイン、イタリアといった南欧の、そのなかでも暑い地域 ...

仕事の流儀

2021/3/30

収穫開始

ぎりぎりとはいえまだ8月の今日、筆者が勤めているワイナリーでも最初の収穫が行われました。 品種はSpätburgunder(シュペートブルグンダー)とDunkelfelder(ドゥンケルフェルダー)。Rosé Sekt用のベースワインにするためのぶどうです。ちなみにDunkelfelderという品種はあまり聞いたことがないのではないかと思いますが、Dunkel、つまり、”濃い”、”暗い”、という名前がついている通り絞ったジュースの色が濃い品種で、赤ワイン系のCuvéeを造る際に色味を強くする目的で混ぜられ ...

仕事の流儀

2021/3/30

収穫準備 - タンクの洗浄

ドイツのあちこちですでにフリューブルグンダー (Frühburgunder) などの早熟品種やゼクト (Sekt) 用のシュペートブルグンダー (Spätburgunder、Pinot Noirのドイツ語名) を中心とした各種品種の収穫が始まっています。筆者の勤めるワイナリーでもゼクト用のシュペートブルグンダーを来週早々には収穫する予定になっており、今はケラー(ドイツ語ではケラー <Keller>、英語ではセラー <cellar> となります)の準備に追われています。 ゼクト (S ...

仕事の流儀

2021/3/30

瓶詰め作業、委託か所有か

今日は一日、ワインの瓶詰め作業に追われました。 ひたすらワインをボトルに充填し、栓がされたボトルをそのまま保管用の鉄製のかごに入れたり、箱詰めするものは箱に入れ、封をし、必要な情報を印刷し、そしてパレットの上に並べていくという作業を延々10時間近く続けていました。と言っても、これらの作業の多くは機械化出来ているので人手が必要になるのはワインが充填され、封がされたボトルを保管用の容器に並べたり、箱詰めしたり、その箱をパレットに並べたり、という作業とあとは必要な瓶や箱の供給をするといった作業になります。言って ...

醗酵

2021/3/30

Federweißer(フェーダーヴァイサー)ってなんだろう?

すでに一昨日、8月6日のことですが、ラインヘッセンでフェーダーヴァイサー用のブドウの収穫が始まった、というニュースが出ました。 ブドウの品種はソラリス。果汁糖度は90エクスレだったそうです。ちなみに90エクスレ、という表現は日本では馴染みが薄いかもしれませんが、おおよそで言えば20Brix強というくらいの糖度ですので、相当甘くなっていたことになります。 ソラリスという品種は早熟の品種として知られていますが、それでもこの時期にこれほど糖度が上がることは通常無いことです。 まだ8月上旬といっていいこの時期にブ ...

栽培

2021/3/30

斜面の畑、Terrasseでのお仕事

昨日の記事でTerrasseに関する記事をあげましたが、今日はそのTerrasseで筆者が最近従事している仕事の内容について書きたいと思います。 とは言っても、Terrasseだから、という類の仕事はそれほど多くありません。Terrasseを新しく作る、という話になればこれは全く別の話ですが、流石にこの作業を人力で行うことはありえませんので、一度作られたTerrasseにおいては日々必要になる作業は他の普通の畑と大きく変わらないのです。成長に合わせて伸びてきたブドウの枝を針金の中に入れたり、その針金の高さ ...

仕事の流儀

2021/3/30

斜面の使い方

ドイツのブドウ畑、というと、急斜面に沿って垂直方向に作られた畑をイメージする人が多いようですが、ドイツ語で”Terrasse (テラッセ)"と呼ぶ、斜面に対して水平方向に段々畑を作っていく方法も実際には多く取り入れられています。今日はそんな、Terrasseに注目してみたいと思います。 [circlecard] Terrasseとはどんな畑なのか ドイツ語のTerrasseとはそのまま、テラスや段差のある状態のことを意味しています。 ブドウ畑に関しても同様で、山の斜面を段々畑のようにし、その段差の谷側の縁 ...

ブドウの病気 栽培

2021/8/21

ぶどうの日焼け

ブドウも人と同じように日焼けすることはご存知でしょうか? 除葉について書いた記事(「除葉をどこまでやるか?」)でも簡単に触れていましたが、ブドウの果実にあまりに強い陽が当たるとブドウも日焼けをしてしまいます。日焼けくらい、と思われるかもしれませんが、日焼けをした果実が混ざってしまうとワインに焦げたようなニュアンスが入ってしまうため、特に繊細な香りの白ワインなどでは避けるべきことと認識されています。 日焼けとはどのような状況か? 人の肌が日に焼けたとき、色の濃さに段階が出るように、ブドウの実にとってもある程 ...

栽培

2021/3/30

除葉をどこまでやるか?

2018年のドイツの夏は本当に暑く、雨の降らない日が続いています。このためブドウの生育は例年よりも遥かに早く進んでおり、ワイナリーにおける仕事もその分、前倒し、前倒しで進められています。しかし仕事の前倒しには常に時間と労力の確保が必須であるために、その時間や労力を確保できているワイナリーと、出来てないワイナリーとで現在行っている仕事の内容に差が出てきているのが現状です。 そんな中で現在筆者が日々、畑で行っているのが除葉の作業です。 今やる除葉の目的 以前にも除葉に関する記事は書いたため、除葉そのものに関す ...