Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

醗酵

2021/3/30

発酵について語ろう

今までに発酵を実質的に引き起こしている存在である酵母などについてはお話をしてきましたが、発酵それ自体については説明をしたことがなかったので、この機会に改めて発酵というものについて書いてみたいと思います。 発酵のメカニズム 上記の関連記事でも書いたとおり、発酵とは糖からアルコールと二酸化炭素を作り出す反応であり、その反応は酵母によって引き起こされます。ワイン造りにおいて酵母が必須、と言われる所以はここにあります。 どれだけ品質のいいブドウを造ろうと、醸造過程において酵母が介在しなければワインは絶対に造ること ...

栽培

2021/3/30

台木ってなんだ?

先日、クローンに関する記事を書きましたが(関連記事: クローン、、、何かに似ていませんか?)、このクローンという単語と同じくらいブドウ畑の中でよく聞く単語が台木です。今日はこの台木というものに焦点を当ててみたいと思います。 台木とは そもそも台木とは何でしょうか? これは読んで字の如く、台となる木のことです。これだけだとなんの説明にもなっていないですね。しかしその一方で、この言葉が台木の全てでもあるのです。 ブドウはクローンのお話しの際に書いたように、挿し木によって増やすことの出来る植物です。挿 ...

栽培

2021/3/30

柱にみる考え方の違い

先日、”畑に柱を立てる”という記事をアップしました (関連記事: ブドウ畑に柱を立てる)。そちらの記事では触れていなかったのですが、この時に使った柱には、実際は杭といってもいいくらいのものなのですが、素材の違いも含めて多くの種類があります。それぞれの柱には長所や短所があり、どの柱を使っているのかでそのブドウ畑の特徴や、造り手の考え方を知ることが出来ることを皆さんはご存知でしょうか? 一度作ったブドウ畑は30年間変わらない 一度新しい畑を作ると、その畑はよほどの理由がない限りは20年から30年はそのままの形 ...

栽培

2021/3/30

クローン、、、何かに似ていませんか?

ワイン用のブドウの話をしていると、それなりの頻度で耳にするのが”クローン”という言葉。個人的には理解するのに少々手間取ったものだったのですが、皆さんはどうでしょうか? クローンといえば羊のドリー すでに古すぎる話題の振り方、と言われてしまうかもしれませんが、筆者にとってクローンというと未だに羊のドリーという単語が真っ先に頭に浮かびます。人によってはすでにそもそも知らない単語と化しているかもしれませんし、風化してしまって記憶に残っていないかもしれませんが、1997年(すでに20年以上前!)に発表された、世界 ...

仕事の流儀

2021/3/30

ブドウ畑にワイヤーを張る作業

昨日、畑の柱に通すワイヤーを支える支柱をアンカーとつなげる作業が終わったので、今日はいよいよワイヤー張りです。ところで、ブドウ畑の一列の間には何本のワイヤーが張られているかご存知でしょうか? 5本? 7本?? 惜しい、正解は6本です。 と言っても、これもまた好みに依る部分もあるため絶対というわけではないのですが、一般的には7本です。内訳としては、主にブドウの主枝を固定するのに使うのが2本、ブドウの成長に合わせて枝をまとめるために使うのが2本x2セットで4本、合計6本です。今日はこの枝を固定するための2本の ...

仕事の流儀

2021/3/30

ブドウ畑を支える縁の下の力持ち。~アンカー打ち

先日の仕事 (関連記事: ブドウ畑に柱を立てる)の続きとなる今回は、まさに畑を支える重要な部分であるアンカーの打ち込みと、そこにつながるワイヤーを集約する支柱の打ち込みでした。アンカー自体の打ち込みは特に問題なく進むのですが、とにかく時間がかかるのがそこにつながる支柱の打ち込みです。今日の作業だけによらず、柱の打ち込み作業全体に言えることなのですが、ここはとにかく作業者の性格が出るところなのです。 [circlecard]   角度と高さにこだわり抜いた末の美しさ 人によってはある程度の水平と、前後の並び ...

仕事の流儀

2021/3/30

ブドウ畑に柱を立てる

ドイツではここに来て急に気温が上がり、春を通り越して一気に初夏、というような様相になっています。 ブドウの木々は芽吹きを早める一方で、今まで固く凍っていた地面も溶け始めました。ついにブドウ畑の仕事が始まります。 今、一部の畑では一気にブドウ畑への苗植えと、そこからの畑の構築作業が始まっています。 この”今日の仕事”というテーマでは日々、其の日に行った畑での作業の様子を伝えていきたいと思います。 [circlecard]   苗植えは半自動化で大幅な速度アップ 最近はブドウの苗を植える作業はそうい ...

二酸化硫黄

2021/3/30

二酸化硫黄、正しく理解していますか? 4

これまで3回に渡り二酸化硫黄の持つ効能の解説と、ワイン内に存在する理由の解説をしてきました。今回はさらに別の側面から二酸化硫黄がワイン中に入ってくる可能性についてお話していきたいと思います。 プロセス中に存在する二酸化硫黄は添加か無添加か 一般的に添加、という言葉はある物質を直接的に別のものに加えることを指しています。では、間接的に入ってきてしまうことを添加と呼ぶでしょうか? 実際に上記の問いに対する答えは、答える側の考えとその際に加わってくる量によって異なるのではないかと思いますが、ここで何を言いたいの ...

二酸化硫黄

2021/3/30

二酸化硫黄、正しく理解していますか? 3

これまで二度に渡り、二酸化硫黄の持つ細菌や微生物の活動の抑制効用と抗酸化作用を説明してきました。しかし、二酸化硫黄の持つ効用はまだこれだけではありません。3回目となる今回も引き続き、二酸化硫黄の持つ効用についてのお話しを続けたいと思います。 二酸化硫黄の効用に関する以前の記事はこちらからご覧いただけます。 ⇒ 二酸化硫黄、正しく理解していますか? 1 ⇒ 二酸化硫黄、正しく理解していますか? 2 二酸化硫黄は酵素の活動も抑制する ワイン用ブドウに由来する酵素として、2種類の酸化酵素があることが分かっていま ...

二酸化硫黄

2021/3/30

二酸化硫黄、正しく理解していますか? 2

前回は二酸化硫黄のもつ効能の一つとして、微生物や細菌に対する作用をご紹介しました。第2回目となる今回は、日本でももっとも代表的な使用例として認識されているであろう、抗酸化作用についてお話しをしたいと思います。 前回の記事はこちらから御覧ください。 ⇒ 二酸化硫黄、正しく理解していますか? 1 二酸化硫黄の持つ抗酸化作用 日本で販売されているワインのほとんどでは、そのラベル内に「酸化防止剤(亜硫酸塩)」という記述を見つけることが出来るのではないでしょうか?この「酸化防止剤(亜硫酸塩)」という言葉が指している ...